百人一首の和歌の原文・現代訳・英訳を紹介します。「2」
※英訳については、1909年にWilliam N. Porterが書いた百人一首の本
『A HUNDRED VERSES FROM OLD JAPAN』を参照しています。
和歌番号002
作者:持統天皇
author of waka:THE EMPRESS JITŌ(JITŌ TENNŌ)
原文
春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山
(はるすぎて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ あまのかぐやま)
現代訳
もう春は過ぎ去り、いつのまにか夏が来てしまったようですね。香具山には、あんなにたくさんのまっ白な着物が干されているのですから。
英訳
THE spring has gone, the summer's come,
And I can just descry
The peak of Ama-no-kagu,
Where angels of the sky
Spread their white robes to dry.
The Empress Jitō reigned A.D. 690-696, during which time saké was first made and drunk in Japan; she was the daughter of the Emperor Tenchi, the writer of the previous verse, and she married the Emperor Temmu, ascending the throne herself on his death. The poem refers to a snow-capped mountain just visible on the horizon. One of the Nō dramas relates, that an angel once came to a pine forest on the coast near Okitsu, and, hanging her feather mantle on a pine tree, climbed a neighbouring mountain to view Mount Fuji; a fisherman, however, found the robe and was about to carry it off with him, when the angel reappeared and begged him to give it her, as without it she could not return to the moon where she lived. He only consented to do so, however, on condition that she would dance for him; and this she accordingly did, draped in her feathery robe on the sandy beach under the shade of the pine trees; after which she floated heavenward, and was lost to view.
解説
「万葉集」の歌人としてもよく知られている持統天皇(じとうてんのう・大化元年~大宝2年 / 645~702年)は、天智天皇の第二皇女で、叔父である大海人皇子(おおあまのおうじ・後の天武天皇)の后となられ、持統天皇の弟・大友皇子(おおとものおうじ)と大海人皇子が争う「壬申の乱」の時には、夫である大海人皇子と行軍を共になされました。
天武天皇(大海人皇子)崩御の後、皇后として四年間政治をとったあと帝位につき、 第四十一代の天皇となられました。
また、持統天皇は即位の後、都を飛鳥から大和国の藤原宮(奈良県橿原市)に移されました。
この和歌にある「白妙の衣」は、もちろん「白い衣」のことですが、初夏の山の緑と白色の衣との対比が夏の到来の喜びを表していて、すがすがしい感動を与えてくれます。
原歌になっているのは、「万葉集」にある「春過ぎて 夏来たるらし 白妙の 衣乾かしたり 天の香具山」と言われていますが、百人一首では、「来にれらし」、「ほすてふ」のように語調がやわらかく、穏やかな調べになっています。
ところで、この和歌は、香具山に積もった雪を、白い衣に見立ててつくった和歌だという説や、初夏に咲く卯の花をたとえているという説などもありますが、いずれにしても、自然の移り変わりと人々の営みを女性らしく巧みに詠まれていて、百人一首の中でもよく知られている和歌のひとつです。
★おススメ本★
本書は「平成和歌所」のウェブコンテンツ「一人十首の歌人列伝」を再編集したものです。
http://wakadokoro.com/
厳選した百人一首歌人の「おもしろエピソード」と「十首の秀歌」を分かりやすく解説した読み物は、幅広い層の和歌ファンに人気を博しました。
これを読めば「はるか昔にいた正体不明のオジサン」だった歌人たちが、グッと身近に感じられることでしょう。
そして本書を読み終わった後、あらためて百人一首を一番から眺めてみてください。
王朝の歴史絵巻が紐解かれ、つまらなかったあの百首歌たちが息吹を宿し、断然おもしろく感じられるはずです。
※読みやすい文字サイズ&文章で、約200ページがあっという間に読み終わります!
