妄想ジャンキー。202x

人生はネタだらけ、と書き続けてはや20年以上が経ちました。

『あさが来た』17週、雁助さんの生きる道、うめの生きる道。

2016-01-30 13:15:46 | 朝ドラの感想
『あさが来た』16週「最後のご奉公」の長文ネタバレ感想まとめ、その1。


 

ほんのりビター、美しく純粋な雁助さんとうめさんの恋、その結末。




懐かしのあの人、新キャストのあの人、続々投入。





関連リンク

『あさが来た』16週その2.道を照らす人、「おおきに五代さん」

『あさが来た』16週その1.雁助さんもまた「大阪の大恩人」、加野屋の「恩返し」

『あさが来た』15週、その2.開拓使官有物払い下げ事件、ひとつのかたち

『あさが来た』15週、その1.トモちゃんシンちゃん、十人十色の生き方、雁助さんの揺るがない思い

『あさが来た』他、朝ドラ関係の記事はこちら。
朝ドラ感想記事のまとめ。

他民放ドラマ、NHKスペシャルはこちら。
少々真面目で結構ゲスいテレビっ子の備忘録まとめ。



■肝っ玉お母ちゃん


はつ、菊さん、藍之助がやってきました。
早速はしゃぐ藍之助にはつさんが…

 
「藍之助、ウロウロしたらあきまへん」
「あかん言うたらあかんで!」


藍之助を叱るはつ母ちゃんだけど、静かな人がキレると怖いのよね。
それにしても本当に宮崎さんは、可愛いだけを卒業された、と。
あの寂しそうな山王寺屋での風景から、井戸や谷町、寺町、和歌山……まあ本当に多彩だわなあ。

「あのお人形さんみたいやったはつさんもなあ、今やすっかり肝っ玉お母ちゃんだすわ」
って菊さん言ってるけど、「あの鬼畜姑だった菊さんも、今やすっかり明るいばあちゃん」

「おじいちゃんがくれたお小遣いかてな、丸ごと取り上げられてしまうし」と藍之助。
栄達父ちゃんがこっそり稼いだお小遣いをこっそり藍之助に渡す絵を想像して、「栄達父ちゃん、元気でよかった…!!」と



そんなはつたちを覗いている目線は、千代でした。


「会いたかったわ」
「おみかんのおばちゃんやで」


はつに抱きしめられて戸惑う千代。

しっかし、五代さん見送った翌々日にはつ姉ちゃん本格再登場って、
BK…やりおる……




■明るいBBA


はつさんたちが大阪にやってきたのにはわけがありました。

「へぇ。三十三回忌やよってな。どないしても来たかったんだす」と菊さん。
山王寺屋の代々の先祖を敬う気持ちが菊さんにしっかり残ってることにジンワリきていたら。


「畑仕事の合間に私かはつさんかで、その奥さんにお琴教えてますのや」

羽振りの良い庄屋の奥様にお琴を教えているという話。
あのとき惣兵衛が新次郎に探させて、はつに持たせたあのお琴がここまで生きてくるとは。
しかもはつアゲよりも、むしろ菊さんアゲに使われるとは。

物語の筋1本1本が大事にされてて、無駄なエピソードが少ないんだなと改めて実感。


そのあとも
「早く迎えに来てほしいけどなかなか来てくれない」だの
「(正吉さんは)さぞかし天女様にモテモテかな」だの
「やだなにそれ心配~」と

キャッキャウフフのおしゃべりはノンストップ。

仮にもよのさんは大阪の大店の大奥様。
菊さんもそうだったけれど、御一新で没落。
それでもお互いに気を遣うことなく笑い合える。

そういえば新次郎と惣兵衛にもありました。
楽しそうに笑いながらおうどんをすすってたっけ。

なにこのいい話。



■極め付きの始末とは


 
「あのへぇさんな、極め付きの始末屋なんや」
「鼻紙使うときでもな、きっちり4つに折って、それ4回使て、それ干してまた3べんも使て…!」


雁助さんが暴いた(?)へぇさんの真実。
何故「へぇ」しか言わないのか、というと「『へぇ』で済む会話はそれで済ます」という超省エネの始末屋。
逆に喋りだしたときはここぞ!というときなのでしょうね。

「無駄なこと一切せぇへん!」

物理的にも人間関係においても一切の無駄なし……!!


