一度告白を拒まれただけで魂を表す声の本質を見抜き沈黙に閉ざした青年が他にいたか?
「声」 小山右人(新潮新人賞 / Yujin Koyama)の小説
Amazon Kindle版
https://www.amazon.co.jp/dp/B071CGPXMW
【読者の声】
声を失った青年とセラピストとの交流を軸に、神話世界までを辿り行く独特の物語。大変興味深く読ませて頂きました。
「声は一度発せられると、決して消えることはない」という一文に私は引きつけられました。それは、音楽や数学にも通じる思想であるからです。
素晴らしいメロディを聴いた時、心や感情が何処か遠くへ連れさられる心地を感じることがあります。その時意思はこの世界の理、物理ではない、言葉以前の世界と触れあっているのだと感じます。
世界と感覚で触れあうこと、それが音楽なのです。対して数学は世界の物理的解釈の最小言語であり、ここにメロディと数学の共通項があるのです。
ならば、我々の発する声も、音と言葉の混じり合う声もその要素を含んでいるのではないでしょうか?
言霊とはその謂いであり、声を発するということは世界と触れ合うための一つの手段なのではないでしょうか?
故に声なき場所に地獄は現れるのです。我々と世界の架け橋が、その自在性を喪う所を我々は地獄と呼ぶのです。そしてその地獄を越えた「声」の、なんと純粋で力強いことか。このような声が世界の真理へと近づくのだと思います。
以前島尾敏雄の「贋学生」を読みました。この小説は心理療法に沿って構成されており、一人の青年の淀む生の解消で物語は終わります。
小山さんの「声」は同じように心理療法を軸にしてはいるものの、その描き方は経験的であり、主人公の苦悩・困惑を読書が、追体験するように描かれていました。これは本当に患者と対した者でなければ描くことの出来ない作品だと感じました。常々、私は芸術とは体験、意思、感情、思想を共有する行為だと思っております。
「声」を通して医療に携わる小山さんの一面を垣間見ました。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
【読者の声】分かりやすい言葉で書かれていて、とても読みやすく、情感があり、読んでいてとても心地よかったです。
特に21幕の山のシーンが好きでした。自分が山にいて、澄んだ空気を吸っているような気分になりました。
登場人物たちも活き活きとしていて、小説を読んでいて楽しかったです。
とても面白い小説でした。