private noble

寝る前にちょっと読みたくなるお話し

a day in the life 8

2017-02-18 08:43:56 | 連続小説

 病院の扉を押して外に出ると、運よくタクシーが停車していた。中から女性が降りて来たので空車になるはずだ。マサルは小走りにタクシーに近づき手を挙げると右手に痛みを感じ、なんだろうと右手の甲を見たら赤く腫れている。その理由がわからず、記憶をさかのぼろうとして思いとどまった。それよりもいまはタクシーをつかまえる方が先だ。運転手はこちらに気づいているのか、その表情には変化がなく不安な気持ちになる。
 自宅に一度戻ってから自分のクルマで実家に行くのは億劫だった。手持ちの荷物も多く、昨夜からのゴタゴタ続きで睡眠不足だ。それほど遠い距離を走るわけではないにしろ、この状況ではクルマを運転する気にもなれない。タクシー代の出費は財布に優しくはなくとも、安心、安全には替えられないし、いっそ代金は母親に肩代わりしてもらえばいい。なににしろ、これからいろいろと物入りになるので、これを機に親の金の管理を引き継いだ方がいいだろうという思いもあった。
 タクシーを降りた女性は、その沈んだ表情を隠そうともせず、うつろに歩いて行く。病院に元気満々でくる人間がそれほど多くはないとはいえ、どんな心配事を抱えているのかと気になった。そんな表情で病院に駆けつけるわりには服装が軽すぎ、これから女友人か、彼氏と、話題のお店で待ち合わせといったほうがしっくりくる。それでも出先から呼び出されることだってあるかと、ひとり納得しつつ、マサルもひとのことを心配している状況ではない。
 マサルを受け入れるつもりかだったのかわからないまま、ドアが開いた状態のタクシーに乗り込み声をかけようとすると、運転手は愛想なくバックミラー越しに目先を向けて、どちらまでと行き先を訊いてきた。マサルは遠慮しながら、少し遠いんですけど… と言ってみても、それに対する反応は一切なく、相変わらずミラー越しの目だけがそこにある。客の方である自分がなぜこれほど卑屈になっているのかと思いながらも、至急母を迎えに行きたいので、八事の霊園の方まで飛ばしてもらえますか… と向かう先を告げたとたんに運転手は飛ばすんですねと嬉しそうに応え、勢いよくスロープを飛び出して行った。
 マサルが記憶しているのはそこまでだった。正確に言えば、走り始めて、あまりのスピードに目がまわりはじめるところの映像はあるが、それが現実であったのか正確に伝えることができない。気がつけば、運転手に膝を揺り動かされて、お客さんつきましたぜ。と声をかけられていた。
 そこは八事霊園の前だった。放心状態のままあたりを見回す。
「あのー、八事ですね… 」
「そうだよ、八事だよ。八事霊園でいいんだろ?」
 なにか不都合でもあるのかと言うように、運転手はぶっきらぼうに言い放った。
 たしかに八事霊園の方とは言ったが霊園の前で降ろされてもどうにもならないので、そこから実家のある方向までお願いした。こんどはゆっくりと行ってくださいと付け加えるのを忘れずに。
 運転手の返事は先程とはかけ離れ、つまらなそうな返答に聞こえた。ウインカーをあて、滑り出すように発信すると、今度は自宅のソファにでも座ってくつろいでいるような乗り心地だ。ようやく落ち着きを取り戻して、時計を見ると、あれからまだ15分しか経っていない。もう一度あたりを見回し、時計を二度見していた。
「あのー、15分で着いたんですね… 」
「遅かったか?」
「 …いやあ、早すぎですね。何キロ出したんですか?」
「そんなには出してない。街中だからな」
 運転手はそう言って言葉を濁した。
「はあ… 」
 自分のクルマで自宅から実家に帰るときは、どんなに急いでも1時間をどうにか切れる程度だ。それじゃあ通常の3倍。赤い彗星か!?と、突っ込みを入れたくなる。興味本位に掲示してあるネームプレートを覗き込むと、コバヤシと名字は平凡な名前が書き込まれていた。名前は??? なんと読むのかわからない、お経にでも書かれているような文字がみっつ並んでいた。
