百人一首の和歌の原文・現代訳・英訳を紹介します。「7」
※英訳については、1909年にWilliam N. Porterが書いた百人一首の本
『A HUNDRED VERSES FROM OLD JAPAN』を参照しています。
和歌番号007
作者:阿倍仲麻呂
author of waka:NAKAMARO ABE(ABE NO NAKAMARO)
原文
天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
(あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも)
現代訳
大空を振り仰いで眺めると、美しい月が出ているが、あの月はきっと故郷である春日の三笠の山に出た月と同じ月だろう。(ああ、本当に恋しいことだなあ)
英訳
WHILE gazing up into the sky,
My thoughts have wandered far;
Methinks I see the rising moon
Above Mount Mikasa
At far-off Kasuga.
The poet, when sixteen years of age, was sent with two others to China, to discover the secret of the Chinese calendar, and on the night before sailing for home his friends gave him a farewell banquet. It was a beautiful moonlight night, and after dinner he composed this verse. Another account, however, says that the Emperor of China, becoming suspicious, caused him to be invited to a dinner at the top of a high pagoda, and then had the stairs removed, in order that he might be left to die of hunger. Nakamaro is said to have bitten his hand and written this verse with his blood, after which he appears to have escaped and fled to Annam. Kasuga, pronounced Kasunga, is a famous temple at the foot of Mount Mikasa, near Nara, the poet's home; the verse was written in the year 726, and the author died in 780.
解説
阿部仲麻呂(あべのなかまろ/大宝元年~宝亀元年 / 701~770年)は大和の国に生まれ、若くして優れた学才を現し、仲麻呂十六才の時に遣唐使・多治比県守に従って、留学生として唐に渡りました。
玄宗皇帝に仕え、李白や王維らの著名人と交際し、文名が高かったと伝えられています。
三十年近くの滞在の後、仲麻呂が五十一歳の時、宗皇帝に帰国を願い出て帰路に着きましたが、その途中で嵐にあい安南に辿り着きました。
阿部仲麻呂は後に再び長安に帰り、唐の地で亡くなりました。
この和歌もよく知られているもののひとつですが、仲麻呂の帰国を祝って、明州(現・ニンポー)の町で宴会が開かれた時に詠まれたものだと伝えられています。
広い夜空の情景に浮かんだ月を介して、阿部仲麻呂の故郷への思いがとてもよく表現されていますが、この歌は、藤原公任(きんとう)の「和漢朗詠集」などにも収録されていて、自然の情景と人の情念が見事に詠まれています。
★おススメ本★
本書は「平成和歌所」のウェブコンテンツ「一人十首の歌人列伝」を再編集したものです。
http://wakadokoro.com/
厳選した百人一首歌人の「おもしろエピソード」と「十首の秀歌」を分かりやすく解説した読み物は、幅広い層の和歌ファンに人気を博しました。
これを読めば「はるか昔にいた正体不明のオジサン」だった歌人たちが、グッと身近に感じられることでしょう。
そして本書を読み終わった後、あらためて百人一首を一番から眺めてみてください。
王朝の歴史絵巻が紐解かれ、つまらなかったあの百首歌たちが息吹を宿し、断然おもしろく感じられるはずです。
※読みやすい文字サイズ&文章で、約200ページがあっという間に読み終わります!
※英訳については、1909年にWilliam N. Porterが書いた百人一首の本
『A HUNDRED VERSES FROM OLD JAPAN』を参照しています。
和歌番号007
作者:阿倍仲麻呂
author of waka:NAKAMARO ABE(ABE NO NAKAMARO)
原文
天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
(あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも)
現代訳
大空を振り仰いで眺めると、美しい月が出ているが、あの月はきっと故郷である春日の三笠の山に出た月と同じ月だろう。(ああ、本当に恋しいことだなあ)
英訳
WHILE gazing up into the sky,
My thoughts have wandered far;
Methinks I see the rising moon
Above Mount Mikasa
At far-off Kasuga.
The poet, when sixteen years of age, was sent with two others to China, to discover the secret of the Chinese calendar, and on the night before sailing for home his friends gave him a farewell banquet. It was a beautiful moonlight night, and after dinner he composed this verse. Another account, however, says that the Emperor of China, becoming suspicious, caused him to be invited to a dinner at the top of a high pagoda, and then had the stairs removed, in order that he might be left to die of hunger. Nakamaro is said to have bitten his hand and written this verse with his blood, after which he appears to have escaped and fled to Annam. Kasuga, pronounced Kasunga, is a famous temple at the foot of Mount Mikasa, near Nara, the poet's home; the verse was written in the year 726, and the author died in 780.
解説
阿部仲麻呂(あべのなかまろ/大宝元年~宝亀元年 / 701~770年)は大和の国に生まれ、若くして優れた学才を現し、仲麻呂十六才の時に遣唐使・多治比県守に従って、留学生として唐に渡りました。
玄宗皇帝に仕え、李白や王維らの著名人と交際し、文名が高かったと伝えられています。
三十年近くの滞在の後、仲麻呂が五十一歳の時、宗皇帝に帰国を願い出て帰路に着きましたが、その途中で嵐にあい安南に辿り着きました。
阿部仲麻呂は後に再び長安に帰り、唐の地で亡くなりました。
この和歌もよく知られているもののひとつですが、仲麻呂の帰国を祝って、明州(現・ニンポー)の町で宴会が開かれた時に詠まれたものだと伝えられています。
広い夜空の情景に浮かんだ月を介して、阿部仲麻呂の故郷への思いがとてもよく表現されていますが、この歌は、藤原公任(きんとう)の「和漢朗詠集」などにも収録されていて、自然の情景と人の情念が見事に詠まれています。
★おススメ本★
A Hundred Verses from Old Japan: Being a Translation of the Hyaku-Nin-Isshiu | |
Tuttle Pub |
図説 百人一首 (ふくろうの本/日本の文化) | |
河出書房新社 |
百人一首の歌人列伝(業平、定家に西行…人気二十歌人の面白エピソードと代表歌を知ろう! ) | |
歌林苑 |
本書は「平成和歌所」のウェブコンテンツ「一人十首の歌人列伝」を再編集したものです。
http://wakadokoro.com/
厳選した百人一首歌人の「おもしろエピソード」と「十首の秀歌」を分かりやすく解説した読み物は、幅広い層の和歌ファンに人気を博しました。
これを読めば「はるか昔にいた正体不明のオジサン」だった歌人たちが、グッと身近に感じられることでしょう。
そして本書を読み終わった後、あらためて百人一首を一番から眺めてみてください。
王朝の歴史絵巻が紐解かれ、つまらなかったあの百首歌たちが息吹を宿し、断然おもしろく感じられるはずです。
※読みやすい文字サイズ&文章で、約200ページがあっという間に読み終わります!