セレンディピティ ダイアリー

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室町砂場と、日本橋 神茂

2018年01月17日 | グルメ

TOHO日本橋で映画を見た後に、日本橋・室町にあるお蕎麦の老舗、室町砂場さんでお昼をいただきました。

大坂屋砂場の系譜より暖簾を得て、高輪・魚籃坂に開業したのがはじまり。1969(明治2)年に日本橋の現在地に移転し、創業となりました。砂場というのは、藪、更科とならぶ蕎麦の3系列のひとつで、大坂城築城の際、資材の砂置き場に蕎麦屋を開業したことに由来します。

建物は今はビルとなっていますが、暖簾や看板、お店の前の柳の木に風情があり、老舗らしい佇まいを見せています。店内に入るとガラス越しに坪庭が見えます。植木に雪吊りが施され、冬らしい風流な眺めでした。お昼時で賑わっていましたが、待つことなく奥の座敷の席に落ち着きました。

お蕎麦屋さんの流儀?で、まずは日本酒をいただくことに。右は突出しの梅くらげ。そしてお蕎麦屋さんといえば卵焼き。こちらの卵焼きはそばつゆと砂糖、おだしを使った甘辛い味付けで、どこかお弁当の卵焼きを思い出す懐かしいお味。できたてのほかほかでした。お店の人が親切に2つのお皿に分けて持ってきてくださいました。

こちらは焼き鳥のたれ。焼き鳥屋さんではないので串に刺さないスタイルです。甘辛いたれがからんでおいしい。レバーもあってうれしいです。

かき揚げです。天つゆと大根おろしでいただきます。口の中でさくさくっとくずれるよう。ごま油の香りが食欲をそそります。中には芝海老と小柱が入っています。

おなかがほどよく落ち着いたところで、おそばをいただきました。こちらのそばは2種類で、更科粉(そばの実の芯)を使った”ざる”と、一番粉(内層の部分)を使った”もり”があります。写真の手前が”ざる”で、奥が”もり”です。どちらも繊細で、洗練されたお味でした。

室町砂場さんは天ざる・天もりの発祥といわれていますが、こちらのお店のはとてもユニークです。というのも、せいろにのった冷たいお蕎麦と、かき揚げの天ぷらが入った温かいおつゆがセットで運ばれてくるのです。今はどこのお店でも天ぷらとおつゆは別になっていますが、こちらでは伝統のやり方をそのまま残しているのでしょうね。

おいしいお酒と肴、お蕎麦を堪能し、ほろ酔い気分でお店を後にしました。

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お蕎麦をいただいた後は室町にあるはんぺんとおでん種の老舗、日本橋 神茂(かんも)さんでお買い物しました。淡雪のように軽いはんぺんは、伊豆で買った生わさびをおろして。揚げものはグリルで軽くあぶって、おろししょうがとともに。海老しゅうまいは蒸籠で蒸して。老舗のお味を家でおいしくいただきました。

日本橋の欄干にある麒麟の像。上に架かっている無粋な高速道路は取り外しの計画がありますが、あと10年以上はかかるでしょうか?

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キングスマン ゴールデン・サークル

2018年01月16日 | 映画

マシュー・ボーン監督、タロン・エガートン主演のスパイアクション「キングスマン」の続編。コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、マーク・ストロングが共演しています。

キングスマン ゴールデン・サークル (Kingsman: The Golden Circle)

イギリスのスパイ機関キングスマンの拠点が、謎の組織ゴールデン・サークルに攻撃され、エグジー(タロン・エガートン)とマーリン(マーク・ストロング)を残して壊滅してしまいます。ゴールデン・サークルは世界最大の麻薬密売組織であり、ボスのポピー(ジュリアン・ムーア)は麻薬合法化に向け、ある策略を企てていました。

エグジーとマーリンは、同盟関係にあるアメリカのスパイ機関ステイツマンに協力を求めるために、本部のあるアメリカ・ケンタッキー州へと向かいますが...。

今年の劇場鑑賞はこの作品からスタート。前作はぶっとびすぎててついていけないところがありましたが^^; 免疫がついたのか今回はとっても楽しめました。冒頭、プリンスの Let's Go Crazy にのせてはじまるカーアクションから大興奮。クレイジーな展開に、すっかりエンジンが温まりました。

前作をだいぶ忘れてたので、ところどころ回想シーンが入るのは助かりました。^^ エグジーはいつのまにかスウェーデン王女となかよくなっていたんですね。びっくりしましたが、かわいくてお似合いの2人でした。エグジーは、ハリー(コリン・ファース)から食事のマナーを教わったことを思い出してしんみりしますが...

