そんな中、亡命チベット人社会で最も求心力の高い女性トゥルクが自ら涅槃(バルドゥ)に入ったというニュースは、特別な意義を持ち十万人以上のチベット人がダラムサラーでの葬儀に集まります。
これには亡命チベット人社会をサポートするインド人社会からも大いに参拝者が訪れ、世界中の仏教徒社会からも参拝団が集まります。
更に宗教の枠を越えた正義と愛を求める人々も世界中から集い、49日間に及ぶバルドゥ祭には最終的に百万人以上の参拝者が集います。
それは史上最大の葬儀となり、おそらくは宇宙最大の葬儀でもあり、「終活」を大きなテーマとする日本社会からも個人的な参拝者が数百人は訪れます。
ダラムサラーには現在も日本人コミュニティがあり、表敬団を特別に受け入れて貰えるだけの信頼を勝ち得ています。
チベット人は同じ仏教徒の日本人に大いに期待しており、この表敬団はバルドゥ祭の前列に招かれます。
それよりも更に、チベット人が重要としたのは中国人の参拝者達で、秀祥は孫文の曾孫に当たるので、世界中の華人社会からチベットと中国の和平を結ぶキーパーソンと目されていました。
また、華人社会には盛大な葬儀を尊ぶ伝統があり、今日「6.4」を記念してBSで再放送されていた「天安門事件の真相」も、元々は清廉な総書記だった胡耀邦の追悼集会から始まりました。
この集会にも百万人以上の人々が集い、その盛大な葬儀は49日間に及んで、50日目に千人以上の殉死者を出して終わります。
こうした「血の日曜日」を契機としてロシアでは革命が起きましたが、中国人民にそこまでの覚悟はなく、「シリア革命」のような泥沼に陥らなかっただけ良かったとも言えます。
ともかく、中国人の参列者は特別な意気込みで参拝に来ており、チベット人達はそれを汲んで彼等を史上最大の葬儀の最前列に招きます。