 実家の近所にあるコンビニの看板が目についたので、そこの駐車場で降りると伝えた。マサルはのどが乾ききっており、なにか飲みたかった。運転手はわかったように二度、三度うなずいて、駐車場にクルマを止めてくれた。メーターを見ると通常の金額だったので安心した。これで3倍の金額を請求されても文句は言えないと思っていても、事前になにも言われないまま、なんの協議もなくやっておいて、はいそうですかとは出せない。
 運転手は何でもないことのように表示通りの金額を読み上げる。マサルはせめてこれぐらいはしないといけないかと思い、切り上げた枚数の千円札を渡し、お釣りは結構ですから、早く到着できて助かりました。とお礼を言ってみた。運転手は、少し口角をあげて(あげてなかったのかもしれないが、マサルにはそのように見えた)そりゃどうも、とだけ言って、お金を受け取った。
 コンビニの駐車場に立ち降り、来た道を引き返していくタクシーを見送りながら、必ず半分の時間で目的地に到着できるという触れ込みで売り出せば、倍の金額を払っても乗りたい人はいるのではないかと、あたまをよぎり、心臓の悪い母親と一緒でなければ、帰りも乗っていきたいところだと、無茶な考えを一笑していた。
 マサルはコンビニに入って、ドリンクコーナーに向かう。幾種類ものソフトドリンクが並んでおり、新製品とか、お薦めの品が目に付きながらも、やはり普段から愛飲している商品にしようかと、とめどなく思案していると、目端にいぶかしげな行動をとる人の影が映った。
どうしても小ぎれいとは言い難い年配者が、まわりを気にしつつ、棚に並んでいる惣菜パンを無造作に手に取り品定めをしている。それを不穏と決めつけるのは良くないとわかっていても、胸騒ぎが止まらず、いつのまにか目が釘づけになっていた。あっと思った瞬間、心にも釘が刺さった。
 その男はためらうことなく、手にした総菜パンを、左右のポケットにそれぞれねじ込んだ。そしてまわりを気にして伺い出すと、最初に目があったのはマサルだった。おどおどとしたその目は、万引きになれているとは思えなかった。その男よりも驚いたのはマサルの方で、すぐに視線をそらし、あいかわらず商品を選んでいるフリを続け、その男のしたことはあずかり知らぬそぶりを続けた。商品を選ぶ以上に目が泳ぎまくる。気持はそれどころではなく、あたまの中に多くの思惑が交差していた。
 やめるように声をかけるべきか、店員にこのことを伝えるべきか、いや、変に関わってあとからトラブルに巻き込まれるかも知れない。あとからだとは限らない。ナイフとかの凶器を所持していて、バラされた腹いせに反攻してくることだって考えられる。
 そうであれば、自分が可愛いだけだ。気づかないフリをすればいい。大手のコンビニチェーンだ。防犯ミラーもあるし、防犯カメラだってある。一日の出納を確認すれば金額が合わないのがわかるはずだ。いまコトを起こさなくても、後からだっていくらでもやりようがある。逆にそれができなければ、これまでも幾つもの万引きを見逃していることになり、そんな店などどうせ長くは続かないと、責任転嫁の言い訳は増幅していった。
 自分が動かないのは自分の責任ではなく、このシステムのせいであり、人々に不満や不平があっても動かないのは個々の責任でなく、大きな権力の責任であると言えば逃げを打てれる。
 どれだけ頑張っても何かが足りないと感じていた。それはどうしたって止められずに、いまでもそうなのかも知れないけど、自分のことを認めるのは簡単ではない。他人から言われてそう思えるのもなんだか素直になれないし、そこにすがりついてしまう自分を止められない。正義の味方がヒーローだった時代はもう終わっており、最後に勝ち残った者がヒーローになる時代なのだ。

