愛詩tel by shig

プロカメラマン、詩人、小説家
shig による
写真、詩、小説、エッセイ、料理、政治、経済etc..

さくら

2012年10月02日 10時16分56秒 | 

いつだっけ
僕と君は歩いていた
四月始め
公園の桜は満開だった
別れ話をするために
君が選んだのは、思いでの桜の木の下だった
「あのね・・」
君の次のセリフが怖かった
そのとき突風が吹き
ざわと二人の間を駆け抜けていった
そして桜吹雪が二人を包んだ
花びらに包まれた君はとても綺麗だった
「いいよ、何も言わなくても」
僕たちは小川に向かった
無数の花びらが川面を流れていた
君は小川に手を付けた
花びらは君の手を綺麗に避けていった
その流れは二つに分かれた
その時君の目に涙が光るのを、僕は見過ごさなかった

咲いた桜が潔く散るように
人は出会い、別れてゆく
でも一年したら必ず桜が咲くように
人ももう一度出会えるかも知れない

君にまた会えることを信じて
今年もまたこの公園に来てしまった
未練がましいと知りながら
そのとき突風が吹き
桜吹雪が僕を包んだ
そしてその花びらの向こうには
君がいた
「おまたせ」
「3年だよ、待たせすぎだ」
「ごめんなさい、でも少し大人になったわ」
僕たちは小川に行った
花びらが流れていた
そして君の頬にも涙が流れていた

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