ところでその鼻紙のくだり、想像してみたんだけど。
4つ折り4回が限界だわ。



帳簿もこれ。
びっくりだよ、何かと思ったよ。
『デスノート』か何かかと。

『極めつけの始末』にわかりやすいエピソード。


美術スタッフあたりが「へぇ、へぇ、へぇ」って言いながらぎっしり書いたのかなとか思うと……なんか…こう……闇だなー…て。




■立体的な人物造形



「なんやこない静かなこと久しぶりやさかい、ちょっとほっとしてくらいだす」

普段は騒がしい農家暮らしなので、静かな奥でほっとしているはつ。
ワンルームマンションから部屋数がたくさんある豪邸にやってきて、ひとりで過ごす時間。
静寂を楽しんでるってあたりでしょうか。

でも元ははつも今井家の人間。
今井家で過ごした日々がよぎり「落ち着く環境が久しぶり」なのかもしれません。
あるいは山王寺屋での日々が脳裏をよぎっていて「ひとりの時間が久しぶり」なのかもしれません。

ここ最近は炭坑やら銀行やら五代さんあたりであさパートだったけれど、序盤のはつパートをもう一度じっくり見直したくなってきた。

そんなはつをチラ見した千代は……

「お母ちゃんとまるっきり違うのやもん」

千代の本音。
招き猫に話しかけているのは、よのさんがいつも話しかけてるくせがうつったのかな。
なんとなく微笑ましい瞬間。


・千代にとって「あさはうるさいお母ちゃん、はつは優しい叔母」
・藍之助にとって「あさはかこいい女社長、はつは怖い母ちゃん」

これを踏まえたうえで、

・はつは「千代とあさがよく似ている」
・千代は「はつとあさは似ていない」。

子供の目線を通しての姉妹の対比が組み込まれてる。
演出などでの対比ではなく、藍之助と千代の心情でそれを伝えるのが上手い。



また、

・はつは「お人形さん」から「肝っ玉母ちゃん」へ。
・菊さんは「鬼畜姑」から「明るいBBA」へ。

さらに

・惣兵衛は「ムカつく商家」から「優しい父ちゃん」
・栄達さん「言いなりの旦那様」→「優しいおじいちゃん」

惣兵衛と栄達さんは出演はしていないものの、五代さんの回想や藍之助の言葉から想像ができます。

長らく出てなかった眉山家や、母親としてのあさの人物造形がとても立体的。



■乗り越えてきた艱難辛苦



「お金で返せるもんなんか一つもあらへん。そんなお金があるのやったら子どもたちやおみかん、もっともっと立派に育てんのに使わんでどないしますのや。」
「ようこの子たち立派に育ててくれましたなあ」


はつが梨江ママから言われた言葉。
お金はまずは未来あるものを育てるのに使うべき、『奨学金』という考え方なんでしょう。

これを聞いて思わず泣いてしまったというはつさんの話。
あさの母乳が出ない時のよのさんもそうだったけど、母親になったあさはつに寄り添ってくれる大奥様たちが大好きだ。

それにしてもこの断られたやらはつさんが涙したやらのくだり。
聞いただけで涙が出そう。←おはつさんとお母はんのシーンに弱いタイプ。

 
「涙もろなるいうのは、それだけ涙流すような思いをぎょうさんして、それを乗り越えてきた事の証やいうて聞いたことあります」
「ぎょうさんの艱難辛苦乗り越えてきはったいう事だす。何も恥ずかしいことなんてあらしまへん」


