診療所の先生が亡くなったらしい。
お世話になった婦人科の先生が。
冷える雨の中、家族総出で教会へ行った。
参列者は700名超え。
親戚や同級生の姿もあった。
葬儀屋のアルバイトをしていたけれど、それでもこんな大規模な葬儀は見たことがない。
あとになって知ったのは、葬儀は故人が出来る最後にして最大の伝道集会だとかそんなようなことだ。
小さい頃から診療所に出入りしていたから、先生には何度も会っている。
優しい先生だなあとしか思っていなかったけど、17歳のときに印象が変わった。
高校時代、ダイエットに励み過ぎて一時期30キロ台まで落ちた。
当然のことながら月経不順に陥る。
不順な上に、生理痛がひどかった。
見かねた母が嫌がる私を引きづり連れて行ったのが婦人科だった。
「婦人科行きなさい。T先生にみてもらいなさい」
いやだな、と思いつつもどこか安心していた。
このままではまずいと分かっていたから。
穏やかな妊婦さんたちの横で制服を着た高校生はひどく似合わなかったのをよく覚えている。
問診が始まってもふてくされているあたしに、先生は厳しい言葉を優しく言った。
点滴を受けている最中に、あああたしはちょっとヤバイんだって思った。
「よかった、ここで気付けて。来てくれてありがとう」
少し泣いている間、先生と母がそばにいてくれた。
6年近く経った今では自分以外の人の健康を意識できるくらいの生活は送れている。
のんびり思い出していた。
先生は、覚えているかな。
あたりは雑木林。
林の向こうを走る線路に時々轟音が走る。
街灯少ない冷たい夜、讃美歌だけが空に響く。
飾花がはじまると、雨が急に強くなった。
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