実はハリーは生きていたのでした。エグジーとマーリンがアメリカのステイツマンの本部に行くと、そこには記憶喪失となったハリーの姿が...。ジャージ姿でぼ~っとしているハリーにショックを受けましたが、その後無事に記憶を取り戻してほっとしました。やっぱりハリーはスーツじゃなくちゃね。(^_-)-☆

英国調スーツでびしっと決めたキングスマンと、カウボーイ風ファッションのステイツマン。ガジェットも、キングスマンはステッキや時計なのに、ステイツマンは野球のバットやカウボーイの投げ縄?とアメリカをからかっていたのがおかしかった。本部がケンタッキーというのも、バーボンを揶揄しているのでしょうね。

そしてジュリアン・ムーア演じるポピーのサイコパスぶりが最高でした。人にはハンバーガーを勧めつつ、自分は極端な菜食主義者。(何が入っているか知っているものね。^^) 麻薬より砂糖を敵視しているところなど、アメリカ食文化と健康食主義者と、両方を皮肉っているところが個人的にはとってもツボでした。

ポピー率いるゴールデン・サークルの本部は50年代風ダイナー。ステンレスを使った当時流行りの宇宙船のようなインテリアで、スケートをはいたポニーテールの女の子が出てきそうですが、登場したのはなんとクリスタルのピアノを弾くエルトン・ジョン。しかもカメオ的な登場ではなく準主役級の大活躍!!!びっくりしました。

アルプスの雪山が登場するのは007シリーズみたい。過去に何作かありましたが、私が思い出したのは「007 私が愛したスパイ」(The Spy Who Loved Me)のオープニング。パラシュートがぱっと開くと、007ではユニオンジャックですが、今回は星条旗でしたね。

The Spy Who Loved Me - Skiing Opening Scene (You Tube)

ステイツマンのメンバーは、ジェフ・ブリッジス、チャニング、テイタム、ハル・ベリーなど。今回はあまり活躍の場がなくて残念でしたが、次回作にも登場するのかな?と思わせるエンディングでした。ジンジャー(ハル・ベリー)とマーリンも何気にいい雰囲気?でしたし、マーリンの復活を心待ちにしています。

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そして父になる

2018年01月14日 | 映画

昨年TV放映していたのを録画して見ました。是枝裕和監督、福山雅治主演のヒューマンドラマで、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキーが共演しています。2013年カンヌ国際映画賞にて、審査員賞を受賞しました。

そして父になる

6年間育ててきた息子が、出生時に病院で取り違えられた子どもだと知った2つの家族。血のつながりを選んで子どもを手放すか、それともこれまですごしてきた時間を重んじてこのまま育てるか。決断を迫られる中で、主人公が父親としての自分を見つめ直していく姿を描いています。

登場するのは、東京のサラリーマンの家族(福山パパ)と、地方で電気店を営む家族(リリーパパ)。対照的な2つの家族として描かれますが、環境や教育方針は違っても、どちらも子どもを愛し、大切に育てている家庭です。

映画ではリリーパパはいい父親、福山パパは悪い父親という描かれ方でしたが、自営業と会社員では自由になる時間が違うし、愛情表現は人それぞれなので、福山パパを責めるのは少々酷だと思いました。子どもと上手に遊んであげられるリリーパパを見て、福山パパとしては複雑な気持ちだったろうと思います。

小さい子どもにとって、たくさん遊んでくれる父親はたしかに魅力的ですが、この先大きくなっていくと、福山パパのような父親の方が頼りになる場合もあるでしょう。福山パパが、子どもを歯がゆく感じてしまうのも期待の表れであり、多かれ少なかれどの親にも経験があることだと思います。

たしかに福山パパは、自信過剰で傲慢なところが多々ありましたし、子どもに対して規律を重んじすぎるとも感じましたが、それに対して、特に子育てに関しては、ママもちゃんと言うべきことを言っていたので、この夫婦だったら、ちゃんと子どもを育てていける...と思いました。福山パパは十分いい父親だったのではないでしょうか。