この言葉、幼い頃からあさはつを見守ってきたうめが言うから余計に沁みる。

乗り越えてきた10年間の出来事。
それを振り返り、また子供時代に戻ったような姉妹の眼差しもまた暖かくてなあ。


お化粧箱の紅・蛇の抜け殻。
琴や裁縫・木登りや相撲。

小さい頃から違っていた。
だから今更同じになんてなれない。
でもそれでいい。それがいい。お互い自分らしく生きる。


姉妹兄弟って似てるだのヒエラルキーだのあったりするけど、そもそも比べるものではないのでしょう。
そんなことをあえて対比でそれを見せるのが上手。

 
「ずっとこないなアホな事したかったんだす」
「長い事気ぃ張ってましたんやなあ」


あさとはつのこの笑顔、京都で過ごしていた楽しいあの頃が思い出される。
あれから過ぎた日々だとか、出会った人たち別れた人たち。

あさはさらに続けます。
「大人になるとだーれも『アホ』とか『こら』とか言うて、おいど叩いてくれまへんさかい」

東京で忠興パパが空を見上げて娘たちの成長を思ったように。
あさも父を懐かしく思って。
それを見守るはつも、あの頃のような笑顔。

長い年月が流れて、時代も変わったけれど。
ふたつの花びらは変わらず咲き誇ってる。
そんなことを思いました。


ふと「叱られた思い出」で思い出したのは五代さん。
もちろん忠興のそれとは違うんだけれども。

あさに怒鳴られたり叱られることで五代さんがワンダフルしてたのは、「誰か叱ってほしい」ってどこか気を張ってる気持ちがあったのかなとか。
それがあさの照らした道だったのかなとか。



■しつこいようですが、朝ドラです。


「お国のためやいうけど、ようわからへん」

ドラマ内は明治18年からさらに1年経っての明治19年か20年かそこらくらいかなと。
明治期の徴兵制度は明治6年から。
ですが、この徴兵令は明治22年に改正されます。

富国強兵の時期だとはわかりますが、それが庶民レベルに浸透しているのかどうなのか。
そこそこに浸透はしてるんだとは思うけど、日進日露戦争前だもんなあ。
お国や兵隊って概念も黎明期ってあたり?
とても絶妙な時期のような気がする。




「御一新の戦」やら「西南の役」やら言ってますが、
大河ではなく朝ドラなんだよねこれ。

今更だけど、いつもそこがびっくりだよ。



■巴御前あさ、般若あさ


あさとはつ、よのさんと菊さんがそれぞれ盛り上がってる頃。
千代と藍之助が遊んでました。



あっちもあっちで変態臭あったけどこっちもたいがいに……
(梨央ちゃん、体張ってんなあ……)


ふたりはあさの話で盛り上がります。
藍之助はあさを巴御前に喩えて…


ってこれかっけえええ!!!

藍之助妄想GJ!!!
(ちょ、忙しいんだろう撮影でこのワンカットのために以下略)

ところがどっこい、千代からしてみれば虫歯の乳歯を糸で引っこ抜かれそうになった話。

 
怖いよ!!!!
いやいやお面もあれだけど、その糸!!!


……歯医者のいる平成の世に生まれてよかった。

思わず笑ってしまうコスプレシーンでしたが、藍之助と千代はお互いにうらやましがってるんだなあって
あさとはつがそうであったように、よのさんと菊さんがそうであったように。
白岡家と眉山家はそうやって描かれて、立体感を増すんだなあと。

また、ここでお面っつーアイテムが使われたのは、
千代も藍之助も、「山王寺屋がかつて能面だったころ」を知らない。
御一新の前を知らない。
そんなことを象徴してるのかなとか。



「へぇへぇ、お姫様」
「お姫様やて…ほんまふざけて」


まんざらでもなさそうな千代、本当に女の子らしくてかいらしい。
でもでも、千代ちゃんは五代さんに初恋パルピテーションしててほしい派です。
あのときの五代さんの笑顔が素敵すぎて……




