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那谷寺・小松 ~苔庭+水墨画のような奇岩が美しい

2017年12月06日 | お寺・神社・特別公開

修験者の信念が宿っているような「遊仙境」

 

 

那谷寺(なたでら)は、金沢の少し南、小松の粟津温泉の近くにある古刹である。加賀藩2代藩主・前田利常が再興した書院と庭園が江戸初期の落ち着いた佇まいを今に伝える。前田の殿様が愛した空間を体験できる。ちょっとした渓谷の奥にある本殿に至る参道は、木々が奏でる四季の彩と見応えのある岩肌との調和が美しい。修験道の神秘的な雰囲気も感じさせる境内で、個性的なパワースポットだ。

 

那谷寺は白山信仰との関連が深い。白山信仰は、泰澄(たいちょう)法師が奈良時代の717(養老元)年に開いたとされ、修験道として体系化されていったものだ。那谷寺も同じ年に泰澄によって開かれたと寺伝が伝えており、平安時代に花山(かざん)法皇が訪れて現在の「那谷寺」と命名した。南北朝時代以降は荒廃していたが、江戸時代初期に前田利常が今の寺観を整えた。

 

山門のそばにある書院は、1637(寛永14)年の重要文化財建築で、京都の菩提寺に当時の有力大名が寄進した書院と変わりない静かな佇まいを見せてくれる。前田家による江戸時代初期の建築は、金沢城内には残っていないこともあり、とても見応えがある。

 

名勝指定の書院庭園は小堀遠州の指導で加賀藩の庭師が造ったものという。苔に覆われた姿が美しい。石川県や福井県は苔が美しいのでぜひ見てほしい。福井県の平泉寺白山神社の苔は、京都・西芳寺と並んで圧巻だ。

 

【公式サイトの画像】 書院

 

 

 

書院の向かいにある「普門閣」には宝物館があり、寺の今の寺観を整えた前田利常の肖像画が見応えがある。前田利常は利家の子で、娘が桂離宮を造営した八条宮智忠(としただ)親王の妃となったことから後水尾院とも親しく交際し、当時最先端の京都の寛永文化を金沢に持ち込んだ。この肖像画を見ると武家というより公家に見えて仕方がない。

 

【公式サイトの画像】 宝物館 前田利常公肖像

 

 

 

ゆるやかな上り坂の参道を進むと、水墨画のような名勝指定の奇岩「遊仙境」が目に入ってくる。このあたりの空間は那谷寺が見せる自然美の絶景で、四季の彩が美しい。水墨画のように悠久で、修験場のように神秘的だ。

 

奇岩の奥には重要文化財の本殿「大悲閣」がある。寺院は通常「本堂」だが、「本殿」と呼ぶところに神仏習合時代の名残を垣間見ることができる。那谷寺で一番の神秘的な空間で、岩を掘り抜いて造られている。母親の胎内を現した洞窟に入って本尊の十一面千手観音に祈りを捧げ、出てくると心身が清められる「胎内くぐり」が体験できる。

 

【公式サイトの画像】 大悲閣

 

 

 

那谷寺を開いた泰澄は、718(養老2)年に白山権現のお告げで粟津温泉を発見したことでも知られる。粟津温泉にあって一時期「世界最古の宿泊施設」としてギネスブックに掲載されていた温泉旅館「法師」もこの年の創業で、1300年間営業を続けているとは驚愕だ。しかしもっと驚愕なのは、日本にはさらに古い温泉旅館が2軒あることだ。717(養老元)年創業の兵庫・城崎温泉「古まん」と705(慶雲2)年創業の山梨・西山温泉「慶雲館」だ。

 

現在のギネスブックの世界最古の宿泊施設は「慶雲館」で、世界最古の企業も日本の「金剛組」である。日本は本当にかけがえのない歴史を今に伝えていることを強く実感できる。北陸でそんな歴史が脈々と今に続いている。

 

 

 

 

日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさんある。ぜひ会いに行こう。

 

 

那谷寺と白山の歴史の決定版 

 

那谷寺

http://www.natadera.com/

原則休館日:なし

※展示作品は、展示期間が限られているものがあります。

※仏像や建物は、公開期間が限られている場合があります。

※書院と庭園は、冬季の積雪時は拝観不可。

 


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