「誕生日に何が欲しい?」
僕にとって、君の初めてのバースデイ
おしゃれをしないわけではないが、装飾品をいっさい身につけない夕子
僕は自分で選ぶのを観念して、夕子に欲しい物を聞くことにした
「何もいらないわ」
「そういうわけにいかないよ、何か言ってよ」
「じゃあ、こころにつける、飾りがいいわ、形のない、美しい物が好きだから」
難問だ
しばらく考えて、僕は言った
「今度の土曜日が君の誕生日だ、それまでに考えさせて」
「いいわ、期待してるね」
夕子と別れて、家に帰った
Macを開き、週間天気予報を調べた
土曜日は全国的に、雨だった
宙を仰いだ
そして、閃いた
土曜、午後3時
僕は夕子のマンション前に車をつけ、携帯で夕子を呼び出した
夕子はすぐに降りてきた
「雨ね、最悪の誕生日になりそう」
「どうかな」
僕は車を走らせた
2時間ほどで目的地に着いた
「ここは?」
「八尾空港、さあ、行こう」
受付で二人の名前を書き、書類にサインした
ヘルメットを手に、まだ若いパイロットがセスナまで案内してくれた
小さな航空機は静かに離陸した
窓の外は雨
夕子は相変わらず不信そうだ
すぐに、窓の外が真っ白になった
雲に入ったのだ
そして5分が経過した
夕子は窓に釘付けになっていた
「綺麗・・雲の上は夕焼けなのね」
「ハッピーバースデイ、君の名前にぴったりだろう
この金色の空を、君のこころ一杯に飾ってほしい」
夕子の目が、かすかに潤んだ
「すごく豪華な贈り物だわ、はい、一生飾っておきます」
空は一面のゴールドだった
そして、僕のこころも金色に染まった