「アナタは、いま海の中を潜っている」
「なぜ? オレって海、そんなに好きじゃないけど」
 マサルは初っ端から問いかけの内容が腑に落ちずに、すぐに言葉を挟んだ。
「仮定のハナシです。それをイメージして答えを出してもらえればいいんですよ。これが、このテストの要点なのですから」
 医者は、さっき説明したばかりだろうと言いたげに冷たい微笑み返す。その態度にマサルもついつい反抗的になってしまう。
 初めておこなう心理テストで、あうんの呼吸で医師の期待に沿える患者がいったいどれほどいるのか。権威者の立場で物事が推し進められていくことはいつだって、どこにだって蔓延しており、さげすまれる弱者になるのか、物言う被験者になるのかで、診断内容もかわってくるはずなのにと、すでにこの診断の真偽に疑問をだいていた。
「ああ、そういうものなんだ。そう言われても、実際に経験のないことを答えるのは簡単じゃないだろ。ああ、それもテストの内か?」
「まっ、そういうことになりますかね」
「それがそっちのルールってわけか… 」
 マサルはいまさらという感じで語尾を濁した。医者はその言葉を聞いても、つまらなそうなそぶりを続けている。
 誰だって、自分のこころの中は読まれないと思っているはずだ。だが、こころの中は読めなくとも表情を隠すことはできない。眉や目やまぶたの動き、鼻孔、口元、表情筋。手も足も、そのすべてが言葉の真偽を物語ってくれる。知っている者と、知らない者の差は、ここでも大きな格差を生みだしている。おおよそ専門的な分野で働く人間は、相対する凡人を良いように扱える。学校の先生からはじまって、社会と関わりを持っている限り、幾人もの人から教えを請うことになる。その最たる人である医師と名がつく者たちから指摘されれば、一般人は否定できないだろう。
「ルールだとか、例えば約束事などなにもないのです。すべては虚実だと思えばいいのですよ。そうすればずいぶんと楽になれるはずです」
 精神鑑定士と名のつく医者はそう言った。さして深い意味も持たなそうに。恐れなどというもは自分で作り出しているだけなのだと言い出しかねなかった。

