愛詩tel by shig

プロカメラマン、詩人、小説家
shig による
写真、詩、小説、エッセイ、料理、政治、経済etc..

ジントニック 

2018年04月05日 09時50分31秒 | 

薄暗い照明の中、洋酒の瓶にだけスポットが当たっている

 

彼の好きなバー

 

無口なバーテン 静かなジャズ

 

彼が入っていくと バーテンは 何も言わずに 頭だけ下げ

 

ロンググラスに 酒を注ぐ

 

最後にライムをグラスの縁に置く

 

初めてここに連れてきてもらったとき 彼に聞いた

 

それ 何

 

ジントニック 

 

彼は グラスにライムを搾り 軽くかき混ぜた

 

私にはモスコミュール 口当たりのいいカクテルを 注文してくれた

  

あれからどれだけ過ぎたのだろう

 

いつの間にか お互いに隙間ができはじめた

  

そして おきまりの別れ

 

別れて半年くらいたったとき 私はそのバーに独りで行ってみた

 

何も変わらなかった

 

無口なバーテン 静かなジャズ

 

思い切って注文してみた

 

ジントニック

 

バーテンは黙って作り始めた

 

そして 私の前に置いた

 

彼がやったようにグラスにライムを搾り

 

おそるおそる口を付けた

 

辛(から)かった

 

そして 涙が止めどなく溢れてきた

 


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