完璧な親なんてどこにもいないし、誰だって最初はできそこない。子育ては親育てといいますが、試行錯誤しながら奮闘しているうちに、気がつくといつの間にか親になっている...というのが私の実感です。

ところで本作を見て思い出したのが、ファルハディ監督の「別離」という作品。ストーリーは全く違いますが、面接の場面からはじまり、結末を観客にゆだねるというエンディングが似ていました。どちらも見たあとで考えさせ、語り合いたくなる作品でもありました。

それから音楽の使い方がとてもよかった。全編ピアノで、グレン・グールドが演奏するバッハの「ゴールドベルク変奏曲」と、ブルグミュラーの練習曲。ブルグミュラーは子ども向けの練習曲集ですが、ストーリー性のあるメロディで子ども心に大好きでした。映画では”小さい子どもがいる家庭”というのが、音楽でうまく表現されていると感じました。

そして本作を見て、子どもというのはなんて健気な存在なんだろうと思いました。実の親にも育ての親にも一生懸命気を使っている様子が見てとれて、胸がぎゅっとしめつけられました。

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光をくれた人

2018年01月12日 | 映画

M. L. ステッドマンのベストセラー小説「海を照らす光」を「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」のデレク・シアンフランス監督が映画化。マイケル・ファスベンダー、アリシア・ヴィカンダ―、レイチェル・ワイズが共演しています。

光をくれた人 (The Light Between Oceans)

第1次世界大戦後のオーストラリア。孤島に灯台守として赴任した帰還兵のトム(マイケル・ファスベンダー)は、土地の美しい娘イザベル(アリシア・ヴィカンダ―)と結婚し、幸せな日々を送っていましたが、イザベルは不幸にも2度続けて流産してしまいます。そんな折、父親らしき男性の遺体と赤ちゃんをのせたボートが島に流れ着きます。

本土に報告しようとするトムに、自分の子として育てたいと懇願するイザベラ。その思いに負け、トムは男性を埋葬し、娘が生まれたと虚偽の報告をしたのでした。2人は赤ちゃんにルーシーと名づけて大切に育てますが、洗礼式のために本土に渡った際に、夫と娘を海で失くしたハナ(レイチェル・ワイズ)という女性を知ります...。

公開時になんとなく見逃してしまいましたが、この作品、私はとても気に入りました。詩情あふれる海辺の風景と、そこで生きる誠実な人たち。戦後を時代背景に、孤島という特殊な環境の中で、ふとした出来心が引き起こした悲劇と再生への物語が、ていねいに描かれていて引き込まれました。

舟で運ばれてきた赤ちゃんをルーシーと名づけ、我が子として大切に育てるイザベラとトム。誰も知らない孤島であれば、その幸せは長く続いたかもしれませんが、本土に渡った2人は、ハナがルーシーの実の母親であることを知ってしまいます。トムは罪の重さに耐えかねて、イザベラに黙ってハナに手紙を送り、それがもとで事実が明らかにされるのでした。

全ての罪をひとりで背負うことを決意するトム。ルーシーを失い悲しみの中に突き落とされるイザベラ。そしてようやくもどってきた実の娘から、母ではないと拒絶され苦悩するハナ。

トムとイザベラが犯した罪はたしかに重いですが、そうせざるを得なかった当時の状況も理解できたので、イザベラを責めることはあまりに酷であると感じました。それでもイザベラが真実を話し、トムが背負った荷を少しでも軽くしてくれることを、心の中で望みながら見ていました。

一方ハナは、当時敵国人として差別されていたドイツ人を愛し結婚したほどの、真に自由な心をもった聡明で勇気ある女性。彼女は試練の中でもがき苦しみながら、かつて夫から教わったことばを思い出し、トムとイザベラを赦すことを決断するのでした。

この物語がどこに向かうのか、いろいろな可能性を思い浮かべながらスクリーンを見守っていましたが、ルーシーと関わるすべての大人たちが互いを思いやり、何よりもルーシーの健やかな成長と幸せを願って行動したことで、最終的に一番いい道が導かれたように思いました。

