「ウミ!」ソラが笑みを浮かべて駆け寄ると、何人もの子供達が、ウミの後ろの暗闇の中にぼんやりと浮かび上がり、射るような目で自分を見ているのに気がついた。
どきりっ、としてソラが足を止めると、ウミが言った。「お兄ちゃん、ここ、どこなの」
ソラは、黙って首を振った。と、男達の話し声が聞こえてきた。
「上の様子はどうだった」
「教科書どおりさ。大佐が先頭に立って、反旗を翻した街の住人達を追い詰めていたよ」と、イヴァンがため息混じりに言った。
「ハハン」と、ニコライが片方の頬を吊り上げて笑った。「本格的に軍の部隊が投入されるのも、時間の問題だな」
「歴史の単位はまじめに取っていなかったが、今日の日付だけでもわかれば、なんとか対処することもできるんだが……」イヴァンが、くやしそうに言った。
「この子供達も一緒に連れて行く」と、ニコライが、意を決したようにソラ達の方を見て言った。
「過去がどうあれ、一人でも多く救ってみせるさ」イヴァンが、奥歯をかみしめながら言った。
「みんなは? どうしてここに――」ソラが、子供達の方を向いて言った。
「きみ、見ない顔だね」と、大きめの帽子をかぶった男の子が、前に出てきて言った。「名前は?」
ソラは自分の名前を言うと、ウミを見ながら言った。「こっちは妹の――」
「ウミ、だろ」と、男の子はニッコリと笑みを浮かべた。「ぼくはセバスチャン。で、こっちがポーリー。あそこにいるのが、妹のエリザベス」
ソラはうなずくと、言った。「ここ、どこなの?」
セバスチャンは、急に顔色を曇らせると、怒ったような目でソラを見た。
「ごめん……」と、思わずソラが言った。「悪かった?」
「ゲットーにきまってるじゃないか。父さんも母さんも、ほかのなにもかも、列車に乗せて連れて行かれた。ここにいる全員が、そうさ――」
ウミはなにか言いかけたが、ソラの顔を見ると、グッと唇を噛んでうつむいた。
「ゲットーって?」ソラがセバスチャンに聞こうとすると、イヴァンが口をはさんだ。
「おしゃべりはその辺にしておけ。ここにもすぐ追っ手が来る。ニコライの後に続いて脱出するんだ」
セバスチャンは兄弟達のところへ戻ると、言葉を交わすことなく、不安そうな面持ちの二人の間に立って、それぞれの手をギュッと握った。
「外に出れば、きっと仲間の大人達が大勢いるはずだ。おまえ達の友達や、もしかすると家族がどこへ行ったのか、詳しく知っている人間も中にはいるだろう」と、イヴァンは続けた。「だが、おまえ達はさらに先を行く。この国の外に出るんだ」
声をひそめたどよめきが起こった。
どきりっ、としてソラが足を止めると、ウミが言った。「お兄ちゃん、ここ、どこなの」
ソラは、黙って首を振った。と、男達の話し声が聞こえてきた。
「上の様子はどうだった」
「教科書どおりさ。大佐が先頭に立って、反旗を翻した街の住人達を追い詰めていたよ」と、イヴァンがため息混じりに言った。
「ハハン」と、ニコライが片方の頬を吊り上げて笑った。「本格的に軍の部隊が投入されるのも、時間の問題だな」
「歴史の単位はまじめに取っていなかったが、今日の日付だけでもわかれば、なんとか対処することもできるんだが……」イヴァンが、くやしそうに言った。
「この子供達も一緒に連れて行く」と、ニコライが、意を決したようにソラ達の方を見て言った。
「過去がどうあれ、一人でも多く救ってみせるさ」イヴァンが、奥歯をかみしめながら言った。
「みんなは? どうしてここに――」ソラが、子供達の方を向いて言った。
「きみ、見ない顔だね」と、大きめの帽子をかぶった男の子が、前に出てきて言った。「名前は?」
ソラは自分の名前を言うと、ウミを見ながら言った。「こっちは妹の――」
「ウミ、だろ」と、男の子はニッコリと笑みを浮かべた。「ぼくはセバスチャン。で、こっちがポーリー。あそこにいるのが、妹のエリザベス」
ソラはうなずくと、言った。「ここ、どこなの?」
セバスチャンは、急に顔色を曇らせると、怒ったような目でソラを見た。
「ごめん……」と、思わずソラが言った。「悪かった?」
「ゲットーにきまってるじゃないか。父さんも母さんも、ほかのなにもかも、列車に乗せて連れて行かれた。ここにいる全員が、そうさ――」
ウミはなにか言いかけたが、ソラの顔を見ると、グッと唇を噛んでうつむいた。
「ゲットーって?」ソラがセバスチャンに聞こうとすると、イヴァンが口をはさんだ。
「おしゃべりはその辺にしておけ。ここにもすぐ追っ手が来る。ニコライの後に続いて脱出するんだ」
セバスチャンは兄弟達のところへ戻ると、言葉を交わすことなく、不安そうな面持ちの二人の間に立って、それぞれの手をギュッと握った。
「外に出れば、きっと仲間の大人達が大勢いるはずだ。おまえ達の友達や、もしかすると家族がどこへ行ったのか、詳しく知っている人間も中にはいるだろう」と、イヴァンは続けた。「だが、おまえ達はさらに先を行く。この国の外に出るんだ」
声をひそめたどよめきが起こった。