セレンディピティ ダイアリー

映画とアートの感想、食のあれこれ、旅とおでかけ。お探しの記事は、上の検索窓か、カテゴリーの各INDEXをご利用ください。

ロング,ロングバケーション

2018年01月30日 | 映画

ヘレン・ミレン&ドナルド・サザーランド主演、人生の終わりを見据えた夫婦がキャンピングカーで旅をするヒューマンドラマです。マイケル・ザドゥリアンの小説「旅の終わりに」をイタリアのパオロ・ヴィルツィ監督が映画化。

ロング,ロングバケーション (The Leisure Seeker)

ボストン郊外ウェルズリーに住む、ジョン(ドナルド・サザーランド)とエラ(ヘレン・ミレン)の老夫婦。ある日、近くに住む息子が様子を見に来ると、家の中はもぬけの殻。キャンピングカーもありません。2人だけで旅に出たことを知った息子は大慌て。なぜならジョンは認知症で、エラは末期がんに侵されていたからです...。

老夫婦のロードムービーか...と当初はあまり気に留めていなかったのですが、ボストンからフロリダのキーウェストまで旅する話と知って、急に興味がわいてきました。アメリカのロードムービーといえばルート(R)66が定番で、原作もそうなっているようですが、この映画では東海岸を縦断するR1が舞台となっています。

R1と平行して走る高速道路のI95は、ニューヨーク、バージニア、チャールストン、オーランド、マイアミ~キーウェストなど、かつて何度もドライブ旅行したルート。懐かしい風景に出会うのを楽しみに見に行きました。

フィラデルフィアからワシントンDCを経由せずデラウェアを通るのは、南部に向かうショートカット。長い長いチェサピーク・ベイ・ブリッジを渡った辺りは、イギリス人が一番早く入植した場所で、映画に出てきたコロニアルビレッジ(ジョンが教え子に会ったところ)がいくつもあります。

今ならGoogle Mapsでしょうが、エラが全州が載っている大きなロードマップを広げてナビしていたのに当時の自分を思い出しました。お昼に入ったダイナーで、お店で働く女の子も男の子も、誰もが辛抱強くジョンの長い話につきあってくれるのは南部ならでは。サザン・ホスピタリティが今なお健在でうれしくなりました。

ちょうど大統領選挙前という設定で、トランプが熱狂的に支持されているのも共和党が強い南部らしい。ジョンもうれしそうにデモに参加して、エラに「あなたは民主党支持でしょ」と言われていたのがおかしかった。さらに南へ向かうと、大きなオークの木にスパニッシュモスがぶらさがる、南部独特の風景が続きます。

2人が目指すのは、アメリカ本土最南端のキーウェスト。ここには、かつて文学を教えていたジョンが敬愛する、ヘミングウェイが暮した家があるのです。R1もここが終点。目の前にフロリダの青い海が広がる美しい風景は、2人にとって人生のフィナーレを飾るのにふさわしい理想的なロケーションだったのでしょうね。

高齢者に焦点を当てた映画に慎重だったと語るヘレン・ミレン(公式サイト)。その気持ちはよくわかる気がします。でも本作のエラは、美しく気高く、時にお茶目で、颯爽とした、いつものヘレン・ミレンでした。強盗に襲われた時に毅然と対処する姿は、最高にかっこよかったです。

コメント (4)