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そして父になる

2018年01月14日 | 映画

昨年TV放映していたのを録画して見ました。是枝裕和監督、福山雅治主演のヒューマンドラマで、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキーが共演しています。2013年カンヌ国際映画賞にて、審査員賞を受賞しました。

そして父になる

6年間育ててきた息子が、出生時に病院で取り違えられた子どもだと知った2つの家族。血のつながりを選んで子どもを手放すか、それともこれまですごしてきた時間を重んじてこのまま育てるか。決断を迫られる中で、主人公が父親としての自分を見つめ直していく姿を描いています。

登場するのは、東京のサラリーマンの家族(福山パパ)と、地方で電気店を営む家族(リリーパパ)。対照的な2つの家族として描かれますが、環境や教育方針は違っても、どちらも子どもを愛し、大切に育てている家庭です。

映画ではリリーパパはいい父親、福山パパは悪い父親という描かれ方でしたが、自営業と会社員では自由になる時間が違うし、愛情表現は人それぞれなので、福山パパを責めるのは少々酷だと思いました。子どもと上手に遊んであげられるリリーパパを見て、福山パパとしては複雑な気持ちだったろうと思います。

小さい子どもにとって、たくさん遊んでくれる父親はたしかに魅力的ですが、この先大きくなっていくと、福山パパのような父親の方が頼りになる場合もあるでしょう。福山パパが、子どもを歯がゆく感じてしまうのも期待の表れであり、多かれ少なかれどの親にも経験があることだと思います。

たしかに福山パパは、自信過剰で傲慢なところが多々ありましたし、子どもに対して規律を重んじすぎるとも感じましたが、それに対して、特に子育てに関しては、ママもちゃんと言うべきことを言っていたので、この夫婦だったら、ちゃんと子どもを育てていける...と思いました。福山パパは十分いい父親だったのではないでしょうか。

完璧な親なんてどこにもいないし、誰だって最初はできそこない。子育ては親育てといいますが、試行錯誤しながら奮闘しているうちに、気がつくといつの間にか親になっている...というのが私の実感です。

ところで本作を見て思い出したのが、ファルハディ監督の「別離」という作品。ストーリーは全く違いますが、面接の場面からはじまり、結末を観客にゆだねるというエンディングが似ていました。どちらも見たあとで考えさせ、語り合いたくなる作品でもありました。

それから音楽の使い方がとてもよかった。全編ピアノで、グレン・グールドが演奏するバッハの「ゴールドベルク変奏曲」と、ブルグミュラーの練習曲。ブルグミュラーは子ども向けの練習曲集ですが、ストーリー性のあるメロディで子ども心に大好きでした。映画では”小さい子どもがいる家庭”というのが、音楽でうまく表現されていると感じました。

そして本作を見て、子どもというのはなんて健気な存在なんだろうと思いました。実の親にも育ての親にも一生懸命気を使っている様子が見てとれて、胸がぎゅっとしめつけられました。

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