ややおとぎ話にすぎるという向きもあるでしょうが、俳優たちのすばらしい演技によって美しい物語に命が吹き込まれ、静かな感動を味わいました。

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巻かないロールキャベツ

2018年01月10日 | 料理

最近はネットでレシピを探すことが多いですが、先日本屋さんで見て思わず衝動買いしてしまったのがこちらの本。

牛尾理恵「重ねて煮るだけ!おいしいおかず」

写真がきれいで見やすく、お鍋に材料を重ねて煮込むだけで簡単にできるのがうれしい。

先日は「巻かないロールキャベツ」を作ってみました。

家族に「今日は何?」と訊かれたので「巻かないロールキャベツ」と答えたら「賄いロールキャベツ」だと思ったそうです。「巻かないならロールキャベツじゃないね」と言われました。たしかに、正確にいえば「ミートボールとキャベツのスープ」になりますね。

アイデアだけ本からお借りして、いつものロールキャベツをアレンジして作りました。

お鍋にざく切りにしたキャベツを重ねて敷き、その上にミートボール(合いびき肉・たまねぎみじん切り・豆乳・パン粉・たまご・塩こしょう・ナツメグ)を並べます。

これにブイヨン、トマト缶半分くらい、ベーコン細切り、ベイリーフを入れて、ことこと煮込んだらできあがり。

味はロールキャベツと同じですが、キャベツを下ゆでしてお肉を包む手間がかかりません。

今はキャベツのお値段が高騰しているので、キャベツの量を調節できるのもうれしいですね。

ロールキャベツは、あの独特の形がかわいくて好きですが、たまには気分を変えて、こういうのもいいですね。

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生誕100年 ユージン・スミス写真展

2018年01月09日 | アート

東京都写真美術館で開催中の「生誕100年 ユージン・スミス写真展」(〜1月28日まで)を見に行きました。

ユージン・スミス(1918-1978)はアメリカのフォト・ジャーナリスト。太平洋戦争の従軍カメラマンとして、サイパン、レイテ、硫黄島、沖縄を訪れ、戦争の悲惨さや過酷な現実を撮影し、自らも沖縄戦で爆風を浴び、重症を負いました。

戦後は「LIFE」のカメラマンとして活躍したのち、1961年、日立の企業PR写真の撮影のために来日。晩年は、水俣病の実態を写真に収め世界に伝えることをライフワークとし、患者たちとともに戦いましたが、会社側から暴行を受け、脊椎損傷・片目失明の重傷を負いました。

本展では、初期の作品から太平洋戦争、LIFE 時代、そして水俣までの代表作品約150点が展示され、ユージン・スミス氏のジャーナリストとしての足跡をたどることができました。

水筒を手にする前線の兵士 1944

”太平洋戦争”の作品から。戦争の悲惨さを描いた作品が多い中、兵士の力強い横顔が印象的だった一枚。

楽園への歩み 1946

ユージン・スミスを代表する作品ですが、私は今まで勘違いしていたことを知りました。私は楽園=南の島と短絡的に考えて、この作品が、戦地の南の島で見た、つかのまの平和なひと時を撮影したものだと思っていたのです。

実際には、終戦後初めて発表した作品...すなわち、スミス氏が沖縄戦での負傷後、2年の療養ののちにニューヨーク郊外の自宅近くで、2人のお子さんを撮影したものだと知りました。スミス氏にとって楽園=故郷であり、終戦、快復、家族、そして平和な日常を意味する記念碑的な作品なのでしょうね。

司祭に老人の危篤状態を電話で伝えるセリアーニ、傍らで小声で話す女たち 1948

LIFE の仕事で、コロラド州で撮影した”カントリー・ドクター”というシリーズから。セリアーニという一人の医師の姿を追っています。どの作品も医師の眼差しが優しくて、ノーマン・ロックウェルの絵を思い出しました。写真はドラマティックな構図が心に残った一枚。

ウェールズの三世代の炭鉱夫 1950

これも LIFE の仕事から。イギリスやスペインで、貧しくもたくましく生きる人たちの姿を写真に収めました。LIFE のカメラマンといえば誰もが憧れる仕事ですが、題材をめぐっては何度も衝突し、必ずしもスミス氏が希望する写真が誌面に選ばれたわけではなかったようです。

