百人一首の和歌の原文・現代訳・英訳を紹介します。「9」
※英訳については、1909年にWilliam N. Porterが書いた百人一首の本
『A HUNDRED VERSES FROM OLD JAPAN』を参照しています。
和歌番号009
作者:小野小町
author of waka:KOMACHI ONO(ONO NO KOMACHI)
原文
花の色は 移りにけりな いたづらに 我身世にふる ながめせしまに
(はなのいろは うつりにけりな いたづらに わがみよにふる ながめせしまに)
現代訳
花の色もすっかり色あせてしまいました。降る長雨をぼんやりと眺めいるうちに。
(わたしの美しさも、その花の色のように、こんなにも褪せてしまいました)
英訳
THE blossom's tint is washed away
By heavy showers of rain;
My charms, which once I prized so much,
Are also on the wane,
Both bloomed, alas! in vain.
The writer was a famous poetess, who lived A.D. 834-880. She is remembered for her talent, her beauty, her pride, her love of luxury, her frailty, and her miserable old age. The magic of her art is said to have overcome a severe drought, from which the country suffered in the year 866, when prayers to the Gods had proved useless.
The first and last couplets may mean either 'the blossom's tint fades away under the continued downpour of rain in the world', or 'the beauty of this flower (i.e. herself) is fading away as I grow older and older in this life'; while the third line dividing the two couplets means, that the flower's tint and her own beauty are alike only vanity. This verse, with its double meaning running throughout, is an excellent example of the characteristic Japanese play upon words.
解説
小野小町(おののこまち・生没年不明) は平安時代のはじめ、文徳、清和天皇の頃の人で、女官として宮廷に仕えていたと伝えられています。
参議篁の孫であるとも、小野良貞の良人であるとも言われていますが、小野小町は和歌にもすぐれ、紀貫之が選んだ六歌仙や、藤原公任が選んだ三十六歌仙のひとりにも数えられていて、優れた歌人でもありました。
また、現代でも「小野小町」といえば美人の代名詞のように使われていますが、その美しさは着物を通して輝いていたと言われるほどで、小野小町には様々な伝説が伝えられているほか、謡曲や戯曲、歌舞伎などの題材にもなっています。
ところで、小野小町は在原業平(ありわらのなりひら)のことが好きでしたが、業平はそのことに気づきませんでした。
この和歌はそのことを嘆いてつくった和歌だと言われていますが、花を喩えに、恋心を巧みに表現しています。
また、「いたづらに」の句が上の句にかかるとすれば、「いつの間にか、花の色も変わってしまった」ととらえることができますが、下の句にかかると解釈すれば、「空しく過ごしているうちに」というようにも取ることができます。
このように、上の句と下の句を曖昧につなぐことで、歌全体にいっそうの趣が加えられています。
★おススメ本★
本書は「平成和歌所」のウェブコンテンツ「一人十首の歌人列伝」を再編集したものです。
http://wakadokoro.com/
厳選した百人一首歌人の「おもしろエピソード」と「十首の秀歌」を分かりやすく解説した読み物は、幅広い層の和歌ファンに人気を博しました。
これを読めば「はるか昔にいた正体不明のオジサン」だった歌人たちが、グッと身近に感じられることでしょう。
そして本書を読み終わった後、あらためて百人一首を一番から眺めてみてください。
王朝の歴史絵巻が紐解かれ、つまらなかったあの百首歌たちが息吹を宿し、断然おもしろく感じられるはずです。
※読みやすい文字サイズ&文章で、約200ページがあっという間に読み終わります!
※英訳については、1909年にWilliam N. Porterが書いた百人一首の本
『A HUNDRED VERSES FROM OLD JAPAN』を参照しています。
和歌番号009
作者:小野小町
author of waka:KOMACHI ONO(ONO NO KOMACHI)
原文
花の色は 移りにけりな いたづらに 我身世にふる ながめせしまに
(はなのいろは うつりにけりな いたづらに わがみよにふる ながめせしまに)
現代訳
花の色もすっかり色あせてしまいました。降る長雨をぼんやりと眺めいるうちに。
(わたしの美しさも、その花の色のように、こんなにも褪せてしまいました)
英訳
THE blossom's tint is washed away
By heavy showers of rain;
My charms, which once I prized so much,
Are also on the wane,
Both bloomed, alas! in vain.
The writer was a famous poetess, who lived A.D. 834-880. She is remembered for her talent, her beauty, her pride, her love of luxury, her frailty, and her miserable old age. The magic of her art is said to have overcome a severe drought, from which the country suffered in the year 866, when prayers to the Gods had proved useless.
The first and last couplets may mean either 'the blossom's tint fades away under the continued downpour of rain in the world', or 'the beauty of this flower (i.e. herself) is fading away as I grow older and older in this life'; while the third line dividing the two couplets means, that the flower's tint and her own beauty are alike only vanity. This verse, with its double meaning running throughout, is an excellent example of the characteristic Japanese play upon words.
解説
小野小町(おののこまち・生没年不明) は平安時代のはじめ、文徳、清和天皇の頃の人で、女官として宮廷に仕えていたと伝えられています。
参議篁の孫であるとも、小野良貞の良人であるとも言われていますが、小野小町は和歌にもすぐれ、紀貫之が選んだ六歌仙や、藤原公任が選んだ三十六歌仙のひとりにも数えられていて、優れた歌人でもありました。
また、現代でも「小野小町」といえば美人の代名詞のように使われていますが、その美しさは着物を通して輝いていたと言われるほどで、小野小町には様々な伝説が伝えられているほか、謡曲や戯曲、歌舞伎などの題材にもなっています。
ところで、小野小町は在原業平(ありわらのなりひら)のことが好きでしたが、業平はそのことに気づきませんでした。
この和歌はそのことを嘆いてつくった和歌だと言われていますが、花を喩えに、恋心を巧みに表現しています。
また、「いたづらに」の句が上の句にかかるとすれば、「いつの間にか、花の色も変わってしまった」ととらえることができますが、下の句にかかると解釈すれば、「空しく過ごしているうちに」というようにも取ることができます。
このように、上の句と下の句を曖昧につなぐことで、歌全体にいっそうの趣が加えられています。
★おススメ本★
A Hundred Verses from Old Japan: Being a Translation of the Hyaku-Nin-Isshiu | |
Tuttle Pub |
図説 百人一首 (ふくろうの本/日本の文化) | |
河出書房新社 |
百人一首の歌人列伝(業平、定家に西行…人気二十歌人の面白エピソードと代表歌を知ろう! ) | |
歌林苑 |
本書は「平成和歌所」のウェブコンテンツ「一人十首の歌人列伝」を再編集したものです。
http://wakadokoro.com/
厳選した百人一首歌人の「おもしろエピソード」と「十首の秀歌」を分かりやすく解説した読み物は、幅広い層の和歌ファンに人気を博しました。
これを読めば「はるか昔にいた正体不明のオジサン」だった歌人たちが、グッと身近に感じられることでしょう。
そして本書を読み終わった後、あらためて百人一首を一番から眺めてみてください。
王朝の歴史絵巻が紐解かれ、つまらなかったあの百首歌たちが息吹を宿し、断然おもしろく感じられるはずです。
※読みやすい文字サイズ&文章で、約200ページがあっという間に読み終わります!