和歌山市の紀三井寺(きみいでら)は、奈良時代から景勝地として知られる和歌の浦(わかのうら)を見下ろす高台にあります。西国三十三か所の観音巡礼に加え、寺名の由来となった名水を求めて、中世から多くの人で賑わっています。
現代も和歌山の近郊レジャーの代表格として人々に愛されています。そんな紀三井寺の魅力をご紹介したいと思います。
紀三井寺からから和歌の浦を見下ろす絶景
紀三井寺は、正式には紀三井山金剛宝寺護国院(きみいさんこんごうほうじごこくいん)と言いますが、ほぼ誰も知りません。著名なお寺にはよくあるケースです。境内のある名草山(なくさやま)の中腹から滾々と湧き出る3つの名水が有名になったことから、紀州にある3つの井戸の寺がいつしか寺名として定着しました。
奈良時代に開創されたと伝えられる紀三井寺には、古くから天皇や上皇の行幸が相次ぎ、江戸時代には紀州徳川家の代々の藩主に愛されていました。観音巡礼・三名水・和歌の浦の眺望と三点セットになった観光資源は、上流階級のみならず広く庶民にも人気を集めます。
結縁坂
参道の入口では231段ある結縁坂(けちえんざか)が、まず参拝者を迎えてくれます。和歌山から江戸に材木とミカンを運んで巨万の富を築いた豪商・紀伊国屋文左衛門がこの坂で、後に妻となる女性と出会ったエピソードに基づきます。
和歌の神として著名な近くの玉津島神社の宮司の娘が切れた鼻緒をすげ替えたのが出会いという話です。このため縁むすびと商売繁盛を祈ってこの坂を目当てに訪れる人も少なくありません。
三名水の一つ・清浄水は、結縁坂のふもとにある立派な赤い楼門の下に引かれています。罪を洗い流してくれるという意味で、多くの参拝者が柄杓に水をとって手を洗います。清浄水の水源は結縁坂の途中にありますが、そこでは水を手に取ることができません。
清浄水の水源の上の小道を少し進むと、もう一つの名水・楊柳水があります。煮沸すれば飲めるとのことで、コーヒーやお茶用に大きめのボトルに水を汲む人も少なくありません。
正面が本堂
結縁坂を上りきると左手に中心伽藍が広がります。重文の鐘楼や多宝塔の朱塗りが木々の緑によく映えています。一方坂の右手には竜宮城を思わせるような巨大な新仏殿が目に入ります。中では2008年に落慶法要を行った高さ12mの黄金の千手観音が圧巻の輝きを見せています。
紀三井寺の本尊は50年に一度の公開の秘仏で、他の重文の仏像も常時公開されていません。普段の参拝は本堂の外陣と新仏殿で行います。
和歌の浦
伽藍からは、8代将軍吉宗が将軍就任前の紀州藩主時代にこよなく愛した和歌の浦の海の風景が、現在もとても穏やかにひろがっています。奈良時代から人々に愛され続けてきた見事な眺望です。眺望の良い西国三十三所観音巡礼では、京の街を一望できる清水寺に匹敵するでしょう。
春には関西の早咲きの桜の名所としてもよく知られています。こちらもぜひどうぞ。
こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。
日本はやっぱり水の国
紀三井寺
【公式サイト】http://www.kimiidera.com/
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:8:30~16:30
※公開期間が限られている仏像や建物があります。
おすすめ交通機関:
JRきのくに線「紀三井寺」駅下車、東口から徒歩10分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:2時間
大阪駅→IR紀州路快速→和歌山駅→きのくに線→紀三井寺駅
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には有料の駐車場があります。
※現地付近のタクシー利用は事前予約をおすすめします。
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