 マサルは、純水とラベルに書かれたペットボトルを取り出してレジに向かった。多くの荷物を抱えて移動するのがうざったい。ポケットを膨らました男はやはりレジには立ち寄らず、からだを丸めてすでに外に出ていく姿を目端で追っていた。止めておいた自転車に乗り、振り返ることもせずに立ち去っていく姿は、他の買い物客にまみれ、なんの違和感もなく溶け込んでいた。そんな男の行動からは、いまはもうなにひとつ疑わしさを見出すことができない。
 マサルは自分が見たものが本当に起こったことなのかと、にわかに信じられなくなっていた。たしかにあの男は、自分の目の前でパンを万引きしたはずだ。その時のおどおどとした灰色の目を忘れることはできないのに、それが見間違いだというのなら、自分の記憶を完全否定となってしまい、簡単に受け入れることはできない。
 周囲の人たちが何の動揺もせず、買い物を進めている姿を見ると、自分だけが疎外されたような気になってくる。もしかしてマサルと同様に、妙なことに関わり合いたくないゆえ自然にふるまっているとも考えられるが、変にそわそわとあたりを気にしているのはどうみても自分だけで、なんとも曇った不安に身体が覆われていく。
 自分の目に映ったものだけが、現実でなかったのかもしれないと思ったことはこれまでにも身に覚えがある。たしかに実体験しているはずなのに、そんなことはなかったと、まわりからは一笑に伏される。時に親であったり、友人であったり、仕事の仲間であったり。一斉に周囲からそんな事実はなかったと突きつけられれば、いくら自分が主張しても、そんなものは妄想のひとつとして処分されるだけだ。そうやって自分の歴史の中で欠損した部分がいくつもの巣のようになっていった。
 防犯カメラを見上げても、もうそこに自分が信じている事実が映っているとは思えなくなっていた。自分などが見られるはずはないが、実際に目にして本当になにも起きていなければ、その衝撃は計り知れない。それどころか、いつしかそこには自分が万引きしている映像が記憶されているのではないかと思い始めていた。
 すべては虚実だと思えば楽になる。あの医師が言った言葉は正しいのかもしれない。虚実だと言っているのに正しいという言い方も変なはなしだと、知らないうちに自分を笑っていたらしく、会計をしている店員は怪訝な顔をこちらに向けた。あわてて真顔になり、とりなすようにお礼を言って釣銭を手にした。
 なんだか以前にもこんなことがあったような気がする。いつのことだったのか思い出そうとすると、なにかあたまにモヤがかかったようになり、からだがふらつく。やはりずいぶんと疲れているのだと、タクシーにのって正解だったと今さらながらに胸をなでおろす。
 駐車場に出るとそんな思いもあり、乗って来たタクシーのことを思い出していた。通常の3倍の早さで到着したのもなにかの間違いなのかも知れない。いまどきそんなスピードで走れば、ありとあらゆるカメラに捕らえられ、距離と時間からスピードを割り出せば動かぬ証拠となってしまう。タクシーとして商売しているなら、それがどれぐらいハイリスクであるかなどわかっているはずだ。そう思いはじめると、余分にお金を支払ったことがやけに口惜しくなってきた。覗き込んだ時計は止まっているわけでも、時間が遅れているわけでもなく、どうやら止まっているのは自分の意識だけだとあたまを振った。

「あなたには兄弟がいます。兄は日頃からあなたに対して横柄な態度を取っています」
「オーヘー? ああ、横柄ね。オレには兄弟はいないけど… いると仮定しての話しだったな」
 言葉を遮られるたびに医師の目端が震える。なるほど、心のゆらぎは顔にあらわれるのだと変なところで納得してしまう。
「欲しいと思ったことはありますか?」
「いや、ないね。面倒だ」
 なるほどと医師はあごを引き、質問を続けた。
「その兄と言い合いになると、あなたは最後にかならず暴力で服従させられます」
「ほらな、やっぱり面倒だ」
 今度は、マサルの言葉には反応せず、神経質に手にしたペンでこめかみに抑える。
「あなたは、それがこの先いつまでも続くと思い、なんとか状況を変えたいと考えます。どのような手段をとりますか?」
「そうだな、アニキを殺すな。 …とか言えば先生に喜んでもらえるんだろ?」
「わたしを喜ばすための回答をする必要はありません。正直にあなたが最初に思いついたことを言ってもらえればいいのです」
「正直に言っているかどうかなんて先生にはもうわかってるんだろ。そのための検査だ。だったら、答えがどうかなんて関係ないんじゃないのか。オレが言った言葉に対して、それはウソ。それはホントと選り分けてくだけだ」
「なるほど、それもそうですね。つまりあなたは、自分の障害になるものは排除する… たとえそれが、血を分けた兄弟であっても。もしくは… 」
「もしくは… それは誘導尋問かな? そんなものは証拠にならないはずだ。なんだよ検査なんていって、廻りくどいかと思ったけど結構直接的じゃないか。もうすこし楽しめると思ったのにな」
 医師の顔が大きくひきつっていた。今度はイラついたせいではなく、すぐ目の前にある恐怖におののいているのだ。

