あの日
麦畑の片隅に
黒い犬が黄昏ていた
飼い主は何処かと
辺りを見たが
人影は見当たらなかった
写真をと思って
iPadをとりに家に入ったら
出てきた時にはもういなかった
どこに行ったかと
近所に目をやると
向こうの道を走っていた
あれがそうかと
気づいた時
こちらの麦畑に
向かってきて
麦畑の真ん中を
横切って行った
そして、こちらを見ていた
左前足の膝に
大きな瘤のようなものがあった
わたしは、犬は
捨てられたのではないかと思った
首輪はなかった
昭和の中頃までは
この辺りには
野良犬がたくさんいて
怖かった
野良犬に噛みつかれそうになって
それ以来
犬は苦手である
だけど
その黒い犬が
可哀想だと思った
思っただけで何もしてあげれない
そんな自分に
少々嫌気が差した
犬はどこかへ去っていった
それから今日まで
黒い犬の姿は見ない
犬はどこでどうしているのだろう、、、