「花燃ゆ」第46回。西南戦争で官軍に捕らえられた熊本、鹿児島の罪人たちが群馬に連れられてくる。安政の大獄にからみ井伊大老によって斬首にされた吉田松陰(30歳だった)の刎頚の友、かとり素彦(大沢たかお)は群馬県令の立場にありながらも町中を歩き回り罪人たちの職を確保する。生糸や製紙に関わる仕事である。
不平士族の反乱と言われ西郷隆盛率いる西南戦争が終結した後の事である。やってきた罪人たちを前にかとりは語る。「みなさんは未来をどう描いてますか?ここで製紙業の技能を身につけたら刑を終えたあと自立できる、新しい生き方ができるんです。」と。熊本、鹿児島県人だから一筋縄でいかない男たちである。案の定反発するが、かとりの真心が通じていく。その弁たるや爽やかで誠実そのもので、「単なる官僚」とバカにしていた地元の生糸商人の大物でさえ「本気でやる気なのか?」と驚く。当時アメリカに生糸を直販しようとした大起業家の星野も「この人なら群馬を本当に変えられるかもしれない」とかとりの「群馬から日本を変えるんじゃ」を確信していく。
そしてかとりを陰で支えるのが井上真央演じる久坂美和(松陰の妹で、かとりの義理の妹)。二人は兄、吉田松陰の志を受け継ぎ、幕末から明治維新を生き抜き新しい日本人を育てようと志を貫く。そして花燃ゆ追走番組では「忘れられた日本人」をテーマにこの幕末から明治維新の頃に志をもって生きた無名の人々にスポットライトを当てたNHK大河ドラマを追走しながらも、すでにこのように生きてきた日本人は現代では「忘れられた日本人」ではないのか?との疑問を投げかける。
「忘れられた日本人」は民俗学を足と写真で極めた宮本常一の著書のタイトルだが今あらためてこの「忘れられた日本人」こそ現代まで日本を支え実際に力を尽くしてきた人々であることを再確認したいとの企画意図で迫っていく。さらに大河ドラマは1年50回のドラマを通して様々な人生と大叙事詩を描くからこそ大河ドラマであり、少々視聴率が悪いからといって揺るぐような柔なことでは制作できず、松陰や美和や素彦のように一貫して志を貫く強靭な意志があってこそできるものである。
それは46回漏れなく追ってきたからこそこちらも共感を持ってわかる志である。大河ドラマ追走2年目にして見えてきた現実であり、3年目の「真田丸」に生かしていける追走番組のビジョンである。