奈良・斑鳩の法隆寺のすぐ近くにある藤ノ木(ふじのき)古墳は、30年ほど前にきらびやかな副葬品が未盗掘の状態で発掘されたことで世間を驚かせました。高松塚やキトラのように壁画はありませんでしたが、金細工などをふんだんに用いた服飾工芸の副葬品は一括して国宝になっています。
石室内はガラス越しに見学することができます。古墳の近くにある斑鳩町文化財活用センターでは、古墳と発掘調査についてわかりやすく学べるとともに、副葬品のレプリカで墓の趣を詳細に確認することができます。
国王に近いクラスの未盗掘の墓が発掘されることは、世界でもツタンカーメンの墓のようにまずありません。日本でも同じで、奇跡に近いものなのです。
奈良県は至る所に古墳があり、確認されているだけで10,000近くあります。平地に小高い丘のようなところがあれば多くが古墳で、藤ノ木古墳もその一つです。
発掘調査は1985(昭和60)年から奈良県立橿原考古学研究所(通称:橿考研)により行われました。橿考研は高松塚やキトラなどの著名な古墳や飛鳥京跡の発掘でも知られる、日本を代表する考古学の研究機関です。毎年多くの古墳の発掘を行っていますが、1985年の1回目の調査できらびやかな副葬品を目にしたときはさぞかし驚いたことでしょう。
現地の石棺説明パネル
以降5回に分けて発掘調査が行われ、墓の全貌が明らかになっています。最初に気になるのは被葬者が誰かということですが、学説としては定まっていません。副葬品から天皇に近い支配階級の人物であったと考えられており、物部守屋と結んだため蘇我馬子に暗殺された穴穂部皇子(あなほべのみこ)とする説が有力なようです。
しかし何ともミステリーなことに石棺の中には男性が二人いたのです。棺の中に男性二人が一緒に葬られるのはかなり特殊な事情があると考えてしまいます。もう一人についても推古天皇の仙台の崇峻(すしゅん)天皇とする説や、女性であるという説もあります。どこかで新たな史料が見つからない限り決着は難しいでしょう。
藤ノ木古墳はもう一つミステリーがあります。法隆寺による墓守が長く続いていたと考えられるのです。江戸時代には確実に墓守が常駐していたようですが、天皇の墓でも墓守が常駐していたというのは聞いたことがありません。盗掘を免れた要因は墓守がいたことが大きいでしょうが、なぜそこまでする必要があったのか、とてもロマンのある話です。
【公式サイトの画像】 斑鳩町文化財活用センターの出土品レプリカ
斑鳩町文化財活用センターに展示されているレプリカはきわめて精巧です。代表的な出土品から選りすぐられており、墓のあらましを理解しやすくなっています。細工のきめ細かさやデザインの優美さがひしひしと伝わってきます。なお副葬品の本物は橿原市にある橿考研の附属博物館で入れ替えながら展示されています。
【公式サイト】 奈良県立橿原考古学研究所附属博物館
今年2018年10月末からは、藤ノ木古墳開棺調査30周年を記念して、斑鳩町文化財活用センターで秋季特別展「史跡藤ノ木古墳と大和の家形石棺」が行われます。橿考研の附属博物館から本物の国宝の副葬品がやってきます。
【斑鳩町観光協会サイト】 秋季特別展「史跡藤ノ木古墳と大和の家形石棺」
とてもミステリアスな藤ノ木古墳、古代への関心を上手に刺激してくれます。
こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。
二人は誰なのか?
藤ノ木古墳
【斑鳩町観光協会サイト】
※外観の拝観・見学に条件はありません。いつでも無料で拝観・見学できます。
※石室内部には入れませんが、ガラス越しに見学することはできます。
斑鳩文化財センター
【奈良県観光公式サイト】
原則休館日:水曜日、12月28日~1月4日
入館(拝観)受付時間:9:00~16:30
おすすめ交通機関:
JR大和路線「法隆寺」駅下車、南口からバス「法隆寺参道」下車、徒歩15分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:1時間20分
大阪駅→大和路快速→法隆寺駅→奈良交通バス→法隆寺参道バス停
※バスは本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることを強くおすすめします。
※この施設には駐車場はありません。
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