赤ん坊をとり上げるモード助産婦 1951

LIFE の仕事で、サウスカロライナ州で撮影した”助産婦モード”のシリーズから。モードはスミス氏に全幅の信頼をよせ、どこに行くにも同行を許したそうです。それでふつうはなかなか撮影できない出産の現場にも立ち会う機会がありました。

巨大な鉄製埋設管の検査 1961

来日して、日立のPR写真を撮影しました。まさに日本の高度経済成長時代を肌で感じてこられたのですね。

チッソ工場から排出される廃液 1972

しかし日本の高度経済成長は、一方で公害病という副産物を生むこととなりました。水俣の公害病のことを知り、”行かなければならない”という気持ちに突き動かされたスミス氏は、日本人の血を引くアイリーン夫人とともに水俣市に家を借り、患者や家族たちに寄り添い、ともに戦いながら、写真を世界に発信しました。

沖縄戦で日本軍によって重症を負い、後遺症に苦しみながら、なぜ再び日本のために戦う生き方を選んだのか。スミス氏の作品の足跡をたどりながら、氏が常に弱い人たちの立場にたち、彼らの声を届けようと苦心してきたことに気づかされました。

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並木容子さんのお花

2018年01月07日 | 日々のこと

寒かった金曜日、一日出かけている間に体がすっかり冷えて風邪をひいてしまいました。はなとのどの痛みもありましたが、それより何よりとにかく眠い。昨日は一日こんこんと眠り続けていました。目が覚めた時に、野菜ジュースやホットレモネードで水分補給。こういうタイプの風邪もあるのですね?

今日は来客の予定があったので、それでも何とか気合いで治し、お昼はしゃぶしゃぶにお連れしました。

まだ食欲が完全にもどっていませんでしたが、体が温まってよかったです。

***

ところで先日、美容院で見た雑誌 eclat(エクラ) にすてきな花あしらいが載っていたので、ご紹介したいと思います。吉祥寺でフラワーショップを主宰している並木容子さんというフラワーアーティストで、これまでにも何度か雑誌で拝見したことがありますが、今回改めてすてきだな~と感動しました。

クリスマスのリースもひと味違う。あまり見ない色ばかりなので、最初はアートフラワーかと思いました。青バラの”ガブリエル”、グレーピンクの”ヴィンテージレース”など。砂糖菓子みたいな愛らしさを、ゴールドのリボンが引き締めています。

クリスマスらしい赤と緑の組合せですが、こちらも赤がひと味違って個性的。こういうローズ系の赤、大好きです。バラのほか、ダリア、ケイトウ、トルコキキョウなど。今はめずらしい色が増えていますね。

こちらはお正月のお花。つい松や菊を使った定番の生け方にしていましたが、今は洋花のマムやガーベラもたくさん種類が出ているので、うまく組み合わせるとひと味違ったお正月のアレンジメントになりますね。目からうろこでした。

これはすぐにトライできそう。来年の参考にしたいです。

”人のふんどしで相撲を取る”エントリーになってしまいましたが、風邪に免じてご了承くださいませ。^^;

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羊と鋼の森

2018年01月04日 | 

北海道を舞台に、ピアノの調律に魅せられた青年が、調律師として成長していく姿を温かい筆致で描いた長編小説。2016年本屋大賞第1位。

宮下奈都「羊と鋼の森」

ピアノの調律師を描いた小説と聞いて、読むのを楽しみにしていました。ちなみにタイトルの羊はピアノのハンマーに使われているフェルト、鋼はピアノの弦を指しています。森というのはある時はピアノの箱であり、もっと広くピアノが作り出す音の世界を表している時もありました。

ピアノの調律師を描いた作品といえば、6年前に見たドキュメンタリー映画「ピアノマニア」(Pianomania)を思い出します。スタインウェイの調律師があるピアニストのために一年がかりで音を作るという究極のエピソードに衝撃を受け、プロの仕事の厳しさ、音作りの奥深さに感銘を受けたのでした。

そうした話を本作に期待していたわけではないのですが、読みはじめは少々心もとなく、正直もの足りなさも感じました。それもそのはず、主人公はまだひよっこの調律師なのですから。でも読み進めるうちに、この小説は調律師というより、ひとりの青年の成長物語なのだと気がつきました。