※英訳については、1909年にWilliam N. Porterが書いた百人一首の本
『A HUNDRED VERSES FROM OLD JAPAN』を参照しています。
和歌番号002
作者:持統天皇
author of waka:THE EMPRESS JITŌ(JITŌ TENNŌ)
原文
春すぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山
(はるすぎて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ あまのかぐやま)
現代訳
もう春は過ぎ去り、いつのまにか夏が来てしまったようですね。香具山には、あんなにたくさんのまっ白な着物が干されているのですから。
英訳
THE spring has gone, the summer's come,
And I can just descry
The peak of Ama-no-kagu,
Where angels of the sky
Spread their white robes to dry.
The Empress Jitō reigned A.D. 690-696, during which time saké was first made and drunk in Japan; she was the daughter of the Emperor Tenchi, the writer of the previous verse, and she married the Emperor Temmu, ascending the throne herself on his death. The poem refers to a snow-capped mountain just visible on the horizon. One of the Nō dramas relates, that an angel once came to a pine forest on the coast near Okitsu, and, hanging her feather mantle on a pine tree, climbed a neighbouring mountain to view Mount Fuji; a fisherman, however, found the robe and was about to carry it off with him, when the angel reappeared and begged him to give it her, as without it she could not return to the moon where she lived. He only consented to do so, however, on condition that she would dance for him; and this she accordingly did, draped in her feathery robe on the sandy beach under the shade of the pine trees; after which she floated heavenward, and was lost to view.
解説
「万葉集」の歌人としてもよく知られている持統天皇(じとうてんのう・大化元年~大宝2年 / 645~702年)は、天智天皇の第二皇女で、叔父である大海人皇子(おおあまのおうじ・後の天武天皇)の后となられ、持統天皇の弟・大友皇子(おおとものおうじ)と大海人皇子が争う「壬申の乱」の時には、夫である大海人皇子と行軍を共になされました。
天武天皇(大海人皇子)崩御の後、皇后として四年間政治をとったあと帝位につき、 第四十一代の天皇となられました。
また、持統天皇は即位の後、都を飛鳥から大和国の藤原宮(奈良県橿原市)に移されました。
この和歌にある「白妙の衣」は、もちろん「白い衣」のことですが、初夏の山の緑と白色の衣との対比が夏の到来の喜びを表していて、すがすがしい感動を与えてくれます。
原歌になっているのは、「万葉集」にある「春過ぎて 夏来たるらし 白妙の 衣乾かしたり 天の香具山」と言われていますが、百人一首では、「来にれらし」、「ほすてふ」のように語調がやわらかく、穏やかな調べになっています。
ところで、この和歌は、香具山に積もった雪を、白い衣に見立ててつくった和歌だという説や、初夏に咲く卯の花をたとえているという説などもありますが、いずれにしても、自然の移り変わりと人々の営みを女性らしく巧みに詠まれていて、百人一首の中でもよく知られている和歌のひとつです。
★おススメ本★
A Hundred Verses from Old Japan: Being a Translation of the Hyaku-Nin-Isshiu | |
Tuttle Pub |
図説 百人一首 (ふくろうの本/日本の文化) | |
河出書房新社 |
百人一首の歌人列伝(業平、定家に西行…人気二十歌人の面白エピソードと代表歌を知ろう! ) | |
歌林苑 |
本書は「平成和歌所」のウェブコンテンツ「一人十首の歌人列伝」を再編集したものです。
http://wakadokoro.com/
厳選した百人一首歌人の「おもしろエピソード」と「十首の秀歌」を分かりやすく解説した読み物は、幅広い層の和歌ファンに人気を博しました。
これを読めば「はるか昔にいた正体不明のオジサン」だった歌人たちが、グッと身近に感じられることでしょう。
そして本書を読み終わった後、あらためて百人一首を一番から眺めてみてください。
王朝の歴史絵巻が紐解かれ、つまらなかったあの百首歌たちが息吹を宿し、断然おもしろく感じられるはずです。
※読みやすい文字サイズ&文章で、約200ページがあっという間に読み終わります!