■あさバウア、のち雁助ねこ歩き



BKPも好きなんだけど、この「新しい朝がやってきました」ってのも好き。
うまくいこうがいかまいが、朝は必ずやってくるし年も明けていくっていう。
時間の流れを丁寧に表示してくれるのは、とっても親切だなと。

 
「よしよしよしよし、賢いなあ。」

突然始まった世界ねこ歩き。



早朝の静寂の中で「騒がしくなる前に外に出さないと」と話す二人。
雁助さんは猫を追い出せないのか、それとも「騒がしくなる前に」外に出られない猫なのか。



■銀行開業へ向けて


公式が五代ロスを癒してくる中、あさは銀行開業に向けて大忙し。
そこに手を貸すのがへえさん。



【へぇさんのココロオドル業務リスト】
・預金集め
・貸付先の開拓
・諸会社や資産家への挨拶回り
・公債、投資先株式についての知識集め
・大阪同盟銀行集会所への加盟
・他銀行への挨拶回り
・新聞などの開業広告


ネットなんぞない、移動も難儀だった時代にこれは大変だったろうなあ。

そのへえさん。
雁助さんの去就をめぐり、この言葉。


「大番頭さんはこの加野屋にとって財産です!失うと、そろばんでははじききれんほどの損失になります」
「自分の右腕となる有能な働き手を連れて一緒に出てしまうという恐れもありますから」


加野屋で働き始めてさほど長くはないへえさん。
その彼が言い切るくらいの働きっぷりを雁助さんが見せていたのか、へえさんが見抜いたか。



■忠興とあさと千代と


今井銀行の祝賀会のため東京へ行ってきたあさ、新次郎、千代。
ここであさの父・忠興と千代が初めて対面するのですが……

 
「あさ…!」
「なんと」


実質5文字。
これだけで、『おいどを叩いていたあさが母となった姿をしっかりと目にした喜び』、
『あさとほくろ以外瓜二つの孫・千代を見たときの驚きと喜び』
このふたつが伝わってくるから升さんすごいわ。


「大人になったら誰もおいどを叩いてくれない」とあさはつに言わせておいてからの、忠興パパに小あさと千代を見間違えさせるって作り。
おいどを叩く側と叩かれる側にしっかりとした愛情があるってのが、このドラマの安心材料かなと思えます。




■いやいや、その話すごくね?


で、帰ってきたあさは早速東京での話。


「西の五代、東の渋沢」

そうそうそれそれ、そのフレーズ。
フレーズ自体は小学生んときから知ってたし渋沢栄一は有名人なんだけも。
西のその「五代友厚の功績」ってのはこの作品で初めて知ったんです。

でもそんなことは知らないよのさん。

 
「その渋沢さんってどんな人なんだす?」
「その伊藤さんいう人もお偉い人なんだすか?」


フレンドか!!


「その前に伊藤様て…内閣総理大臣の伊藤博文閣下だすか?」

驚きながらも黙って聞いてた雁助さんがツッコミ。
よのさんのオトボケやグイグイ行ったあさの話を一時停止。
「ちょ待て、その話すごくね?」って雁助さんが気持ちを代弁してくれました。


「へぇ。その伊藤博文閣下だす。えらい親切で朗らかなお方で!」

あさ、すげえ……と思いつつ。

いやいや…最近忘れてたけど…

あさ、土方歳三に啖呵切って、大久保利通とシェイクハンドして、福沢諭吉に道を尋ねて、五代友厚とハグしてる子だっだわ。



んーーーでもあさが明治の偉人相手にグイグイしゃしゃり出るの観たかった感否めない。

五代さんにクソ野郎言い切ったときや炭坑ピストル、払い下げ事件のときかっこよかったから。
誰かにセクハラ発言されて「はぁ?!」ってなるか、
もしくは新次郎がバカにされて「人の旦那に!」ってブチ切れて投げ飛ばすの観たかった。

