ルーガはまだ自分の子は育てていませんが、「黒い子等」は大勢育てて来たので子育てには一家言あり、もうすぐ自分の子も産まれて来る身重の体だとします。
妊娠3ヶ月で赤ちゃんの鼓動がハッキリ聞こえる様になった頃の母親には、時として光のオーラ(後光)が漂(ただよ)うと言います。
この日のルーガは確かに後光を漂わせており、そんな彼女に対面した党の代表3人は気を呑まれて反論するコトが出来なくなります。
ーー もうお気付きかも知れませんが、私は今妊娠中で3ヶ月目になります。
私の様な「黒い子等」には珍しく結婚もしており、夫の胡耀郷(フーヤオシャン)とは3ヶ月前にインドのダラムサラーで結ばれました。
その時はチベット仏教式の結婚式を上げて、「未来への誓い」をみんなの前で宣誓しました。
仏教ではキリスト教と違って「夫婦の愛」を永遠のモノにすると誓ったりはしませんが、「子供への愛」はたとえ離婚をしても持ち続けると誓いました。
これは現実的で社会的意義のある誓いかと思い、私達の社会の未来は、この親から子への愛に最も大きく依存している気がします。
親から愛を受け取れなかった子供達はどうしてもグレてしまい、そうした子供が成長してから善き親と成るには、とても大きな壁を乗り越える必要があります。
私はこれまでに100人以上の「黒い子等」を育てて来て、その殆どが女の子でしたが、みんなとても愛に餓えていました。
彼女等はみな黒社会(マフィア)に売られた少女達で、親から捨てられたコトに非常なショックを受けていました。
マフィアからそうした少女達を救い出す上で、私達「女子革命突撃隊」は時として力に頼るコトもありましたが、どんなに極悪なマフィアも処刑にはせず、宮刑(去勢)を最も重い罰としました。
これはどんな悪人にも成仏するチャンスが有るとする、仏教の「悪人成仏」の思想に基づいており、「中国の未来」も死刑制度を廃して愛を重視する社会にしたいと思っています。 ーー
中国は毎年、世界一多くの死刑執行を行っている国なので、党の代表3人は誰かがルーガの意見に反論しなければなりませんでしたが、女性2人はすっかり耀かしいルーガの後光に魅せられてしまい、将軍は彼女を暗殺する上で指揮を取っていたので、罪悪感から反論する気になれませんでした。
こうして党側は反論する機会を逸したので、3日目の討論会は「勝利の女神ドゥルーガ」の独壇場となります。