真の動物福祉牧場を目指して

久美子ハウスの日々

 聖地バナーラスでの1日はまず、ガンガー-ガートでのチャイから始まります。
 ガンガーでは朝早くから多くのボートが出ており、ガートを散歩する人や沐浴する人も多くて元気が貰えます。

 ガートは城壁の様な堤防で、乾季には川面が下がって多くの祠が現れ、そこにサドゥーが住み着いたりします。
 今ちょうど水位と気温の低い観光シーズンで、外国人観光客の数もコロナ以来やっと戻って来ました。

 チャイは一杯10ルピー(20円弱、田舎では半額)で、城壁の見晴らし台の上に座ってマッタリするのが人々の朝の定番になっています。
 わたしはそこで本を読んだりブログを書いたりするのが定石ですが、周りの人はヨガなどをやっているので、わたしもヨガの心と姿勢をもってチャイを頂いています。

 そこでは他国の旅人との出会いもあり、先日は香港から来た30歳の消防士さんと話しました。
 わたしは4年程前に香港騒乱を観に行ったコトがあるので、それについて彼に意見を求めるましたが、「香港の未来は暗い、イギリスに移り住みたい」と云った後ろ向きな言葉しか聴かれませんでした。

 世界情勢についてはロシアや中東の大変な状況も話題になりましたが、バナーラスには多くのロシア人が逗留しているそうで、そのコミュニティーと繋がりのあるインド人と仲良くなったので、今度そこに連れて行って貰おうかと思っています。

 話を「久美子ハウスの日々」に戻しますと、チャイの後はバングラッシーを飲みに行くコトが多く、それを朝食として歩き出します。
 どことも当てどなく歩く日もありますが、よく行くのは「初転法輪」の地サールナートで3回も行きました。
 
 クミコから片道13km位の道のりは、道を覚えた今では楽に歩けますが、最初は迷って十数回も道を尋ねる苦労をしました。
 サールナートにはブッタが初めて法を説いた鹿野苑があり、インド国旗の真中の法輪はここに在る古い仏舎利塔のモノだそうです。

 インド政府はここでブッタが生きた紀元前の遺跡発掘に力を入れており、その成果も相まって急速に観光地化が進んでいます。
 わたしが最後に来た7年前には、まだ長閑な田舎の雰囲気が漂っていたのが、観光客が増えた分お店が立ち並ぶようになり、バナーラスの街が拡大して郊外に家がどんどん建てられたコトもあり、ブッタガヤの様に村から町になりつつありました。

 しかし、モノが豊かになると宗教的な精神は貧しくなるモノで、これは世界共通の免れ得ないコトでしょう。
 インドの経済発展は人々から宗教性を喪わせており、サールナートの遺跡を復元した寺院やそこを訪れる観光客の群から、本物の仏教を求める情熱は感じられませんでした。

 そもそもインド人は大多数が敬虔なヒンドゥー教徒で、彼等は殆どが一握りのバラモン達から宗教的に支配されるのに慣れており、他の宗教に興味を持つユトリがありません。
 仏教はヒンドゥー教の一部だと思っていてお詣りに来ますが、日本山の一緒に唱題するスタイルよりも、受け身一辺倒のインドスタイルに拘っていて参加できません。

 これは、プージャ(祈祷)は限られたカーストの人に委ねるべきという考えから来ており、ブッタがカーストの壁を取り払おうとしたコトもあまり認知はされていない様です。
 ただブッタは「秩序の神ビシュヌ」の転生者とされており、その初期の教え(原始仏教)に共感を示すインド人は増えて来ています。

 サールナートには日月山法輪寺という旅人をタダで泊めてくれるお寺も在り、そこも一応「南無妙法蓮華経」の修行をしていて多くの観光客を集めています。
 しかし日本山の様に外を歩いて修行するコトはなく、「行学二道」を掲げて近くのチベット大学や日本の仏教系大学と繋がりを持ち、そのインドでの拠点として機能していました。

 そこの庵主さん(尼さん)は日本人と見ればお茶に誘ってくれる話好きなお婆さんで、60代から勉強して日蓮宗の僧侶になったと語ってくれました。
 そんな話に付き合って五時のお勤めにも参加すると、インド人が1番活動的になる夕暮れ時を迎えます。

 歩きで約3時間、日本のように音楽を聴きながら歩けるような道ではなく、かなりの注意を要する混雑した道路や泥んこ道を踏破して、ガンガーに辿り着いた時にはいつも達成感を持てます。

 夜も深まって来るとガートでは火葬とプージャが盛り上がり、わたしは2杯目のバングラッシーを飲んで久美子ハウスに帰ります。
 この続きは次回として、宿でのコトをお話しさせて貰います。

 
 
 
 
 
 
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