高校2年生の時に学校の体育館のピアノの調律の場に居合わせ、深い森にいるような感銘を受けたこと。その時の調律師の音に魅せられて、調律を勉強し、同じ楽器店に就職したこと。なかなか思うように自分の目指す音が作れず、何度も落ち込む日々...。

これから社会に出ようとしている若者にエールを送り、やさしくポンと背中を押しているような作者の温かいまなざしが感じられ、主人公がようやく道しるべらしきものを見つけるラストでは、思わずほろりと涙ぐみました。

***

ストーリーには直接からみませんが、本書を読んでへ〜っと思ったことを少々。

ピアノの基準音となるラの音は、学校のピアノでは440Hzと決められていますが、戦後になるまでは435Hzだったそうです。さらにさかのぼると、モーツァルトの時代のヨーロッパでは422Hzだったということ。今は442Hzとすることも多いのだそうです。

最近はオーケストラの基準音となるオーボエの音が444Hzになっているので、それにあわせてピアノもさらに高くなるかもしれないとか。モーツァルトの時代と比べると半音近くも高くなることになります。変わらないはずの基準音が時代や国によって変化しているというのはおもしろいですね。

***

それから小説の中にリーゼンフーバーというピアノメーカーが出てきます。知らないメーカーだったので気になってググってみたら、なんと作者の宮下奈都さんがご出身の上智大学哲学科の名誉教授のお名前でした。小説の中の架空のピアノメーカーだったのですね。ひょっとしたら他にもこんな暗号が隠れていたのかも?と思ったらちょっと愉快になりました。

【関連記事】羊と鋼の森(映画) (2018-07-30)

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My Best Films & Books in 2017

2018年01月03日 | 映画

2017年に見た映画と読んだ本の中から、特に心に残った作品を書き留めておきます。

*** 映画 ***

例年、新作映画と旧作映画をそれぞれ選んで来ましたが、昨年は私にとってこれ!という旧作映画がなかったので、新作映画の中から5作品を選びました。

マンチェスター・バイ・ザ・シー (Manchester by the Sea)
 + アルビノーニのアダージョ @マンチェスター・バイ・ザ・シー

ケイシー・アフレック主演、ボストン郊外の海辺の町を舞台にしたヒューマンドラマです。思い出すたびに胸がしめつけられるような痛みを覚えつつも、不思議と心の中には温かい余韻が残り、忘れられない大切な作品となりました。

ダンケルク (Dunkirk)
 + ダンケルク @IMAX
 + ダンケルクのジャム食パン

クリストファー・ノーラン監督、第2次世界大戦のダンケルクの大撤退を描いた戦争映画。多くを語らず、一見あっさりとした戦争映画ですが、あとからひとつひとつのシーンが思い出され、もう一度見て確かめたくなる作品でした。若い名もない兵士たちこそが、このドラマの真の主人公なのだと思いました。

サーミの血 (Sameblod / Sami Blood)

北方の少数民族サーミの少女が、偏見と差別に立ち向かいながら力強く生きていく姿を描いたヒューマンドラマ。この映画でサーミのこと、彼らの苦難を知り衝撃を受けました。伝統を守ることと、広い世界で自由に生きること。グローバル社会におけるひとつの課題であるとも感じました。

美女と野獣 (Beauty and the Beast)
 + 美女と野獣 1991
 + 美女と野獣のピアノ楽譜

1991年のディズニーアニメーション”美女と野獣”を、エマ・ワトソン主演で実写映画化。アラン・メンケンの音楽もすばらしく、見た後もしばらく幸せな余韻に包まれました。1991年版と比べてほんとうの強さとは、優しさとは何か考えさせられる、現代にふさわしい作品になっていたと思います。

ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命 (The Zookeeper's Wife)

当初は上の4作品の予定でしたが、年の最後に見て急遽ベストに加えました。後述する「また、桜の国と」と同じく、第2次世界大戦時のポーランドを舞台に描かれていたこともあって、相乗効果で心を揺さぶられました。

*** 本 ***

昨年は初めての作家さんとの幸せな出会いがありました。特に心に残った2作品です。

須賀しのぶ「また、桜の国で」

第2次世界大戦時のポーランドを舞台に、ある日本人外交官の奮闘と運命を描いた長編小説。ショパンの革命のエチュードを背景に展開する、ドラマティックな物語に心を揺さぶられました。東ドイツの監視社会を描いた「革命前夜」とともに、須賀しのぶさんがお気に入りの作家さんになりました。

