改札を通って早速観光案内へ。
「宗谷バスターミナルはどこですか」
観光案内のおばさんは優しく教えてくれた。
「相当寒いですよ、風も強いから。飛ばされないように気をつけてね」
13時45分、定刻。
バスターミナルを発車した最強バスは北の果てを目指す。
市街地、南稚内駅を通り過ぎ、いよいよ車窓に海が映ってきた。
荒れ狂う日本海。
これくらいしか表現する言葉が浮かばない辺り、まだまだ読書体験が足りないなと思う。
途中の声問漁港はなんともいえない侘しさだ。
声問岬にも訪れてみたいが、今日はガマンガマン。
「宗谷岬です」
バスの運転手がぼそっとつぶやく。
のそのそと数人が下車した──途端。
「さむっ!!」
今まで体験したことのない寒さと強い風が体中に吹き込んできた。
雪は空から降っているのか、それとも地面から舞っているのか分からない。
──わわわ、これは本当に飛ばされるかもしれないぞ。
一歩一歩滑らないように、飛ばされないように、踏みしめながら歩き出す。
日本最北端。
宗谷岬。
ついに来てしまった。
来るところまで来てしまった。
間宮林蔵大先輩を見上げて、しばし感慨にふける。
三角形のモニュメントは、写真か何かで見たことがある。
しかしそれらは全て夏の写真。
──真冬の宗谷がこんなに寒いなんて!!
緯度からしてみれば完全に冷帯だということはハナから分かっていたというのに、完全に予想外だった。
モニュメントの背後に回り、『本当の最北端』にたってみる。
風が強い。
自分の重さを信じて、下を覗き込むと流氷がきていた。
カモメが風にあおられながら空を飛んでいる。
気持ちいいかもしれないが、なかなか寒そうだ。
本当はもっと情緒にふけっていたかったが流石に30分程度が限界で、バスの待合室に飛び込んだ。
「寒いですね」
さっき一緒のバスで下車した人たちも同じ考えだったらしい。
思い思いに身体を温めながら、あと15分位したら来る予定の稚内行きバスを待つ。
「ご旅行ですか?」
「どちらからいらしたんですか?」
「今日は稚内に宿を?」
北の果てだというのになんだか温まる。
札幌からここに来るまで6時間。
すさまじい長旅だった。
しかし、それくらいをかけても来る価値がある。
真冬の宗谷岬。
帰りもまた日本海を眺めているうちに、バスターミナルに到着した。
冷え切った身体が温まる気配もない上に、空腹でしかたなかったのでそのままターミナル前のラーメン屋に飛びこむ。
先客がいて、店のおばちゃんと話しこんでいた。
「塩ひとつお願いします」
ラーメンを待っている間店内をみていると、有名人のサインが飾ってある。
──徳光さんじゃん。
「塩ラーメンです」
店のおばちゃんはラーメンを届けると、また先客のおばちゃんと話しこんでいた。
雪道で転んだ話。
こんなに寒いのに、ジョギングをしている人が増えているという話。
内容に思わず噴出しそうになったが、途中に気づいたのは方言が沖縄に似ているということだ。
イントネーションの違いこそあるが、語尾に『さー』がついている。
──日本語って不思議だなあ。
そうこうしているうちにラーメンを食べ終わった。
胃に暖かいものを投げ入れると、身体が本当にポカポカしてくる。
──今度寒いところに行くときは、満腹になってから行こうっと。
会計を済まし、またカメラを首にかけていると
「何を撮りにきたの?」
とたずねられた。
「さっき宗谷岬行ってきたんです」
「宗谷!人いなかったでしょ、寒かったでしょ」
「びっくりしました。もう寒くて寒くて」
おばちゃんと話していると、奥からおじさんが出てきて
「港のほうには鷲がいるってよ」
「鷲ですか!あ、でも次のオホーツク4号で帰るんです…」
「そうか、まあ寒いしな」
「風邪ひかないようにね、あったかくするんだよ」
「はい、美味しいラーメンであったまったんで大丈夫です!また夏に来ます」
「そうだ、それがいい」
笑顔で見送られる。
北の果ての温かさに涙が出そうになる。
観光協会のおばさんに顔を出しにいった。
「あら、おかえりなさい!どうでした?」
「寒かったです…でもすごかったです…」
「まあ、また暖かくなったらおいでなさいな」
「はい、今度は夏に来ます」
稚内の皆さん、ありがとうございます。
また札幌に帰ろう。
また抜海を越えて。
帰りも5時間の長旅だ。
朝札幌駅で買っておいた『シャボン玉』を読み出す。
「宗谷バスターミナルはどこですか」