でもこの東京のシーンが割愛されたのは、多分セットとギャラの問題なんでしょう。
そもそも今井家・山王寺屋・加野屋もそれぞれ使い回し?だもんなあ。
朝ドラは大河よりずっと予算も時間も限られてるから仕方ない。
大久保、五代、渋沢、大隈でここは満足しておこう。
(ともすればあの前作大河の鹿鳴館以下察して下さい)


「さすがおあさ様や」
って言う雁助さんが少し寂しそうに思えた。
生まれからしてまず違う。敵うはずもない(敵対ってわけじゃないけど)。
この人から大事な人を取り上げちゃいけない、っていろんなこと考えてそう。




■亀助さん、安定のトレンド入り。




帰ってきた亀助さん。
雁助さんとの再会に喜び溢れる亀助さん。
ちょっと引き気味の雁助さんだけどめげない亀助さん。

元々のハイテンションもあるんだろうけど、あさが来るよりずっと前から一緒に加野屋にご奉公してきたふたり。
そこの物語も見てみたい。




吉本新喜劇座長が見守る加野屋新喜劇。

可笑しいんだけどどこか切ないのは、亀助さんと雁助さんの対比が組み込まれているからなんだろうな。
お嫁さんと共に家庭を築いていく亀助さん、そのお嫁さんと娘に逃げられた雁助さん。

ふゆがおらん、と思ったものの。
亀助さん夫妻に子供がいるとわかり、中の人中学生で一児の母役はさすがにちょっと、と思ったので脳内ふゆちゃんで補完した次第です(´-`)





■庶民の文明開化


先日のへえさんとあさのシーンでもありました。
文明開化がジワジワ浸透していることを感じるシーン。



朱肉に印紙、なんかどんどん新しくなるんだねえ。

住み込みか通いかでも盛り上がる従業員たち。
今まで住み込みに馴染んでいたからそりゃ前者を選ぶのは当然だけれども。
亀助さんが「わてやったら通いで嫁さんと暮らしたほうが」と言うのがなぜか新鮮だった。
現代の働き方の原型ってここなんだな、と同時にここで「中世」の働き方が消えていくんだなと。



苗字!!!

五代さんがひとり洋装をいち早く導入していたり、13週で東京の文明開化にあさがはしゃいでたりしたものの。
庶民レベルだとやっぱり『日常』からなんだなと。



■新次郎が働いている




新次郎は山屋さんから紡績事業の話を聞いたときに、晴花亭で言われたトモちゃんの言葉思い出したんかな。
トモちゃんが勧めた仕事、あささんを内からだけでなく外からも支えること。
夫婦の会話会話の一瞬の間にそんなことを思った。

あさの「また惚れ直してしまいそうだす」なんて。
字面だけ見たらそろそろいい歳したおかみが何を言ってるのやら、てな言葉だけども。
はつ一家が来たときに、あさの少女時代を思い出してるせいか、このセリフへの流れが自然に感じた。



■銀行の神様がきた。


 
「銀行を経営するものが一番欲しくて一番大切なものは何だと思いますか?」

唐突に始まったクイズ。
『信用は実に資本であって商売繁盛の根底である』っていう渋沢語録からなんだろうな。
見た目も中身も実在の渋沢翁にぐっと寄せてる。


その信用に対して「両替屋は信用が第一」という大旦那様の言葉と、「両替屋は信用をお金に換える」っていう雁助さんの言葉。
加野屋を支える2人の考えは、銀行経営の根底にあるものだったのだなあ。
しかし雁助さんのほうのは最近だけど大旦那様の言葉は3週、久々にきたロングパス。




お金について「扱う人の器の大きさに従って動く不思議なもの」と渋沢さん。
雁助さんは「目に見えるようで、えたいの知れんもん」って。

そのお金に翻弄されたサトシ、御一新前の山王寺屋が脳裏をよぎった。
ただの器ではなく、変化を受け入れるだけの器と、そこに入る水みたいなもんか。




西の五代、東の渋沢が「常々やらねばならぬと思っていたこと」は「人間を作ること」。
「後世に何を残せるか」と説いた五代さんから始まり、教科書に載っているペンギンの絵で喜んでいたこと。
それは「つまり教育です」と。