森絵都「みかづき」

昭和から平成に至る教育界の変遷を、学習塾を経営する家族の姿を通して描いた長編小説。ちょうど私が育ってきた時代、子育ての時代と重なることもあって、記憶をたどりながら興味深く読みましたが、登場人物たちのキャラクターの魅力や、森絵都さんの温かいまなざしも感じられ、物語としても楽しめました。

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伊豆で迎えるお正月 2018

2018年01月02日 | +静岡・愛知

あけましておめでとうございます

東京は穏やかな新年の幕開けとなりました。皆さま、いかがおすごしでしょうか。

お正月は大きなバンを借りての恒例の家族旅行で、今年は伊豆・稲取で新年を迎えました。大晦日は雲が空を覆い、途中ではらはらと初雪が舞うほどの寒さでしたが、夜の間に魔法がかけられたのか、元日の朝は日本晴れと呼ぶのにふさわしいすがすがしいお天気となりました。

稲取は伊豆半島の東海岸にあり、海に面した宿のお部屋から、海から上る初日の出を見ることができました。この日の日の出の時刻は6時52分。6時半頃に起きて外を見ると、紺碧の空の下、水平線近くがほんのりと暁色に染まっていました。太陽の気配を濃厚に感じる神秘的な体験でした。

ちょうど太陽が昇るところに雲が鎮座していて、実際に太陽の姿を見るまでに10分ほどのタイムラグがありましたが、その分ようやく見えた時の感動が大きかったです。太陽の光が海に反射してまっすぐ伸びている様子に、モネの「印象・日の出」を思い出しました。新しい年の幕開けにふさわしい心に残る風景でした。

宿から近い”稲取文化公園 雛の館”で、この地に伝わる”雛のつるし飾り”を見ることができるというので、お雑煮とお節料理の朝食をいただいた後に、ぶらぶらと歩いて行ってみました。公園の入口には、たわわに実った夏ミカン?の木。柑橘類が名産の伊豆ならではの風景です。

雛のつるし飾りは、河津町に河津桜を見に行った時に知りましたが、稲取で江戸時代から伝わる風習で、母や祖母が娘の成長を願い、雛人形のかわりに手作りのつるし雛を作ったというのがはじまりです。一時すたれていましたが、平成5年になって婦人会の手で復刻され、今に伝えられているということです。

こちらの雛の館では、さまざまなお雛様とつるし飾りを組合せて飾ってあり、その華やかさ、愛らしさに顔がほころびました。入口にあった13段の段飾りとしめ縄のように太いつるし飾りは圧巻。稲取と同様、つるし雛を飾る風習があるという山形県酒田市の”傘福”、福岡県柳川市の”さげもん”もあわせて飾ってありました。

基本となる桃の飾りのほか、ほおずき、はと、鯛などいろいろな形がありましたが、それぞれの形に意味があり、娘の幸せを願う家族の思いが込められています。和布の柄の愛らしさ、手作りの温かさに、ほっと心が和みました。1月20日~3月31日は稲取で雛のつるし飾りまつりが開催されるそうです。

公園にはもうちらほらと早咲きの桜が咲き始めていました。(河津正月桜?) 寒空の下、懸命に咲く健気な美しさに心が洗われました。

稲取の海岸です。部屋と露店風呂からは下田の爪木崎まで見渡せて、寄せては返す波の音がずっと聞こえていました。規則正しく続く音は、海の鼓動に感じられました。

12時にゆっくりチェックアウトしてから、下田、天城と通って東京までもどりました。東名の混雑を避けるために、伊豆スカイラインを通り、途中で滝知山園地に立ち寄ると、ちょうど日没直後のマジックアワーでした。駿河湾の向う、西の空がほんのりと茜色に染まり、幻想的な風景でした。

ふと右の方を見ると、ほのかに赤く染まった空を背景に、富士山の薄墨色のシルエットが静かな存在感を見せていました。途中に光が数珠つなぎになっているのは、五合目のあたりでしょうか。眺めている間に、三島の街の明かりが灯りはじめ、ちょうど夕景から夜景へと移り変わるところでした。

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