京都の一乗寺(いちじょうじ)は、京都の北東(地図の右上)にある学生が多く住む静かな街です。比叡山の麓にあたる山裾には、曼殊院や詩仙堂など皇族や文化人が静かに人生を楽しんだ寺や屋敷も少なくありません。京都の魅力が凝縮された「はしっこ」を代表するエリアの一つです。
現在は京都ラーメンの聖地で全国有数のラーメン屋の激戦区としても知られていますが、そんなエリアの中に異彩を放つ本屋があります。恵文社(けいぶんしゃ)です。
公式サイトのトップページには「本にまつわるあれこれのセレクトショップ」と自己紹介しています。本や雑貨が一緒にテーマに沿って並べられています。今ではTSUTAYAグループが運営する蔦谷書店が近いビジネスモデルを採用していますが、恵文社は日本でも相当に早くこのスタイルを採用した本屋ではないでしょうか。
京都の一乗寺という京都カルチャーをけん引するエリアにとても溶け込んでいる本屋です。「こんなのがあるのか!」、行けば何がしかの発見ができるセレクトショップです。
恵文社は1975年に現地で開店し、当初から流行に敏感そうな学生アルバイトにお店作りを任せるなど、かなり異色の商法をとっていました。一乗寺近辺には京大・同志社など大規模総合大学や京都工芸繊維大学・京都精華大学・京都造形芸術大学といった芸術系など、多くの大学があります。学生や研究者たち住んだり集まったりしやすい立地です。そんな土地柄だからこそ異色の商法が受容されたのでしょう。
2006年ごろから本格的に雑貨や文具など書籍以外の商品の販売も始め、ギャラリーやイベントスペースも作りました。目当ての本を買いに本屋に行くという既存概念を超えて、新しいカルチャーを求める人々が集いやすい空間づくりに努めてきたのです。
お店に並ぶ書籍や雑貨はほとんど、スタッフが選りすぐって発注したものです。服飾雑貨のセレクトショップでは当たり前かもしれませんが、書籍の場合はそう簡単ではありません。日本では大手の取次会社(書籍の卸)が売れ行きを勘案して書店に配本するシステムが確立しているため、販売実績のない書店側から自由に注文を出すことは容易ではありません。
恵文社の場合、こうした出版業界の流通システムの中で大きな信用があると言えます。だからこそカルチャーに敏感なバイヤーのお眼鏡にかなった書籍をスムーズに仕入れることができるのです。この”セレクト感”は、お店に行けば明らかに通常の本屋と異なることを感じます。
まず本や雑貨がエッジの利いたテーマ別に並べられています。特定の芸術家や特定の料理レシピなど新しいカルチャーとして斬新で面白いとバイヤーが感じたものであれば、テーマとしては”何でもあり”です。既存の書店や図書館にあるような大まかなジャンルや出版社別ではこのお店では本は探せません。
「何かいいものないかな」と探すにはうってつけの売り場構成になっています。本を探すのではなく、カルチャーを楽しむために行くお店です。気が付くと2-3時間経っていた、ということも起こりえます。
お店のスタッフによる公式ブログで毎月、本の売上ランキングが公開されています。どんなカルチャーに注目が集まっているのか、ランキングを見ているだけでも楽しくなります。おすすめ商品を選んだ話もとても丁寧に解説されています。とても上手なPRメディアになっています。
【公式サイト スタッフブログ】 2018年7月書店売上ランキング
2015年に恵文社・一乗寺店の名物店長が独立し、河原町丸太町に誠光社(せいこうしゃ)をオープンしました。店長一人が目の届く範囲でセレクトした書籍を提案するコンパクトな本屋です。恵文社とは異なる個性が楽しめます。
【公式サイト】 誠光社
こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。
京都カルチャーを代表する恵文社が届ける京都の今の魅力
恵文社 一乗寺店
【公式サイト】http://www.keibunsha-store.com/
原則休館日:1/1
入館(拝観)受付時間:10:00~21:00
おすすめ交通機関:
京都市バス「高野」下車徒歩5分、もしくは「一乗寺下り松」下車徒歩7分
叡山電鉄「一乗寺」駅下車、徒歩3分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:45分
京都駅→地下鉄烏丸線→北大路駅→市バス204/206/北8系統→高野
【公式サイト】 アクセス案内
※京都駅から直行するバスもありますが、地下鉄とバスを乗り継ぐ方が、時間が早くて正確です。
※この施設には無料の駐車場があります。
________________________________
→ 「美の五色」とは ~特徴と主催者について
→ 「美の五色」 サイトポリシー
→ 「美の五色」ジャンル別ページ 索引 Portal