日下部民藝館(くさかべみんげいかん)は、飛騨高山を代表する豪商の古いお屋敷(民家)です。市内に二か所ある重伝建の内、北側の下二之町大新町地区の中にあります。1966(昭和41)年に明治建築の民家としては日本で初めて重要文化財に指定されました。1879(明治12)年の建築ですが、江戸時代の建築様式で建てられています。
館名にもあるように、日下部家が昔使っていた様々な生活用具(民芸品)の展示からも江戸時代の高山の文化水準の高さを感じることができます。飛騨といえば山奥のイメージが強いですが、高山祭の華麗な屋台でも知られるように、金に糸目をつけずに文化を造った豪商たちが少なからずいたのです。
そんな豪商たちの生活の息吹を忠実に感じることができます。
風格のある玄関
高山は戦国大名の金森長近(かなまりながちか)によって秀吉の時代から町づくりが始まりました。1695(元禄8)年に幕府の天領になると、飛騨の豊かな材木や鉱産物を扱う商家が発展し、町衆文化が栄えるようになりました。
日下部家は幕府の代官所(高山陣屋)の御用商人を代々務めた家で、両替商を営むような豪商でした。現在の建物は1875(明治8)年の大火で焼失した後に再建されたものです。
正面
正面から見た外観は、とても頑丈な印象を受けます。屋根は低くゆるやかで軒が深いことが目立ちます。雪の重みに耐え、雪の塊の落下に配慮しているのでしょう。140年前の建物と思えないほど堂々としています。ワンポイントの黄色い土壁が建物の印象をことさら上質に見せています。
玄関を入ると天井の高い店舗部分です。囲炉裏のすすで漆黒に染められた天井の梁や柱がライトアップされ、とても美しい空間になっています。この梁や柱もことさら重厚に感じます。
襖の意匠にも上流階級にふさわしい上質さが表現されています。囲炉裏の間にはぬくもりが今でも残っているように感じます。1Fはとても広い空間です。大勢の来客や使用人で賑わっていた当時の様子がひしひしと伝わってきます。
奥が土蔵、右側でお茶をいただける
1Fを抜けると中庭のような屋根のない土間があり、右手の平屋の建物ではアンティークを見ながら無料のお茶がいただけます。うれしい限りです。
奥の土蔵は民芸品の展示施設になっています。味噌を貯蔵していたと思えるような大きな陶磁器の壺のデザインには、雪国らしい素朴さの中にも上品さがあります。土蔵以外にも館内の各所で日下部家が使っていた様々な生活用具が展示されています。それぞれデザインとしてみても美しいものばかりです。きっと最高級品を多く使っていたのでしょう。
【公式サイト】 フロアマップと見どころ
重要文化財の古民家は全国に数多くありますが、こちらはその中でも展示品と建物の見やすさへの配慮は群を抜いています。清掃もとても行き届いています。オーナーがとても大切に扱っていることがわかります。とても快適に楽しめるミュージアムです。
こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。
良材の商いが成功したからこそ山奥に匠が登場した
日下部民藝館
【公式サイト】http://www.kusakabe-mingeikan.com/
原則休館日:12月~2月の火曜日
入館(拝観)受付時間:9:00~16:30(12月~2月は~16:00)
※靴を脱いで室内を見学します。床汚れ防止のため、裸足の場合は靴下を持参しましょう。
おすすめ交通機関:
JR高山駅下車、東口(乗鞍口)から徒歩15分
JR名古屋駅から在来線特急電車を利用した所要時間の目安:2時間20分
【高山市観光公式サイト】 高山市へのアクセス案内
※鉄道は本数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることを強くおすすめします。
※この施設には駐車場はありません。
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