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美の五色 bino_gosiki ~ 美しい空間,モノ,コトをリスペクト

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太宰府 戒壇院 ~悠久の歴史を見続けてきた毘盧遮那仏は美しい

2017年11月24日 | お寺・神社・特別公開

古代のロマンを感じさせる参道

 

 

戒壇院(かいだんいん)とは、僧侶であることを公式に認定する「授戒(じゅかい)」を行う機関のことで、鑑真によって754(天平勝宝6)年に東大寺に設けられた。鑑真はそもそも日本に授戒ができる高僧がいなかったため招聘され、日本本土で最初に鹿児島県坊津(ぼうのつ)に上陸した。平城京に向かう途中で大宰府に立ち寄り、日本で初めて授戒を行っている。大宰府は日本の仏教の歴史の中でとても重要な地なのだ。

 

大宰府の戒壇院は、761(天平宝字5)年に下野(栃木県)の薬師寺とともに設けられた。東大寺だけでは足りないと考えられたのであろう。隣接する観世音寺の子院として設けられ、その所在地は創建時より変わっていないという。大宰府政庁跡のそばにあり、奈良の平城京跡のように広大な空間と青い空が広がっている。1300年の時間の流れを感じさせるような静かな佇まいが魅力的なエリアである。

 

鎌倉時代ごろから有力寺院が自ら授戒を行うようになったため、国家機関としての戒壇院は徐々に衰退していった。戦国時代の1554(天文23)年まで授戒が行われていた記録があるが、戒壇院もかなり荒廃していたようだ。その後江戸時代になって黒田家家臣や博多の豪商によって再興され、観世音寺から独立した。現在は日本最古の禅寺として知られる博多の聖福寺(しょうふくじ)の末寺となっている。

 

堂宇は江戸時代前半の建築だが、赤みを帯びた土壁に囲まれた境内はとても趣があり、悠久の時間の流れを感じさせる。山門から真っ直ぐ伸びた石畳の参道の正面に本堂がある。屋根の角の反りが強調され、禅寺の雰囲気を醸し出している。

 

本堂には本尊の盧舎那仏(るしゃなぶつ)がいらっしゃる。平安時代の作で重文指定されており、お顔は穏やかで落ち着きがある。親指と人差し指で丸い形を作り胸の前に構える印相(いんそう、仏像の手のポーズ)である「説法印」も興味深い。まさに仏様が語り掛けているように見える。盧舎那仏は東大寺が拠り所とする華厳経の本尊で、大仏も盧舎那仏だ。戒壇院の中心である東大寺にあやかって本尊としたのだろう。

 

盧舎那仏の作例はほとんどなく、他には唐招提寺・金堂本尊が知られるくらいだ。また説法印も非常に珍しく、広隆寺の講堂本尊・阿弥陀如来くらいだろう。とても珍しい仏像であり、落ち着いた美しさも相まって、ぜひお会いする価値はある。

 

 

 

赤みを帯びた土壁が印象的

 

 

スマートな本堂

 

 

隣接する観世音寺とともに、大宰府が重ねてきた悠久の歴史を体感することができる寺である。木々の彩りも美しい。太宰府天満宮の賑やかな魅力とは対照的に、静かな時間を過ごすことができる。ぜひおすすめしたい。

 

 

 

観世音寺からの入口には美しい紅葉

 

 

 

日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさんある。ぜひ会いに行こう。

 

 

大宰府を知り尽くす決定版、「太宰府検定」公式テキストにもなっている

 

 

戒壇院

http://www.geocities.jp/kaidanin925/(公式サイト)

http://www.dazaifu.org/map/tanbo/tourismmap/5.html(大宰府観光協会サイト)

原則休館日:なし

※盧舎那仏は、住職不在の際は拝観できない場合があります。

 

 

 


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