真木大堂(まきおおどう)は、富貴寺から南へ車で10分ほどの距離の古刹です。富貴寺と並んで六郷満山文化を今に伝える貴重な遺構で、9体の重文の仏像からは当地の仏像彫刻のレベルの高さを実感できます。
また境内や付近には石造物も数多く見られます。熊野磨崖仏も車で5分ほどの距離です。大分県の文化は、石にまつわるものに見応えがたくさんあります。
真木大堂(まきおおどう)は、平安時代に六郷満山の中心的寺院・伝乗寺に伝えられた仏像を細々と守ってきた堂宇がその起源と考えられています。現在は江戸時代の本堂と戦後の収蔵庫で仏像を守っています。
本尊の阿弥陀如来坐像は、高さ2mを超え迫力があります。衣部分は朱塗りがはがれて木目、地肌部分は金箔がはがれて黒漆が露出しており、経過した時間の長さを感じさせます。お顔は定朝様式のぽっちゃり方ではなく、どちらかと言えば平安前期の面長で唇を引き締めた神妙な顔つきです。
ほぼ等身大の四天王が本尊の四隅を固めています。こちらも平安時代に多いりりしいお顔つきで、極楽浄土への往生を願う人々を見守るような包容力を感じさせます。平安時代の国東半島には、都に匹敵する彫刻の腕を持つ仏師がいた可能性が高いと思われます。
【公式サイトの画像】 所蔵仏像ご紹介
不動明王と大威徳明王も240cmほどの高さがあり、明王の像例としてとても大きいことが目立ちます。
不動明王は童子の脇侍を連れていますが、高さが不動明王の1/3ほどしかなく、その小ささが目を引きます。修験道色の強い六郷満山では、明王は重要な信仰対象です。とにかく明王の大きさを目立たせようとすることが、当地の文化の個性なのかもしれません。
大威徳明王は大きさでは日本一です。6本ある足が観る者を惹きつけます。極楽浄土のある西方を守る守護神として、これ以上ない見事な造形です。本尊の四天王と同じく、どこか安心感を醸し出しています。憤怒の表情で巨体であるのに、見ていると気持ちが落ち着きます。仏師の腕がそれだけ見事だと私は思いました。
近隣集落に点在していた石塔が、鑑賞の便をはかるために真木大道の境内に集められています。宝筐印塔(ほうきょういんとう)、五輪塔(ごりんとう)など様々な石塔があります。現存するだけでこれだけあるということは、全盛期の平安時代にはもっとたくさんあったことが容易に予測できます。
平安時代の国東半島の人々の信仰への強い思いが、石造物からも伝わってきます。日本はそれぞれの地域で多様な文化が花開いた国であることを改めて実感できます。行きやすいところではないですが、とてもすがすがしい体験になると思います。ぜひ訪れてみてください。
今年2018年は六郷満山開山1300年のイベントが各地で目白押しです。
【公式サイト】 六郷満山開山1300年
こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。
驚嘆の国東半島の仏教文化を巡るガイドブックの決定版
真木大堂
http://www.makiodo.jp
原則休館日:なし
おすすめ交通機関:
JR日豊線宇佐駅から車で30分、豊後高田市「昭和の街」から車で20分
※この施設には無料駐車場があります。
※公共交通機関は地域住民向けの本数の限られたコミュニティバスのみです、公共交通機関での訪問は非現実的です。
※現地付近のタクシー利用は事前予約を強くおすすめします。
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