美の五色 bino_gosiki ~ 美しい空間,モノ,コトをリスペクト

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山口 常栄寺 雪舟庭|美の五色 ~雪舟作でなくても素晴らしい

2018年12月09日 | お寺・神社・特別公開

全国に雪舟庭と呼ばれる庭園はいくつもありますが、山口市の常栄寺(じょうえいじ)は、その中でも数少ない名勝・史跡のダブル指定です。

  • 雪舟庭の中でも面積が大きく、雄大な空間を楽しめる
  • 山の斜面を活かした造形が美しく、見る角度によって異なる表情が豊か
  • 芝生の枯山水に配置された多数の石が景観を引き締めている
  • 重森三玲による南溟庭はとても不思議な空間


地方にある庭としてはトップクラスの美しさです。”雪舟作”としらなくとも、美しいと感じます。


山門

前回ご紹介した瑠璃光寺と同じく、常栄寺も移転や改名が多く行われています。常栄寺は1563(永禄6)年、毛利元就が急逝した嫡男・隆元(たかもと)の菩提を弔うため、当時の毛利氏の本拠地・安芸吉田で創建されました。

常栄寺は毛利輝元(てるもと)が萩に移封される際に、安芸吉田から山口の現在の洞春寺(どうしゅんじ)の敷地に移されます。幕末になって萩から山口に毛利氏が本拠地を移す際に、始祖・毛利元就の菩提寺である洞春寺を萩から現在地に移し、その玉突きのようになって常栄寺は現在地に落ち着きます。

雪舟が作庭した当時の寺は妙喜寺(みょうきじ)で、雪舟を庇護した大内政弘(おおうちまさひろ)の別邸に政弘の母の菩提寺として建立されました。輝元が萩に移封される際に、安芸吉田にあった輝元の母の菩提寺・妙寿寺(みょうじゅじ)を山口に移転して妙喜寺と合併させ、妙寿寺と名前を買えます。幕末に常栄寺が移転し、妙寿寺と合併したことで再び名前を変え、常栄寺となって今に至ります。

境内は1926(大正15)年の火災でほぼ全焼しており、現在の建物はその後の再建になります。非常に複雑な経緯を経て現在に至りますが、臨済宗東福寺派の寺院として禅寺らしい佇まいも見せてくれます。


南溟庭

雪舟庭は本堂の奥にあり、最初に別の庭を目にします。こちらも名庭として名高い南溟庭(なんめいてい)です。南溟庭は、昭和の名作庭家・重森三玲(しげもりみれい)による1968(昭和43)年の作庭です。住職から「雪舟より良い庭は困るので、上手に下手な庭を作ってもらいたい」と禅問答のような依頼を受け作庭しています。

一般的な庭とは逆に、方丈(本堂)側に苔で覆われた築山があり、庭の奥まで白砂を敷き詰めています。方丈からは海を眺めているように見えます。重森らしい現代的なセンスの良さではなく、魔訶不思議な空間に仕上げています。とても”上手な”庭だと思います。


本堂裏から見た雪舟庭

雪舟庭は回遊しながら見ることをおすすめします。とても表情が豊かな庭だからです。本堂裏から正面に庭を見ると、石が多数配置された芝生の枯山水がまず目を引きます。奥に見える池と滝までは距離があって冗長感が出がちですが、多数の石がそれを打ち消しています。

池の西側から眺めると、正面にある滝と背後の森から水が流れ出てくるように見えます。雄大な景観です。西側には銀閣のような二層建ての楼閣があったと推測されており、二階から見下ろすとさらに雄大さを楽しめたことは間違いないでしょう。楼閣そのものも重要な庭の景観のパーツになっていたと想像できます。いつの日か楼閣が復元されることを待ちたいような気分になりました。

この庭は”雪舟作”という冠が付かなくとも、とてもよくできていると感じられます。自然の地形をとても上手に生かしており、見る角度によって異なる表情がとても豊かなことに気づくからです。表情の豊かさは寺の公式サイトのフォトギャラリーでも確認することができます。

【常栄寺の画像】 フォトギャラリー

【常栄寺の画像】 収蔵品紹介 雪舟等楊像ほか

常時公開されていませんが、常栄寺には雪舟や毛利隆元らの優れた肖像画も寺には伝えられています。大内文化を今に伝える素晴らしい禅寺です。



こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



大内文化と山口繁栄の礎を築いた男の物語

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常栄寺 雪舟庭
【公式サイト】 http://sesshu.jp/

原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:8:00~17:00(12-3月は~16:30)

※公開されていない建物があります。



◆おすすめ交通機関◆

JR新山口駅下車、北口(在来線口)から防長バス「県庁前」下車、
防長バス222系統に乗換え「雪舟庭入口」下車、徒歩10分
JR山口駅から車で10分
JR新山口駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:60分
新山口駅北口防長バスのりば→防長バス→県庁前→防長バス222系統→雪舟庭入口

新山口駅まで山陽新幹線で 東京駅から4時間30分、新大阪駅から2時間

【公式サイト】 アクセス案内

※鉄道やバスは本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることを強くおすすめします。
※この施設には無料の駐車場があります。
※現地付近のタクシー利用は事前予約をおすすめします。


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