驚いたのはあさより新次郎。
商いも金も嫌いだった新次郎が「人間味のあるものに思えてきた」とびっくりぽん付きの驚きっぷり。
社長としての実感ってのもあるんだろうけど、新次郎の中には正吉さんや五代さんの姿が過ってるんかな。



■うめの気持ち


で、その少女時代を思い出させて亀助ののろけ、新次郎&あさラブラブを見せつけたあとの、雁うめの切なさよ。
けしからん、もっとやれ。


「うめが大好きや」

まくしたてるあさも好きだし、おとぼけなあさも好きだけど。
この優しい告白を選ぶあさも好きだな。


「うめはあなた様といてんのが幸せなんでございます」

幸せかどうかは自分が決める、ってのは確かはつのときに感じたものだったか。
「勘違いしてもろたら困ります」
とあさの言葉を否定したあとに優しく話すうめが沁みる。

今井家に頼まれたからじゃない。
あさが立派なおなごになるのを見守ること。
まだまだな部分をまだ見守ること。
あさとそっくりの千代を見守ること。

それがうめ自身が「ようよう考えて進んだ道」。
そこには必ずあさが来る。


今風に言うと「仕事と家庭、どっち選ぶ?」なんだろうな。
あさが仕事を選んだ、はつが家庭を選んだ。
ふゆも家庭を選んだ。じゃあうめは……
って思ったけど、うめはきっとあさを通して家庭と仕事のどっちも選んだんだって思ってきた。
そもそもどちらかを選ぶもんじゃないとも。


「あさにとってのうめは…」←ここに入る言葉が見つからない。

母親も姉も友人とも違うべ、と考えたら恩を返すべき人としての『大恩人』なのかもしれないと。
あさの後ろから『道を照らす人』なのかもしれない。
そんなうめがあさへ伝える『ご奉公』が、うめ自身が道を選ぶって言葉か。

道を照らすと言っても、夜道に怪我のないよう足元を照らすような照らし方。
嫁入り前、当初あさに付く予定だったふゆに
「おあさ様の大股は一生直らへん。せやけどな、ほんでも見かけたらそのたんびに注意するんやで」っての思い出した。



「どないしてうめがここを去ることが出来ますのや!」
「これからもおそばに置いといとくれやす」


あさが思っていたよりあさはうめに思われていたこと。
あさに『奉公』することがうめにとっての幸せで、アイデンティティーか。




そんなうめのアイデンティティーを雁助さんがわからないはずがない。
雁助さんも大旦那様へのご奉公にアイデンティティーを抱いていた。
でも、今になりあさとうめの告白を受け止めようとする雁助さんの視線が切ないんだよなあ……

雁助さんとうめさんの恋はきっと成熟したんだと。
先週の「わてと一緒にこの家出ぇへんか」ってのは、成熟前のとても純粋な告白だったのかもしれない。
年不相応、なんて言いたくないけど家庭を築いていておかしくない中年のふたりのどこか切ないイノセントな家出計画。


ふと嫁入り前の2週で「今更どこへも行けへん」と言っていたあさを思い出した。
どこへも行かない、今から行く場所が居場所だ、と。
うめはあさよりずっと前に覚悟を決めていたのかもしれないと思うと、雁助さんとの出会いに尚更涙目。



■「榮三郎さん」




娘の看病のため店を出て愛媛に向かうという雁助さん、それを立ち聞きしているうめ。

ここにまた寂しい思いをする人がもう一人。
榮三郎にとって雁助さんは、イマイチ頼りにならないお兄ちゃんの、代わりの存在でもあったか。



先週だったかね、
榮三郎を「榮三郎さんの言う通りやと~」って呼んでるのが気になってた。
榮三郎の活躍が描かれ、雁助さん派八代目でも若旦さんでもなく「榮三郎さん」呼び。
もうあなたは一人で大丈夫、ってあのとき認めたんだろうな。





