8
天馬に変身した馬は、自分の翼でどこまでも高く飛ぶことができましたが、やはり無幻道士の言ったとおり、ガッチ達のいる世界に行くことはできませんでした。
自由自在に空を飛ぶ天馬も、見えない出口を探してさまよううち、だんだんと高度が低くなり、飛ぶ速さもだんだんと遅くなっていきました。
サトルも、なんとかしてこの世界から抜け出そうと、思いを強く持ちましたが、自分の分身だった青騎士がいなくなった今でも、なにかほかに足りない物があるらしく、違う世界の入り口は、目の前に現れませんでした。
元の世界にサトルを連れて行こうとして、必死になって空を舞う天馬でしたが、違う世界につながる扉が見つけられないサトルは、どこまでも透き通った空に目をこらしながら、天馬が苦しんでいるのをひしひしと感じていました。
「――あっ、木だ? それに、人もいるみたいだ」と、サトルはまぶしいお日様を手でさえぎりながら言いました「馬さん。あそこに下りよう」
サトルが言うと、天馬はサトルが見つけた木に向かって、空を下りていきました。砂漠の真ん中にぽつんと生えた木は、遠く離れた所からもわかるほど大きく、青々とした葉を茂らせていました。
死の砂漠に迷いこんでから、初めて見た生き物でした。天馬に跨がって空から見た世界は、どこも黄色い砂ばかりで、サトル以外の人や生き物は、まったく見あたりませんでした。
やっとの事で休めそうな場所を見つけたサトルは、多少ならずとも、ほっとしていました。
だんだんと近づいてくる木は、空から見下ろしていた時よりも遙かに大きく、まるで山のようでした。水も何もない死の砂漠の中で、ポツンと立っている姿は、もしかしたらただの幻ではないかと思うほどでしたが、風に吹かれてさらさらと揺れる梢は、間違いなく本物の木でした。
「うわー、でっかいなぁ……」
と、木のそばで天馬を下りたサトルは、遙かに高い木を見上げながら言いました。
「――なんて名前の木なんだろう」
サトルはぽんぽん、と木を手で軽く叩きました。
すると、木の幹がボヨヨン、と手の平を跳ね返すようにうねった気がして、まるで動物の体を触っているようでした。そういえば、木のそばに立っていると、ドックン、ドックン……と、心臓の鼓動のような音が聞こえてきました。
サトルは、もうねむり王はいないのだから、この木がねむり王が夢の中で作った怪物のはずがない、とわかっていましたが、心のどこかでは、いつ襲いかかってくるんだろう、とびくびくしていました。
「だれだ……ワシの体をくすぐるのは……」
天馬に変身した馬は、自分の翼でどこまでも高く飛ぶことができましたが、やはり無幻道士の言ったとおり、ガッチ達のいる世界に行くことはできませんでした。
自由自在に空を飛ぶ天馬も、見えない出口を探してさまよううち、だんだんと高度が低くなり、飛ぶ速さもだんだんと遅くなっていきました。
サトルも、なんとかしてこの世界から抜け出そうと、思いを強く持ちましたが、自分の分身だった青騎士がいなくなった今でも、なにかほかに足りない物があるらしく、違う世界の入り口は、目の前に現れませんでした。
元の世界にサトルを連れて行こうとして、必死になって空を舞う天馬でしたが、違う世界につながる扉が見つけられないサトルは、どこまでも透き通った空に目をこらしながら、天馬が苦しんでいるのをひしひしと感じていました。
「――あっ、木だ? それに、人もいるみたいだ」と、サトルはまぶしいお日様を手でさえぎりながら言いました「馬さん。あそこに下りよう」
サトルが言うと、天馬はサトルが見つけた木に向かって、空を下りていきました。砂漠の真ん中にぽつんと生えた木は、遠く離れた所からもわかるほど大きく、青々とした葉を茂らせていました。
死の砂漠に迷いこんでから、初めて見た生き物でした。天馬に跨がって空から見た世界は、どこも黄色い砂ばかりで、サトル以外の人や生き物は、まったく見あたりませんでした。
やっとの事で休めそうな場所を見つけたサトルは、多少ならずとも、ほっとしていました。
だんだんと近づいてくる木は、空から見下ろしていた時よりも遙かに大きく、まるで山のようでした。水も何もない死の砂漠の中で、ポツンと立っている姿は、もしかしたらただの幻ではないかと思うほどでしたが、風に吹かれてさらさらと揺れる梢は、間違いなく本物の木でした。
「うわー、でっかいなぁ……」
と、木のそばで天馬を下りたサトルは、遙かに高い木を見上げながら言いました。
「――なんて名前の木なんだろう」
サトルはぽんぽん、と木を手で軽く叩きました。
すると、木の幹がボヨヨン、と手の平を跳ね返すようにうねった気がして、まるで動物の体を触っているようでした。そういえば、木のそばに立っていると、ドックン、ドックン……と、心臓の鼓動のような音が聞こえてきました。
サトルは、もうねむり王はいないのだから、この木がねむり王が夢の中で作った怪物のはずがない、とわかっていましたが、心のどこかでは、いつ襲いかかってくるんだろう、とびくびくしていました。
「だれだ……ワシの体をくすぐるのは……」