九段の春がやってきた

今日も夜だけ塾バイトなので東京散歩をしました。
２日連続で外濠公園とか靖国とかそのへん。

「昨日よりは咲いてる」

正午を過ぎたばかり。
公園はお花見ランチで賑わっていました。

横を歩いていた綺麗なお姉さんの鼻歌を盗んでみる。

「花びら舞散る～記憶舞戻る～♪」

満開に咲き誇る桜より、開花直前のぷっくりつぼみや風に散っていく花びらのほうが好き。
完全じゃない。
ちょっとかっこ悪い。
だから好き。

――綺麗なお姉さんも頑張ってるんだなあ。

お姉さんが髪をかき分けたとき淡い香りがした。


ボアなんとかの前でお姉さんと分かれて靖国通りへ。
靖国神社沿いの桜も見事なもので。

「色づいた私を無意味なものにしないで～♪」

通りを急ぐみなさんに鼻歌ＢＧＭを提供。
いいことした気分。
そんなことを考えてたら鼻がむずがゆくなった。
花？
鼻？
どっちでもいっか。

焼き芋屋を眺めていたら、お兄さんが肩を叩いてきた。

「はい？」
「焼き芋、買い過ぎちゃったからあげるよ」
「え、あ、いいんですか？」
「いいよ、はい」
「ありがとうございます」

やったあ。
食べたいなって思ってたんだよね。
お兄さん、ありがとう。
でも１０本はいくらなんでも買いすぎでしょう。

１／３のホクホク焼き芋。
あー美味しっ♪
やっぱりお芋は最高よね。

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ちょっとした面接を済まして、また歩き出す。
次の面接まで時間はたっぷりあったから、お茶の水まで歩いてみた。

スポーツ街もすっかり春。
スキースノボを抱えた人は見あたらない。
売れ残った板やウェアが申し訳なさそうに息を潜める。
また来年会いましょうって囁いている。

――春だぁ。

売れ残りも悪いもんじゃない。
値引きされる冬物だって案外いいものがある。
いつどこで気候が変わるか分からないし。
誰かが探しているかもしれない。

世の中はそんな風に出来てるんだ。

新品じゃなくていい。
値引きされてバーゲンに出てもやっぱり売れ残って。
古着屋も買いとっつくれなくて。
フリマでもやっぱり買い手がつかなくて。
最後の最後で糸に戻る。
マフラーに編まれ直されたり。

そんな売れ残りセーター。
そんな生き方。

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次はバイトの面接――の前に小腹が空いた。

「今無性にたこ焼きが食べたいかもしれない」

神保町でもお茶の水でも。
たこ焼きを探したけれど見つからない。

「銀だこ食べたい」
「いっそ道頓堀まで行ってやろうか」

ぶつぶつ呟きながらお茶の水駅。
こうなってはしかたないので吉野屋で腹ごしらえ。

50円引きだって。
ラッキー☆
今日ついてるかも。

食べ終わってお茶を飲んでいたら隣のお兄さんたちがチケットカードをくれた。

「いいんですか」
「ストラップにでも変えてください」
「ありがとうございます」

やったあ！
やっぱり九段で鼻歌提供したからだね。
いいことはするもんだ。

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野暮用２つ目は大塚でのバイト面接。
色々考えた末やっぱり花屋さん。

――電気屋バイト落ちちまったしね。

久喜っていう立地は最強だけど。
毎日車つかえるわけじゃないし、落ちてちょうどよかったわ。

・・・とはいえ、こんなにバイトに落ちると凹んでくる。
どんだけ不必要な人材なのかな。
就活が不安になってくる。

そんな不安を払拭するためにまずは神社で祈願。
だいじょぶ、だいじょーぶ。

南大塚の神社では縁日をやっていて。
久しぶりに綿飴を食べたら。
口の周りについちゃって。
子供たちに笑われちゃった。

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二度目の面接を終えて、さあ帰ろうかと。
途中に大宮に寄ってみた。

──ニモの水筒とかないかな。

ディズニーで一番好きなのはニモ。
だってブサイクだから。

ニモ連れて北海道にも沖縄にも行きました。
日本アルプスめぐったし。
雪深い越後山脈も。
真夏の九州や京都も。

普段は折りたたみ自転車の後ろにとりつけてある。
そんな頼りになる彼氏です。

──ニモグッズないじゃん。

うだうだ言いながら、入り口付近のクマグッズを眺めていたら。
店員さんに声をかけられて、普通に友達だったので２人で爆笑してました。



そんな東京スローライフ。
明日はどこに行こうかな。