財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構
(Institute for Unmanned Space Experiment Free Flyer、USEF)が提供した、
巨大な太陽光パネルと地上への伝送装置を用いた
「宇宙太陽光利用システム(Space Solar Power Systems、SSPS)」の予想図
(2009年9月3日提供)。(c)AFP/USEF
宇宙空間で太陽光エネルギーを集めて、レーザーか電磁波で地上に伝送するシステムを
2030年までに実現したい――
SFのように聞こえるかもしれないが、日本の宇宙開発当局は大まじめだ。
無限のクリーンエネルギーを生み出すことのできるこの計画、
「宇宙太陽光利用システム(Space Solar Power Systems、SSPS)」の実現に向けて、
日本政府は協力企業を選出し研究者たちを集めたところだ。
数平方キロメートルにわたって太陽光パネルを敷き詰めた装置を
大気圏外の静止軌道上に乗せるこの計画は、太陽光発電の先進国、日本が
これまでに発表した中で最も大胆な計画だ。
太陽光パネルは、宇宙空間では地球上よりも少なくとも5倍強い太陽光エネルギーを
とらえることになる。宇宙航空研究開発機構(Japan Aerospace Exploration Agency、JAXA)
の滝谷忠繁(Tadashige Takiya)広報担当によれば、
集められた太陽光エネルギーは、レーザーまたは電磁波のビームで地上に伝送され、
海やダム貯水池などに設けた立ち入り禁止区域に設置された巨大パラボラアンテナで
集められるという。
研究者は、中規模の原子力発電所の発電量に相当する1ギガワットの発電能力を備え、
キロワット時毎時8円で発電する装置の開発を目標にしている。その発電コストは
国内における現在のコストの6分の1になるという。
宇宙へ装置を移送することも含めて、この挑戦は途方もなく壮大にみえるかもしれないが、
日本は1998年からこの計画を進めており、JAXAの監督のもと130人の研究者が研究を続けている。
さらに前月、経済産業省と文部科学省が協力企業に日本のハイテク大手を選出し、
計画の実現に向けてさらに一歩踏み出した。財団法人無人宇宙実験システム研究開発機構
(Institute for Unmanned Space Experiment Free Flyer、USEF)の賛助会員には、
三菱電機(Mitsubishi Electric)や日本電気(NEC)、富士通(Fujitsu)、シャープ(Sharp)
などが名を連ねている。
■2030年実現に向けて
計画ロードマップ表では、2030年の実現に向けていくつかの準備段階を設けている。
SSPS計画を指揮するJAXA研究員の1人、藤田辰人(Tatsuhito Fujita)氏によれば、
まず、数年以内に電磁波による伝送テストを行うための衛星を日本製ロケットで打ち上げ、
低軌道上に乗せる必要がある。
次の段階は2020年ごろまでをめどに、10メガワットの発電能力を持ち、
柔軟性のある素材で作られた巨大な太陽光パネルを宇宙へ打ち上げて実験した後、
250メガワット規模の試作機で実験する。
これにより、計画の財政的な実現の可能性を判断することもできるという。
最終目標は、ほかの代替エネルギーに十分に匹敵する安価な電力をつくることだという。
JAXAは地上への伝送技術は安全であるとしている。
しかし、国民はこの技術に対して、空からレーザービームが撃ち落とされ、
空中で鳥が丸焦げになり航空機が薄切りにされるイメージを抱く可能性があるとして、
国民を納得させる必要があると考えていると述べた。
(c)AFP/Karyn Poupee