 実家に向かって歩き出したマサルに、背広姿のいかついふたり組の男が寄りついてきた。それぞれがマサルの両方の腕を取り、駐車場の脇へと引っ張っていく。なにが起きたのか理解できないマサルは、ふたりの顔を交互に見て、「なんだ、なんだよ」と、しどろもどろで繰り返す。手に持った多くの荷物が不安定に揺れ、そのたびにバランスをくずす。
「カトウマサルだな。幼児監禁殺害の容疑で署まで同行してもらう」
 ひとりに壁に押しつけられ、もうひとりは、あたりを伺いながら携帯で連絡を取っている。いったいどうなっているのかわからず、反論する言葉も出ない。
「まったく、ノコノコと実家に戻ってくるとはな。大胆というか、無計画というか。まっコッチはその分ラクになった」
 押しつけられた男がそう言うと、連絡を終えたもうひとりが、余計なことを言うなと小声で制した。腕を後ろにまわされて、前を向かされると、前方からふたりの警官が走って来る。
「ちょっと、まってくれ。オレじゃないよ。万引きしたのはオレじゃなくて。汚い身なりの年寄りだって… 」
 マサルが必死に訴える。ふたりの私服刑事は顔を見合せて、おたがいに苦々しい顔つきになる。寄って来た警官に引き渡され、マサルは引きずられるように歩く。手にしていた荷物が散乱する。中からは大きなキノコや、おんなモノのストキング、電球が2個と、食べかけのハンバーガーに、革靴のメンテナンスキット、そして紫色のブラジャー。
周囲の人々もこの騒ぎに気づいたらしく、コンビニの中からも人が出てきて、なにごとかと集まってくる。
 多くのひとの目に自分がさらされているのがわかる。みんなが自分を見ているのだ。
「オレはなにもしていない、水を買っただけじゃないか。防犯カメラを確認してくれ。そうだ、それを見ればアイツがパンを万引きしている映像が映っているはずだ」
 引っ張っていく警官は不思議そうに顔を合わせる。うしろについた口の軽い方の刑事がうさんくさそうに、「いいんだ、言わせとけ。ソイツは精神分裂症なんだとよ。ふたつの人格があるとかなんとか。オレは信じちゃいないけどな。そう言っとけば裁判とかでいろいろと有利になるって弁護士に吹き込まれたんだろ。近頃は令状とるのも手順を踏んでいかんとあとで面倒になるから困ったもんだ」とぼやく。警官はそんなもんですかと、わかったような相づちを打っている。
「そうかわかった。スピード違反のことだろ? アレもオレじゃない。タクシーの運転手が勝手にやったことだ。カメラに映ってるだろ。調べればわかることじゃないか」
 パトカーの後部座席に押し込められ、両脇を刑事がかためた。
「見たよ」
 
口が軽いほうの刑事は、しかめっ面でそう吐きだした。
「そうだ、カメラにバッチリ映ってたんだよ」
 マサルは、うれしそうにもうひとりの刑事に、それみたことかと顔を向けた。
「オマエが、小さい子供をスポーツバッグに押し込んでいる姿がな! ひでえことしやがって!」
「 …!?」
「そうそう、精神鑑定医からも、傷害罪で訴えられているぞ。こっちもパソコンに録画されている。診断中はモニターすると約款に書いてあってな、オマエの署名もしてある。もっとも患者の個人情報は診断以外には使用しませんと書かれてるがな… 心配するな、取り調べ室にもモニターがついてるから、昔のように闇の中で罪状に署名させることはない。よかったな、カメラが見守ってくれてよ」
 マサルは刑事の軽口に笑う気にもなれずシートに身を沈めた。ここで来たのかと、自分を呪った。まわりのヤツらが悪いことしても誰も信じてくれない。自分だけが何もしていないのに、でっちあげられた事実に翻弄されていく。この世界のルールはつねに誰かに監視されている。この先にルールも約束事もない。あの医師はそう言った。マサルはこんな平凡な人間であってもお目こぼしはないのだと毒づいた。
 小さい頃から言われ続けていた。それを忠実に守って生きてきたのに、なにも報われない人生だったと今さらながらに悔恨していた。宿題をしても、風呂に入っても、寝る前にキチンと歯を磨いても、良い子にはなれないのだ。
 これがマサルの人生の一日。