カシュガルから東へ舵を向ける。
コルラまでは徹底的にバス移動。
いくつかのオアシス都市を経由しながら、再びシルクロード特急を目指す。
誰もが感じていた──これからが本番だ。
古代のようにキャラバンというふうにはいかないが、バスでタクラマカン砂漠・西域南道の壮大さを実感する。
だが実際に実感したのは感動や壮大さだけではないということに、私はまだ気づいてもいなかった。
道路事情は思いのほか悪い。
日本の一般道はガタガタしてはいるがもはやその比ではない。
何度も窓に頭をぶつけ、眠りを遮られた。
しかし乾いた風景を見ながら、喜太郎のシルクロードを聞いているとどうしても眠くなる。
夢は見ていないのか、それとも見ようとする寸前に起こされるのか。
どちらかは判らないが、揺れさえ除けばバス旅は列車並に心地よいものだった。
ナイフの街・イエンギサルを経由してヤルカンドへ向かう。
いいかげん乾燥にも慣れてきた。大型車が通れば砂埃で目が痛む。
ロバさえも目をつむる。
途中立ち寄ったバザールは人が溢れていた。
子供たちの表情は明るく、カメラを向けると様々な表情を見せてくれた。
思い切り笑顔の子、誰かの背中に隠れながらもはにかんでいる子。
その一つ一つが愛らしかった。
ヤルカンドの街で少年と出会った。
おしりの開いたズボンを履いた、緑色のニット帽が似合う少年。
バザールの商店が途切れたところで、私を出迎えてくれたようだ。
珍しくはにかみもしない。
ムッとした表情の彼を追って門をくぐってみるとそこは人家だった。
慌てて引き返そうとしたら、家主が現れ手招きをする。
「おじゃまします」通じるはずのない日本語を一応言ってみると、家主らしい女性はニコッと美しくはにかんだ。
カーテンをいくつかくぐると居間が広がっている。
そのソファに先ほどの少年とあわせて3人の子供たちがいた。
皆よく似ている、きっと兄弟なのだろう。
写真を撮らせてもらったり、お茶を頂いたりしているうちに、緑の少年が家を飛び出していった。
私も慌てて後を追ってみる。
門の脇から階段が繋がっている。
「こっちへおいでよ」大きな黒目がそう言っていた気がした。
土臭い螺旋階段を上ると、門の上に出た。
バザールが一望できる。
シルクロードの街並みらしい街並みに皆が感嘆の声を上げていた。
私たちは向かいの寺院へ向かった。
少年はやはり後を追うが、寺院は入場制限があるため彼は入れない。
入り口で止められ、少し悲しそうな顔をしていた。
だがこちらが手を振っても振ろうとせずにただじっと見ている。
もう一度手を振ると、恥じらいながら小さい手を振った。
初めて笑顔を見せた。
そんな乾いた街の小さな出会い。
きっと次にヤルカンドへ行くときは、彼も大人になっているのだろう──時間の流れというものを今思う。
NEXT
→〈05冬、シルクロード・タクラマカン周遊〉ホータン~チャルチャン~チャルクリク
コルラまでは徹底的にバス移動。
いくつかのオアシス都市を経由しながら、再びシルクロード特急を目指す。
誰もが感じていた──これからが本番だ。
古代のようにキャラバンというふうにはいかないが、バスでタクラマカン砂漠・西域南道の壮大さを実感する。
だが実際に実感したのは感動や壮大さだけではないということに、私はまだ気づいてもいなかった。
道路事情は思いのほか悪い。
日本の一般道はガタガタしてはいるがもはやその比ではない。
何度も窓に頭をぶつけ、眠りを遮られた。
しかし乾いた風景を見ながら、喜太郎のシルクロードを聞いているとどうしても眠くなる。
夢は見ていないのか、それとも見ようとする寸前に起こされるのか。
どちらかは判らないが、揺れさえ除けばバス旅は列車並に心地よいものだった。
ナイフの街・イエンギサルを経由してヤルカンドへ向かう。
いいかげん乾燥にも慣れてきた。大型車が通れば砂埃で目が痛む。
ロバさえも目をつむる。
途中立ち寄ったバザールは人が溢れていた。
子供たちの表情は明るく、カメラを向けると様々な表情を見せてくれた。
思い切り笑顔の子、誰かの背中に隠れながらもはにかんでいる子。
その一つ一つが愛らしかった。
ヤルカンドの街で少年と出会った。
おしりの開いたズボンを履いた、緑色のニット帽が似合う少年。
バザールの商店が途切れたところで、私を出迎えてくれたようだ。
珍しくはにかみもしない。
ムッとした表情の彼を追って門をくぐってみるとそこは人家だった。
慌てて引き返そうとしたら、家主が現れ手招きをする。
「おじゃまします」通じるはずのない日本語を一応言ってみると、家主らしい女性はニコッと美しくはにかんだ。
カーテンをいくつかくぐると居間が広がっている。
そのソファに先ほどの少年とあわせて3人の子供たちがいた。
皆よく似ている、きっと兄弟なのだろう。
写真を撮らせてもらったり、お茶を頂いたりしているうちに、緑の少年が家を飛び出していった。
私も慌てて後を追ってみる。
門の脇から階段が繋がっている。
「こっちへおいでよ」大きな黒目がそう言っていた気がした。
土臭い螺旋階段を上ると、門の上に出た。
バザールが一望できる。
シルクロードの街並みらしい街並みに皆が感嘆の声を上げていた。
私たちは向かいの寺院へ向かった。
少年はやはり後を追うが、寺院は入場制限があるため彼は入れない。
入り口で止められ、少し悲しそうな顔をしていた。
だがこちらが手を振っても振ろうとせずにただじっと見ている。
もう一度手を振ると、恥じらいながら小さい手を振った。
初めて笑顔を見せた。
そんな乾いた街の小さな出会い。
きっと次にヤルカンドへ行くときは、彼も大人になっているのだろう──時間の流れというものを今思う。
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