奈良・春日大社の祭りと言えば、12月の若宮おん祭がとても有名ですが、神社として最も重要な祭は、3月13日に行われる春日祭(かすがさい)です。儀式に向かう行列を拝観することができます。
- 若宮おん祭以上に歴史を感じさせる神官や勅使の装束が古式ゆかしくとても美しい
- 行列が粛々と進む様子は、神の領域がとても近くにあると感じさせる
- 天皇が使者を派遣する格式の高い勅祭の中でも、葵祭/石清水祭と並んで最高格の祭
回廊内で行われる儀式は非公開なため、回廊内へ向かう神官や勅使が行列するわずか10分ほどしか祭を拝観することはできません。しかし10分間に平安時代に神へ祈りをささげていた様子が凝縮されているように感じられるのが、この祭りの不思議な魅力でもあります。
行列の先頭
春日祭は若宮おん祭よりも古く、平安時代の初めに藤原氏の祭りとして始められたと考えられています。興福寺が主導して一貫して大々的に行われた若宮おん祭と比べ、細々と続けられていたようです。天皇が使者を派遣する勅祭(ちょくさい)として、国家の祭りになったのは明治になってからです。
現在、重要な祭礼に天皇から使者が派遣される勅祭社は全国に16社あります。伊勢神宮は慣例的に勅祭社には含みませんが、出雲大社や明治神宮など、さすがと思える神社で構成されています。春日祭は、賀茂社の葵祭、石清水八幡宮の石清水祭と共に三勅祭に数えられています。故実や儀式の様子を今に伝える最も重要な祭りと明治天皇がみなし、現代に至っています。
春日祭は、神社として最も重要な祭りである例祭(れいさい)です。賀茂社の葵祭のように、通常は例祭がその神社の最も著名な祭りになっており、春日大社のように例祭の知名度が低い神社は少数派です。祇園祭が例祭ではない八坂神社なども同様です。
二の鳥居から中へは拝観者は立ち入れない
春日祭はほとんどが、神に国家の安泰と国民の繁栄を祈る儀式で構成されます。行列や神輿、舞踊の奉納と言った氏子たちを巻き込んで華やげるような神事はなく、藤原氏の内々の祭であった形態を色濃く残しているものと考えられます。
儀式のほとんどが非公開なため、どのような古式にのっとったふるまいが伝えられているかはわかりません。わずかに拝観できる行列の荘厳さから、とても神秘的であろうことは十二分に想像できます。
春日大社の祭りの装束は、京都の神社の祭りの装束以上に積み重ねた時間の長さを感じさせます。春日大社は南都焼討の際も大きな被害を免れています。京都に比べ随分と戦乱が少なかった奈良の方が、故実の伝承が継続しやすい環境にあったことが影響しているように思えてなりません。
行列する勅使や神官の装束には柄がなく、装束全体が一つの色だけで作られています。この究極にシンプルなデザインが、歴史的には京都より先輩である奈良らしさを感じさせます。色の違いによって身分や役割を示しているように見えるところも、古式をよく伝えているように見受けられます。
行列の最後
究極にシンプルで色とりどりの装束の行列は、春日大社の杜の緑によく映えます。若宮おん祭では味わえない神秘的な空気感が体験できます。10分間しか見られない祭りですが、しっかりとした存在感があるのが、春日祭の不思議な魅力です。
菊水楼の梅?早咲きの桜?
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
春日大社宮司が語る日本人の心の持ち方
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春日大社
春日祭
【神社による行事公式サイト】春日祭
会場:春日大社表参道(三条通)二の鳥居付近のみ拝観可能、回廊内は拝観不可
会期:毎年3月13日(日付で固定)
二の鳥居付近での拝観可能時間は10:00頃から10分間程度
※小雨は決行、荒天は中止の場合があります。
※進行時間は当日の神事の進行や天候に左右される場合があります。
春日大社
【公式サイト】http://www.kasugataisha.or.jp/
◆おすすめ交通機関◆
近鉄奈良線「近鉄奈良」駅下車、東改札口C出口から拝観場所(二の鳥居付近)まで徒歩25分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:1時間25分
JR大阪駅→JR環状線→鶴橋駅→近鉄奈良線→近鉄奈良駅
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には有料の駐車場がありますが、行事開催時には閉鎖される場合があります。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
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