16:20
授業が終わり、バタバタと教室を出る。
今日の4限は史学科専門の授業。
史跡やら天然記念物やらの話です。
「奈良の鹿はどうなんだろうね。あれも天然記念物でしょ」
「天然記念物のくせにスレてるよね」
「せめてフレンドリーって言ってあげてよ」
16:25
いつもの溜まり場で少し一休み。
「窓ずーっと見てたら日没の瞬間見ちゃった」
「いじめられっ子かよ」
まっすぐ駅に向かえば37分発の急行に乗れるんだけど、普通に行ったら駅はめちゃくちゃ混んでるから、ここで一休み。
帰っていく学生たちを見送ってから、私も駅へ。
駅へは歩いて5分弱。
西の空が赤い。
いつもなら友達と一緒にこの道を歩くんだけど、今日は1人。
焼き鳥屋の屋台があった。石焼き芋といい、たまプランヌとのギャップが激しいなあ。
16:40
2番線脇の石段に座り込む。私の好きなところ。
ふーーーーっ。今日もおつかれさま、私。
ホーム屋根の向こうから見える青い空に吸い込まれそうになる。
誰もいなかったら寝転んじゃうんだけどもなあ。
向かいのホームに中央林間行きが入線する。
帰宅ラッシュで混みあう電車。
そういえば、この向かい合うホームで手をふりあったことがあったっけ。
「じゃーねー」
「またあし──」
伝えきる前に、私の声は電車にかきけされたんだ。
電車が去ったあと、そこには夏の夕暮れだけがあった。
へへっ、懐かしいな。
思い出し笑いなんて、本当に年取ったんだな。
伝える前にかき消されるなんて、とことん私らしいや。
こんな私だけど、少しは好きになれそう。
電車が夕日に追いかけられる。
いつもの通学列車なのに、ソワソワする。
むずがゆい。
くすぐったい。
甘酸っぱい。
これが秋なのかしら。
多摩川を越える。
ガタン・・・ガタン・・・。
夕日が水面に反射する。
橋のかかる川は昔から好きだった。
荒川、利根川、赤堀川、多摩川、天竜川、大井川・・・
橋のそばに座って、川を往く人達を眺めていた。
二子玉川駅を出た列車はグルリと大きくカーブして地下区間へ入る。
目が慣れない。
超高速スピード。
TDLのスターツアーズを思い出した。
ぎゅいーーーーーーん。
意識はそこにあるままで、体だけがひっぱられる。
一瞬気を失いそうになった。
17:20
渋谷駅につくと、すっかり夜の街になっていた。
たまプラの駅から二子玉川までのトワイライトは、なんだか魔法にかかっていたみたいだった。
夕方の街が魅せる魔法の世界。
人を切なくさせる魔法。
世界の中心であるように映え渡っていた太陽が沈み、夜の帳が下りてくるその前に。
妖精たちが踊る。
どこか悲しいセピア色の踊り。
いつもの特別快速を逃したので乗り換えには余裕がある。
テプコプラザで旅行パンフレットを物色。
うーん、北海道行きたいねえ。
でも個人旅行だし電車旅だしいいや。
そういえばスノボの季節か。
苗場行きたいって去年話してたっけ。
苗場高っ!北志賀とか宮城蔵王とか、手ごろなところで・・・。
今年は3回くらい行きたいなあ。
その前にバイトもしなきゃなあ。
今日月曜日か、タウンワークタウンワーク・・・。
新宿版じゃないよ、あったあった渋谷版。
見つけたところで応募する勇気ないんだろうな。
でもティッシュ配り飽きてきたし、少しは身になるバイト探すかぁ・・・。
埼京線ホームはえらく遠い。
普通に歩いたら7分。
単位取得が鬼気迫った中国語の授業に遅刻しかけたときは、なんとまあ2分で乗り換えたことがある。
トボトボトボ。
今日は1人か。
1人は慣れてるのになあ。
1人のほうが楽なのになあ。
なーにが、こんなに悲しいのかなあ。
秋だからかなあ。
地元駅までの直通はないから1回乗り換えなきゃ。
赤羽、赤羽・・・
新宿、池袋。
やっぱり人多い。日本の大動脈。
アフター5の開放感か、サラリーマンもOLもちょっとスッキリ顔。
でもね、まだ月曜日よ。