観光案内のおばさんは優しく教えてくれた。
「相当寒いですよ、風も強いから。飛ばされないように気をつけてね」
13時45分、定刻。
バスターミナルを発車した最強バスは北の果てを目指す。
市街地、南稚内駅を通り過ぎ、いよいよ車窓に海が映ってきた。
荒れ狂う日本海。
これくらいしか表現する言葉が浮かばない辺り、まだまだ読書体験が足りないなと思う。
途中の声問漁港はなんともいえない侘しさだ。
声問岬にも訪れてみたいが、今日はガマンガマン。
「宗谷岬です」
バスの運転手がぼそっとつぶやく。
のそのそと数人が下車した──途端。
「さむっ!!」
今まで体験したことのない寒さと強い風が体中に吹き込んできた。
雪は空から降っているのか、それとも地面から舞っているのか分からない。
──わわわ、これは本当に飛ばされるかもしれないぞ。
一歩一歩滑らないように、飛ばされないように、踏みしめながら歩き出す。
日本最北端。
宗谷岬。
ついに来てしまった。
来るところまで来てしまった。
間宮林蔵大先輩を見上げて、しばし感慨にふける。
三角形のモニュメントは、写真か何かで見たことがある。
しかしそれらは全て夏の写真。
──真冬の宗谷がこんなに寒いなんて!!
緯度からしてみれば完全に冷帯だということはハナから分かっていたというのに、完全に予想外だった。
モニュメントの背後に回り、『本当の最北端』にたってみる。
風が強い。
自分の重さを信じて、下を覗き込むと流氷がきていた。
カモメが風にあおられながら空を飛んでいる。
気持ちいいかもしれないが、なかなか寒そうだ。
本当はもっと情緒にふけっていたかったが流石に30分程度が限界で、バスの待合室に飛び込んだ。
「寒いですね」
さっき一緒のバスで下車した人たちも同じ考えだったらしい。
思い思いに身体を温めながら、あと15分位したら来る予定の稚内行きバスを待つ。
「ご旅行ですか?」
「どちらからいらしたんですか?」
「今日は稚内に宿を?」
北の果てだというのになんだか温まる。
札幌からここに来るまで6時間。
すさまじい長旅だった。
しかし、それくらいをかけても来る価値がある。
真冬の宗谷岬。
帰りもまた日本海を眺めているうちに、バスターミナルに到着した。
冷え切った身体が温まる気配もない上に、空腹でしかたなかったのでそのままターミナル前のラーメン屋に飛びこむ。
先客がいて、店のおばちゃんと話しこんでいた。
「塩ひとつお願いします」
ラーメンを待っている間店内をみていると、有名人のサインが飾ってある。
──徳光さんじゃん。
「塩ラーメンです」
店のおばちゃんはラーメンを届けると、また先客のおばちゃんと話しこんでいた。
雪道で転んだ話。
こんなに寒いのに、ジョギングをしている人が増えているという話。
内容に思わず噴出しそうになったが、途中に気づいたのは方言が沖縄に似ているということだ。
イントネーションの違いこそあるが、語尾に『さー』がついている。
──日本語って不思議だなあ。
そうこうしているうちにラーメンを食べ終わった。
胃に暖かいものを投げ入れると、身体が本当にポカポカしてくる。
──今度寒いところに行くときは、満腹になってから行こうっと。
会計を済まし、またカメラを首にかけていると
「何を撮りにきたの?」
とたずねられた。
「さっき宗谷岬行ってきたんです」
「宗谷!人いなかったでしょ、寒かったでしょ」
「びっくりしました。もう寒くて寒くて」
おばちゃんと話していると、奥からおじさんが出てきて
「港のほうには鷲がいるってよ」
「鷲ですか!あ、でも次のオホーツク4号で帰るんです…」
「そうか、まあ寒いしな」
「風邪ひかないようにね、あったかくするんだよ」
「はい、美味しいラーメンであったまったんで大丈夫です!また夏に来ます」
「そうだ、それがいい」
笑顔で見送られる。
北の果ての温かさに涙が出そうになる。
観光協会のおばさんに顔を出しにいった。
「あら、おかえりなさい!どうでした?」
「寒かったです…でもすごかったです…」
「まあ、また暖かくなったらおいでなさいな」
「はい、今度は夏に来ます」
稚内の皆さん、ありがとうございます。
また札幌に帰ろう。
また抜海を越えて。
帰りも5時間の長旅だ。
朝札幌駅で買っておいた『シャボン玉』を読み出す。
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