■誰も悪くない



「番頭さんが冗談でもいっぺんでも、うちに一緒に行けへんかて言うてくれはった…その思い出あったらうちはもう一生一人で生きていけます」

雁助さんの告白と、火傷を冷やしながら握った手。
そのときに2人の恋は成就していた。


だとしてもこんな結末辛い。
うめさんの頭の中はそのときの思い出だけじゃないはず。
一緒に招待状書いたこととか、九州に手紙出したこととか、亀助とふゆの恋の話に盛り上がったことだとか。
たくさんの思い出がある。

序盤にはじまり、ジワジワ続いてたから余計に辛いんだろうな。



新次郎夫妻の千代や、遊びにやってきた藍之助とはつたち、それから亀助さんの愛娘の話。
きっとそのころにはもう奥さんからの手紙が届いてたんだろう。
いろんな子どもたち・親たちの姿に、自分の娘の姿を重ねたのか。
確かに雁助さんひでえ!と思ったけど、これきっと誰も悪くないんだ。

 
「あんたはどうか、ずっとおあさ様のそばで頑張っとくれやすな」
「へぇ任しとくなはれ」


雁助さんは、うめにとってあさが娘以上の存在だってこと知ってるから。
だから自分と同じ思いをさせたくなかったのかもしれないな。





■涙の相撲



縁側にたたずむうめが美しくて。

失礼ながらバラエティで爆笑させられてた友近さんとは別の存在の「うめ」なんだなと。
TLで見かけたんだけど、本当に黒田清輝の『湖畔』みたいな絵で素敵。



涙を流さないうめにあさが相撲を持ち掛ける。
「うめが大好きや」と言っていた優しさとは違う、子どものころに戻ったみたいだ。

「歳をとって涙を流すこと」も「歳をとって相撲をとること」も何も恥ずかしいことじゃないんだ。



夕暮れ時かな、オレンジ色の光に照らされる2人。
相撲をとってるんだけど遠めに見ると抱き合ってるようにも見えて。
なんだか、うめもあさもきれいだなって。
こんな歳の取り方したいなって。


かつて今井家で涙の相撲をとったとき、あさはうめにはつを託した。
今、加野屋で相撲をとった2人。

きっと見えないところで雁助さんが、あさにうめを託したんだと思う。




うめからこぼれる涙に、嫁入り前のあさの「何でどす」が重なる。
何で雁助さん元嫁のところに帰ってしまうんだす?
何でプロポーズしたんだす?
何で同じこと考えるんだす?って。

多分それはうめも答えをわかっていて。
でも口にしちゃいけない分別もついていて。
そんな自分が辛いのかなと。




■最後の御奉公


明治21年、両替屋・加野屋を母体に加野銀行が誕生。

あさが洋装を披露したハレの日の朝。
雁助さんが千代に言葉をかけました。



「お千代様。お母さまは苦手だすか?」
「わてなぁ苦手だしたわ。もうずーっと苦手だした。そやのにどっか楽しゅうてたまりまへんだしたんやな」

あさと瓜二つの千代に、雁助さんは初めて加野屋にやってきた頃のあさを重ねてるんだろうか。

雁助さんがあさと共に、大旦那様や新次郎、榮三郎と共に見てきたのは激動の時代。
しっかり立っていなければ振り落とされてしまいかねない時代。
それも全部「楽しかった」と振り返る雁助さんの強さにじんわりきた。

「お母様の働いてはる背中、よーう見ときなはれや」

あの時代をみんなで乗り越えてきた。
だから大丈夫だ。
しっかりついていけ、そしてあさに託した大旦那様の加野屋を守ってくれ。


そんなことを千代に伝えたいような。



美しい金魚のような華麗な洋装が描かれたあと、どこかタイムスリップしかねないような雁助さんの旅支度。
大旦那様に頼まれて炭坑に向かったときの賑わいとは対照的な静けさ。
でも雁助さんにあたる日差しが優しくて。