赤羽であたふたと乗り換える。
おっと、喫茶店がバイト募集。
ふむふむ朝の時間帯、いいなあ。やってみようかなあ。
北区のタウンワークもらっとこっと。
うわ、寒い。
カーディガン1枚じゃきついよ。明日はジャケットきよっと。
電光掲示板に寝台特急の文字。
あの文字には非日常がこめられている。
通勤通学と帰宅に彩られた日常からの脱出口。
・・・あーっ、どっか行きたいっ。
高崎行きは案外空いている。上野から来てるからかな。
荒川に広がるは夜の景色。
あの光る点一つ一つに、人の生活が詰まっている。
煌びやかな夜景もいいけど、マンションや住宅街の灯りも立派な夜景だよ。
・・・・・・って前にツレが言ってたっけ。
席が空いたから座った。
優先席だけどいいよね、誰もいないし。
横にいた男の子、3歳くらいかな、彼が絡んできた。
おいおいおいおいおい、引っ張るなっつーの。
お母さんが少し困った顔。
いえいえ、いいんですよ。へへっ。
秋だからね。
目の前に妊婦さんが来たから譲った。
「どうぞ」
「どうも」
それだけのやりとりだけど、彼女の笑顔がとってもキレイだった。
18:50
地元の駅に到着。
駅も自転車も車も家もそう。
特に目印があるわけでもないし、なんでか解らないけど「自分の」ってわかる。
あー、ただいま。
今日も無事帰ってきたよ。
駅ビルというか駅隣接のデパートにちょっと足を運ぶ。
狙ってるワンピース。
あ、色が減ってる。こんちきしょう。でもほら、私こっちに隠しておいたんだ。
うーん、可愛い。やっぱり欲しい。
でもパンプスとブーツもほしいしなあ。
というか、その前にケータイ代払わなきゃ。
もう11月か、秋だね。
19:10
「ただいまぁ」
玄関を開けると、声が返ってきた。
「おかえりぃ」
私のちょっとした冒険が終わる。
秋の帰り道が魅せる魔法の世界、バイバイ。
授業が終わり、バタバタと教室を出る。
今日の4限は史学科専門の授業。
史跡やら天然記念物やらの話です。
「奈良の鹿はどうなんだろうね。あれも天然記念物でしょ」
「天然記念物のくせにスレてるよね」
「せめてフレンドリーって言ってあげてよ」
16:25
いつもの溜まり場で少し一休み。
「窓ずーっと見てたら日没の瞬間見ちゃった」
「いじめられっ子かよ」
まっすぐ駅に向かえば37分発の急行に乗れるんだけど、普通に行ったら駅はめちゃくちゃ混んでるから、ここで一休み。
帰っていく学生たちを見送ってから、私も駅へ。
駅へは歩いて5分弱。
西の空が赤い。
いつもなら友達と一緒にこの道を歩くんだけど、今日は1人。
焼き鳥屋の屋台があった。石焼き芋といい、たまプランヌとのギャップが激しいなあ。
16:40
2番線脇の石段に座り込む。私の好きなところ。
ふーーーーっ。今日もおつかれさま、私。
ホーム屋根の向こうから見える青い空に吸い込まれそうになる。
誰もいなかったら寝転んじゃうんだけどもなあ。
向かいのホームに中央林間行きが入線する。
帰宅ラッシュで混みあう電車。
そういえば、この向かい合うホームで手をふりあったことがあったっけ。
「じゃーねー」
「またあし──」
伝えきる前に、私の声は電車にかきけされたんだ。
電車が去ったあと、そこには夏の夕暮れだけがあった。
へへっ、懐かしいな。
思い出し笑いなんて、本当に年取ったんだな。
伝える前にかき消されるなんて、とことん私らしいや。
こんな私だけど、少しは好きになれそう。
電車が夕日に追いかけられる。
いつもの通学列車なのに、ソワソワする。
むずがゆい。
くすぐったい。
甘酸っぱい。
これが秋なのかしら。
多摩川を越える。
ガタン・・・ガタン・・・。
夕日が水面に反射する。
橋のかかる川は昔から好きだった。
荒川、利根川、赤堀川、多摩川、天竜川、大井川・・・
橋のそばに座って、川を往く人達を眺めていた。
