この地域は古代クマソのボスが住んでいたとされるところで考古学的な成果もありました。しかし地域づくりを目指す町の住民には自信が無かったのです。戦後すぐから関東関西に出稼ぎに出て行った人は多いですがクマソという先祖のことが古事記や日本書紀には蛮族と書かれヤマトタケルによって征伐されたとあるのです。町民の自信を失った町は地域活性化の事業を色々とやってみますがうまくいきません。そこで町と県から相談があったのが地域興し番組を数々手がけていたわたしでした。
当時はまだテレビ局のプロデューサーです。既に住民制作ドラマも3本作っていましたがこの免田町のドラマはアイデンティティを見直すという本格的なテーマでクマソの精神を蘇らせるというものだったのです。そこで全国の脚本家を探しまわった結果、故岩間芳樹さんに出会いました。植村直己物語、鉄道員(ぽっぽや)などで知られる岩間さんは大作家にも関わらず物静かで丁寧な応対でした、そして何よりもわたしのこの企画にぞっこん惚れですぐにクマソの地に飛んできてくれました。
町長から「クマソなんて知らん」という女子高生まで町中を二日間一緒に歩き、その町民一人一人のつぶやき?!をそのままセリフに起こして素晴らしい原作・脚本を書いてくださいました。これまでにも何回も書いていますがこの岩間さんの仕事ぶりは超一流でした。ドラマにすべて出ているのですが、何とかみなさんに見てもらえるようにしたいと今回見直して強く感じました。わたしはラジオからはじめて全国の様々なディレクターとテレビや本もいっぱい書いたが「あなたの言うようなドラマが本当に実現できるのですか?」としつこく聞かれました。「はい」と自信たっぷりに答えたわたしの返事に大作家が素直に応えてくれたのでした。
住民ディレクターを発想するようになる貴重なプロセスをこのドラマづくりの1年で経験しました。ドラマは現代に失われた神輿だったのです。町民、行政、テレビ局が一体となって担いだ町民ドラマという神輿が、失われて久しい祭りを蘇らせたのです。その中心はクマソの精神でした。
@写真はクマソ復権ドラマ「テレビドラマを作ろう!」(KKT)から 主役の女子高生ゆかり
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