裏口から出て、正面で一礼してるのが雁助さんらしいなって。
丁稚奉公から勤め上げて、もう何十年と過ごした場所なんだろう。
誰にも言わないなんてみずくさいけど、ゆっくりと深く一礼してる雁助さん。
とても雁助さんらしいなって。


加野屋のある通りの角を曲がるまで、雁助さんが映されていたのとてもよかった。
3週くらいからはじまったあさの加野屋での暮らし、御一新や炭坑…
出会いやら別れやら色んなことがあったけど、それでも雁助さんは「歩いていく」んだって。

雁助さんの最後のご奉公。
うめをあさに残したこともご奉公。
榮三郎に当主としての誇りを持てと励ましたのもご奉公。
そもそもその榮三郎を育てて加野屋を『加野銀行』を『後世に残した』ことがご奉公。


でも雁助さん、ご奉公し尽くしたとは言い切れないんだろう。
うめさんにも申し訳ない気持ちもあるんだろう。
別れや旅立ちなんて誰にでも必ずあることだけど、そこにはほんのり悔しさや不安みたいなものがあるんだろうな。

でも、歩いていく。
大番頭の誇りを背に去っていく。


そんな背中に泣いた。


「わても小さい頃からお店でお父ちゃんや雁助にいろいろ教えてもろてほんまに役立ったと思てます」

このあとの晴花亭で、あさが教場の話をするシーンですが。
榮三郎がって何気ないセリフだったけど、これもまた『後世に何かを残す』ってことなんだなあ、と、




■食べっぷりのいい成澤泉登場


 

「あれだけ誰からの信頼も厚いお方やよって、困ったときは誰か手ぇ貸してくれはりますて」
「うちが苦労して手に入れようとしている信用というのが、旦那様にはどこか備わってますのやろなあ」


新次郎への信頼を加野屋への信用にうまいこと変換しとる。


序盤で対決しそうな感じをみせていた2人が仲良くしてるのは微笑ましい。
妾になるならないで揉めた?美和さんもまた、あさと同じように一職業人として生きているのを見るのはなんだか嬉しいもんだ。

しかしまあ美和さんの和装に、あささんの洋装。
どちらもとっても素敵でなあ……
おふたりが正面向いてニッコリ笑いながら立ってる絵を観てみたいわ。
もちろんそこに乱入する妖精さんも込みで。




きた、日本女子大の話。
成澤泉、モデルは成瀬仁蔵。


あさと成澤泉が出会うのはもう少し先のお話、それは思わぬ形、とな。
なんだかワクワクするぞい。



つか民ちゃんひさしぶり!悟くんの奥さんもお久しぶりです!






■お千代様、うしろうしろ。


千代はついに最終形態にメガ進化。

 
「うちおんなじおなごとして、あないなおなごにだけはなりたくないて思てますや」

お千代様、10分くらい前の雁助さんの言葉どこ。



少し千代を振り返ると…


13週、感動の名演技)
 ↓

15週、恐怖のままごと)
 ↓

(16週、お父さんもみまつがい)
 ↓


成長したなあ!!!

で、そんな千代とあさがにらめっこ対決。


雁助さんとあさが仁王像でにらめっこ対決してたように、今度はあさと千代がにらめっこ。
娘のために加野屋を去った雁助さんが担っていたにらめっこ役を、あさの娘である千代が受け継ぐとは、こりゃ斜め上をきた。

そんな親子喧嘩を仲裁すべく乱入してきたのは……



五代ロス、雁助ロスと襲い来る喪失感を味わいながらも。
へぇさん・ふっかちゃん・吉田君・千代最終形態などなど、新キャスト続々投入。


さらには玉木さん渾身の変顔もどうぞ、と絶対に涙では終わらせないBKおいこら。



■来週は…




はつさん惣兵衛さんのシーンは名シーンに食い込んでくるはずだ。
これは覚悟しておかねば。

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