「わっ!」と、サトルはいきなり頭の上で声がしたのに驚いて、後ろに倒れました。天馬もびっくりしたらしく、今までサトルのそばでおとなしくしていましたが、声が聞こえたとたん、ヒヒーンと嘶き、空に舞い上がったまま、どこかに逃げていってしまいました。
「こらっ、ぼくを置いていくなよ――」と、サトルは言いましたが、臆病な天馬は、ぐんぐん離れていき、とうとう戻って来ませんでした。
「なーに……心配することはない……。そのうち落ち着いたら……戻ってくるさ……ホッホッホッ……」
サトルは、ゆっくりと声のする方を見上げました。すると、大きな目玉が二つ、サトルを見下ろしていました。
「――うわっ」と、サトルは顔を引きつらせながら、後ずさりました。
「おおい……そんなに驚くことはないだろう……。ワシはただの木だよ……ホッホッホッ……」
しかしサトルは、木のお化けが自分を騙そうとしていると思い、しばらくじっと様子をうかがっていました。しかし、ニコニコとした木の顔を見ていると、なぜだか気持ちがほんわかするような感じがしてきました。
「――あの、すみません。くすぐったわけじゃないんですが、砂漠の真ん中に立っていたんで、ちょっとめずらしいな、と思って」と、サトルは言いながら、ぺこりと頭を下げました。
「ほほう……おまえも上の世界から落ちてきたんだね……。まさか……悪いことでもしたのかい……」
「ぼくは、なにも悪いことなんかしてません。ただ、ただ無幻さんに言わせると、夢を見られなくなってしまったから、なんです――」
「ふうーん……」サトルが言うと、木は大きな息をひとつ吐いて、じっと考えこんでいました。
「君の名前は……」木は目を開けると、微笑みながら言いました。
「サトルです……」
「おお。君は異人だね……。もしかすると……君は私の知らないところから……落ちてきたのかい……」
サトルは聞かれましたが、なんと答えてよいか、よくわからなったので、
「確か、ぼくの落ちてきた世界では、ドリーブランドとかって言ってましたけど……」
と、言いました。
「ホッホッホッ……」
サトルが答えると、木が体を揺らしながら、大きな口を開けて笑いました。サトルは、むっとした顔で言いました。
「――なにがおかしいんですか」
「いや、これは失礼……」と、木は笑いを押し殺すように言いました。「ここはな、どこもドリーブランドだよ……私が質問を間違えたようだな……無幻はなんと言っておった……」
「こらっ、ぼくを置いていくなよ――」と、サトルは言いましたが、臆病な天馬は、ぐんぐん離れていき、とうとう戻って来ませんでした。
「なーに……心配することはない……。そのうち落ち着いたら……戻ってくるさ……ホッホッホッ……」
サトルは、ゆっくりと声のする方を見上げました。すると、大きな目玉が二つ、サトルを見下ろしていました。
「――うわっ」と、サトルは顔を引きつらせながら、後ずさりました。
「おおい……そんなに驚くことはないだろう……。ワシはただの木だよ……ホッホッホッ……」
しかしサトルは、木のお化けが自分を騙そうとしていると思い、しばらくじっと様子をうかがっていました。しかし、ニコニコとした木の顔を見ていると、なぜだか気持ちがほんわかするような感じがしてきました。
「――あの、すみません。くすぐったわけじゃないんですが、砂漠の真ん中に立っていたんで、ちょっとめずらしいな、と思って」と、サトルは言いながら、ぺこりと頭を下げました。
「ほほう……おまえも上の世界から落ちてきたんだね……。まさか……悪いことでもしたのかい……」
「ぼくは、なにも悪いことなんかしてません。ただ、ただ無幻さんに言わせると、夢を見られなくなってしまったから、なんです――」
「ふうーん……」サトルが言うと、木は大きな息をひとつ吐いて、じっと考えこんでいました。
「君の名前は……」木は目を開けると、微笑みながら言いました。
「サトルです……」
「おお。君は異人だね……。もしかすると……君は私の知らないところから……落ちてきたのかい……」
サトルは聞かれましたが、なんと答えてよいか、よくわからなったので、
「確か、ぼくの落ちてきた世界では、ドリーブランドとかって言ってましたけど……」
と、言いました。
「ホッホッホッ……」
サトルが答えると、木が体を揺らしながら、大きな口を開けて笑いました。サトルは、むっとした顔で言いました。
「――なにがおかしいんですか」
「いや、これは失礼……」と、木は笑いを押し殺すように言いました。「ここはな、どこもドリーブランドだよ……私が質問を間違えたようだな……無幻はなんと言っておった……」