日本の禅寺で最も古いと言えば京都・建仁寺の名前がよくあがりますが、本格的な禅寺の創建としては博多の聖福寺(しょうふくじ)の方が7年早いのが事実です。江戸時代には、マンガのような禅画で知られる仙厓義梵(せんがいぎぼん)が住職を務め、絵を求める来客がひっきりなしにやってきていました。
緑に覆われた境内は、禅寺らしくとても静かで清掃が行き届いています。建物のデザインには中国スタイルのものが目立ち、空間をとてもエキゾチックに見せています。聖福寺の境内も、”静”の博多を楽しむためには必須スポットです。
円窓が中国らしさをつたえている
日本で臨済宗が興隆する最初の扉を開いた栄西(えいさい)は、1191(建久2)年に中国留学から帰国した後、九州内を転々としていました。天台宗などの既存宗派からの圧迫をかわしながら、本格的な禅道場建立の機会をうかがっていたのだと思われます。
最初の本格的禅道場は京都ではなく、1195(建久6)年に博多に聖福寺として開かれました。
- 開基となった源頼朝は鎌倉新政権の立ち上げ直後であり、京都の既存仏教に代わる新しい仏教勢力を求めても不自然ではない
- 日宋貿易によって繁栄を謳歌していた博多には、臨済宗を理解してくれる中国商人たちが多数いる
- 延暦寺の勢力が巨大な京都では創建してもすぐにつぶされかねない
こうした事情が重なって博多が選ばれたことは想像に難くありません。
聖福寺はその後、幾度も戦乱に巻き込まれ焼失しますが、都度復興されます。豊臣秀吉や黒田長政など時の権力者の庇護も受け、博多を代表するお寺として現在まで続いています。
栄西も1202(建仁2)年に京都で建仁寺を開くことに成功します。博多の聖福寺も1204(元久元)年に後鳥羽天皇より「扶桑最初禅窟」の額が贈られます。天皇が日本で最初の禅寺として認定したことになります。この扁額は現在も寺につたえられています。
境内は緑に包まれている
江戸で喜多川歌麿や葛飾北斎らが活躍した浮世絵の全盛期の頃に、仙厓は聖福寺で住職を務めていました。禅堂の再建など伽藍の再興にも尽力しており、中興の祖ともいえるような存在です。隠居後も博多にとどまり絵を描き続けました。仙厓の作品からは博多の知識人との交流の幅広さがうかがえます。
仙厓の作品は東京・出光美術館のコレクションがよく知られています。2018年9月15日~10月28日には仙厓の展覧会も行われます。
【展覧会公式サイト】 出光美術館「仙厓礼讃」
心を洗うには極上の空間
建物内部の拝観はできませんが、都会のオアシスのような境内を静かに散策する人が目立ちます。仏殿を中心に中国スタイルの建物が、境内の緑にとてもよく映えます。座禅をするように自分と向き合うための時間を過ごすには最適の空間です。
仙厓の命日10月7日にあわせ、非公開の宝物公開や野点が行われる「仙厓さんと七日間」が開催されます。普段は観光目的では公開されていないお寺ですので、建物内部の拝観の良い機会になるでしょう。
【公式サイト】 聖福寺「仙厓さんと七日間」
こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。
別冊太陽ならではの仙厓の集大成
聖福寺
【公式サイト】http://shofukuji.or.jp/wp/
※この寺は観光目的では常時公開されていません。建物内部の拝観はできません。次の公開時期は未定です。
※境内の散策は可能です。
おすすめ交通機関:
福岡市地下鉄・空港線「祇園」駅下車1番出口から徒歩5分、JR博多駅から徒歩15分
JR博多駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:15分
博多駅→地下鉄空港線→祇園駅
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には駐車場があります。
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