二子玉川駅を出た列車はグルリと大きくカーブして地下区間へ入る。
目が慣れない。
超高速スピード。
TDLのスターツアーズを思い出した。
ぎゅいーーーーーーん。
意識はそこにあるままで、体だけがひっぱられる。
一瞬気を失いそうになった。
17:20
渋谷駅につくと、すっかり夜の街になっていた。
たまプラの駅から二子玉川までのトワイライトは、なんだか魔法にかかっていたみたいだった。
夕方の街が魅せる魔法の世界。
人を切なくさせる魔法。
世界の中心であるように映え渡っていた太陽が沈み、夜の帳が下りてくるその前に。
妖精たちが踊る。
どこか悲しいセピア色の踊り。
いつもの特別快速を逃したので乗り換えには余裕がある。
テプコプラザで旅行パンフレットを物色。
うーん、北海道行きたいねえ。
でも個人旅行だし電車旅だしいいや。
そういえばスノボの季節か。
苗場行きたいって去年話してたっけ。
苗場高っ!北志賀とか宮城蔵王とか、手ごろなところで・・・。
今年は3回くらい行きたいなあ。
その前にバイトもしなきゃなあ。
今日月曜日か、タウンワークタウンワーク・・・。
新宿版じゃないよ、あったあった渋谷版。
見つけたところで応募する勇気ないんだろうな。
でもティッシュ配り飽きてきたし、少しは身になるバイト探すかぁ・・・。
埼京線ホームはえらく遠い。
普通に歩いたら7分。
単位取得が鬼気迫った中国語の授業に遅刻しかけたときは、なんとまあ2分で乗り換えたことがある。
トボトボトボ。
今日は1人か。
1人は慣れてるのになあ。
1人のほうが楽なのになあ。
なーにが、こんなに悲しいのかなあ。
秋だからかなあ。
地元駅までの直通はないから1回乗り換えなきゃ。
赤羽、赤羽・・・
新宿、池袋。
やっぱり人多い。日本の大動脈。
アフター5の開放感か、サラリーマンもOLもちょっとスッキリ顔。
でもね、まだ月曜日よ。
赤羽であたふたと乗り換える。
おっと、喫茶店がバイト募集。
ふむふむ朝の時間帯、いいなあ。やってみようかなあ。
北区のタウンワークもらっとこっと。
うわ、寒い。
カーディガン1枚じゃきついよ。明日はジャケットきよっと。
電光掲示板に寝台特急の文字。
あの文字には非日常がこめられている。
通勤通学と帰宅に彩られた日常からの脱出口。
・・・あーっ、どっか行きたいっ。
高崎行きは案外空いている。上野から来てるからかな。
荒川に広がるは夜の景色。
あの光る点一つ一つに、人の生活が詰まっている。
煌びやかな夜景もいいけど、マンションや住宅街の灯りも立派な夜景だよ。
・・・・・・って前にツレが言ってたっけ。
席が空いたから座った。
優先席だけどいいよね、誰もいないし。
横にいた男の子、3歳くらいかな、彼が絡んできた。
おいおいおいおいおい、引っ張るなっつーの。
お母さんが少し困った顔。
いえいえ、いいんですよ。へへっ。
秋だからね。
目の前に妊婦さんが来たから譲った。
「どうぞ」
「どうも」
それだけのやりとりだけど、彼女の笑顔がとってもキレイだった。
18:50
地元の駅に到着。
駅も自転車も車も家もそう。
特に目印があるわけでもないし、なんでか解らないけど「自分の」ってわかる。
あー、ただいま。
今日も無事帰ってきたよ。
駅ビルというか駅隣接のデパートにちょっと足を運ぶ。
狙ってるワンピース。
あ、色が減ってる。こんちきしょう。でもほら、私こっちに隠しておいたんだ。
うーん、可愛い。やっぱり欲しい。
でもパンプスとブーツもほしいしなあ。
というか、その前にケータイ代払わなきゃ。
もう11月か、秋だね。
19:10
「ただいまぁ」
玄関を開けると、声が返ってきた。
「おかえりぃ」
私のちょっとした冒険が終わる。
秋の帰り道が魅せる魔法の世界、バイバイ。
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