静かな室内に、微かなため息が響く。
吐息さえも響く室内にいるのは3人だけだった。
目を伏せた初老の男に、心配げに隣に座った老婆を見つめる女性、そして件のため息をついた老婆だった。
女性2人の姿は、今から結婚式でも行われるのかという、伝統的できらびやかな韓服姿だった。
その部屋の調度品も色彩豊かに彩られ、黒檀や紫壇が使われた、今では博物館位でしか目にすることができないような品ばかりだった。
「それで、いつ頃?」
手元の書類に目を通した老婆は、無作法と知りながら、男のほうに身を乗り出した。
「はい、直ぐにではございませんが、決して良好とは申し上げられない状態です」
男は伏し目がちなまま答えた。
「長期の療養か…」
「はい」
背凭れにもたれた老婆の腕に、隣の女性がそっと手を添えた。
「大丈夫だ」
老婆は女性に顔を向けてそう言うと、再び男性に顔を向けたのだった。
「健康診断の準備を」
「はぁ」
男性は老婆の真意を掴みきれず、あやふやな返答をした。
そして、次に老婆が発した一言は、その場に居る者を驚かせた。
「太子に、妻を。妃を迎えます。その準備をするのです」
「はい」
「…」
神妙に頭を下げた男性医師に対し、女性は二の句が継げなかった。
彼女にとって皇太子に、まだ高校生の自分の息子に嫁を迎えるなど、晴天の霹靂以外の何物でもなかった。
吐息さえも響く室内にいるのは3人だけだった。
目を伏せた初老の男に、心配げに隣に座った老婆を見つめる女性、そして件のため息をついた老婆だった。
女性2人の姿は、今から結婚式でも行われるのかという、伝統的できらびやかな韓服姿だった。
その部屋の調度品も色彩豊かに彩られ、黒檀や紫壇が使われた、今では博物館位でしか目にすることができないような品ばかりだった。
「それで、いつ頃?」
手元の書類に目を通した老婆は、無作法と知りながら、男のほうに身を乗り出した。
「はい、直ぐにではございませんが、決して良好とは申し上げられない状態です」
男は伏し目がちなまま答えた。
「長期の療養か…」
「はい」
背凭れにもたれた老婆の腕に、隣の女性がそっと手を添えた。
「大丈夫だ」
老婆は女性に顔を向けてそう言うと、再び男性に顔を向けたのだった。
「健康診断の準備を」
「はぁ」
男性は老婆の真意を掴みきれず、あやふやな返答をした。
そして、次に老婆が発した一言は、その場に居る者を驚かせた。
「太子に、妻を。妃を迎えます。その準備をするのです」
「はい」
「…」
神妙に頭を下げた男性医師に対し、女性は二の句が継げなかった。
彼女にとって皇太子に、まだ高校生の自分の息子に嫁を迎えるなど、晴天の霹靂以外の何物でもなかった。