その6 ケネディー電気
ここだ、ここだ。
ここがインスタント沼という映画のロケ地になったところか。
なんなのだろうか、あのロケットのようなものは。

社長婦人らしき人がいたので、見学に来たことを伝え、写真を撮っていいかと尋ねたら、「恵まれない施設へ寄付金をお願いします。」と言われた、金額は1,000円と言う。
ゲッ! いきなり寄付金1,000円を強要された。
ふつう寄付金というのは気もちであって、金額指定はないだろう、こっちは牛久大仏の 800円の拝観料も払えない貧乏人なのだ。
何を考えているんだ、1,000円もあったら「すき家」の朝食セット並盛 280円を3回食べてもお釣がくるじゃないか、分かってんのかよ!
そう言いたい思いを飲み込み、OK,OKと千円札をポストのように大きな貯金箱へ入れた、グシュン。
おぼえておけ! いきなり大金1,000円を取られたからには、けしていいことは書かないぞ! 悪口をずらずら並べてやる!
寄付金だって、ほんとうに恵まれない施設に行くのかどうかも怪しいものだ!
恵まれない施設というとちょっと聞こえがいいけど、ひょっとすると自分たちのケネディー電気を言っているのかも知れない、疑わしいことだ、ふん!

さて、店舗というか、倉庫というか物置というか、中にはいると、なにこれ!
ひと昔まえの電気製品が、あたり狭しと並んでいる、いや、重なっている。
これって売物なの? 買う人いるの? へぇー、たまげた。
どうやら本業は電気店のようだ。
といっても新製品は見当たらない、中古品販売修理業のようだ。
奥の建物の扉を開けたら社長らしき人が居た。事務室に入ってしまったようだ。
まー座れと言われてイスに座る。先ほどの社長婦人らしき人がコーヒーをいれてくれた。
そして、ここから社長らしき人が延々と喋りまくる。
まぁー、話はそこそこおもしろいのだが、さほど中味のある話ではない。
でも、本人はイイ話、ためになる話を聞かせているつもりのようだ。
店名のケネディーは、アメリカ大統領の功績に深く感銘して、いただいた名前とのこと。
昼ちかくになったので、そろそろ帰ると言って立上がったら、まだいいから座れと言う。
そして、また喋りまくる。
ふたたび、帰ろうと立上がると、また制された。
カレーライスが出てきた。(これ食ったらまた帰れない。)
覚悟をきめてカレーライスを食べた。
食べている間も喋りまくる。
うなずきも、愛想笑いも疲れてきた。
電気や水道は2度までの滞納は許される、しかし、3度目の滞納で止められるという話や、組織の中で出世するには、こうで、ああで、こうして、そのとき、こうで、という話など、あまりにも道徳心のない話ばかり、ずーっと聞かされて、もううんざり。愛想笑いもできないほど顔の筋肉がついてゆかない。
ここには2度と来るなと言われた。つまり、2度と来ることのないように良く得るものを吸収して行け、と言うことらしい。
なにを吸収したらいいのだ?
店舗内を案内してもらっている中、タイミングよく帰るときりだす。それでもまだいいからと言って帰そうとしないのだが、強引に帰ることを宣言した。
帰りの飲食物として、ペットボトルのお茶とピーナツ入り柿の種をいただいた。
道路を走ること5分後ようやく解放されたことを実感した。
滞在時間3時間30分、おかげで本日の予定は滅茶苦茶だ!
ばかやろ~っ! ケ※出ィー電気!
おっと、あぶない、やはり固有名詞への罵声攻撃はよくない、私は良識がある人間だ。
これから私が悪口を言う電気店は、私の頭の中にある仮想空間に存在する電気店であって、実在のものではないことをここに宣言する。
ばかやろ~~っ! 毛寝台電気! 2度と来るか! 1,000円かえせ!
参考電気店