銀閣寺で観音堂・銀閣に引けを取らない美しい国宝建築・東求堂(とうぐどう)の内部公開が間もなく始まります。名プロデューサー・足利義政が今に遺す、日本文化の原点になったかけがえのない空間を鑑賞できます。
- 床の間や座敷があり、書院造の原型となった室町時代半ばの建築
- 足利義政の美意識を表現したしつらえは、500年後の現代でもとても洗練された印象を受ける
- あわせて公開される方丈では蕪村と大雅の襖絵も鑑賞できる
観音堂・銀閣の室内が公開されることはまずありません。義政の遺した美意識は東求堂でしか味わえません。
方丈と東求堂の間の坪庭にある袈裟形の手水鉢
東求堂は、足利義政が存命中の1486(文明18)年に、持仏堂として完成しました。義政の美意識が徹底して表現されていると考えることができます。観音堂・銀閣は完成前に義政がこの世を去っているため、義政の美意識の表現が100%なされているとは言い切れません。
銀閣寺の前身で義政が造営した別荘・東山殿には当初、文化サロンだった会所や義政が居住した常御所、複数の茶室など多くの建物がありました。1550(天文19)年には、観音堂と東求堂を除いて戦災でことごとく焼失します。観音堂と東求堂は義政の執念によって守られたようなロマンすら感じてしまう、義政の美意識のアバターのような存在です。
方丈からのぞむ銀沙灘の白砂と銀閣
特別公開は定員20名のガイドによるツアー制で、自由拝観はできません。東求堂を守るためには合理的なシステムです。ただし先着順で事前予約はできません。ネットで事前予約できて、英語や中国語でのツアーも設けられると観光面ではとても理想的です。京都でもトップクラスの拝観者数がある銀閣寺にぜひ、新しいやり方の率先をお願いしたいものです。
通常の拝観料を収めた後、方丈前に設置された申込書、といっても飲食店の順番待ちの際に名前を書くボードのようなものに名前を記入した順番にツアーに参加できます。東求堂は銀閣と比べて圧倒的に知名度が低いこともあり、私が訪問した平日の午前中はスタート直前でも参加できていました。
しかし好天の週末は混雑することも予測されます。受付が始まるツアー1時間前に受付を済ませ、その間に庭園を回遊して鑑賞するのが効率の良い時間の使い方でしょう。
東求堂
東求堂では、書院造の原型と言われるしつらえを最も感じることができる部屋・同仁斎(どうじんさい)に、義政が客人に宝物を披露した飾り付けが再現されています。この部屋は義政が書斎や茶室として使っており、現在に続く四畳半の間取りや茶室の原点でもあります。義政から500年後に生きる私たちが見てもその美しさは深く記憶に残ります。床の間が障子で開くようになっており、庭園を掛軸のように見せるアイデアは感動的です。義政は500年間も美的価値を損なわせない表現ができた凄腕Pだったことは間違いありません。
義政はこの部屋以外にも、敷地内にあった会所(かいしょ)に上流階級の客人を招き、歌会や茶会を催していました。いわば都の最高級の文化サロンであり、日明貿易で入手した最高級の宝物である唐物(からもの)を披露していました。これらコレクションは東山御物(ひがしやまごもつ)と呼ばれ、作品や作家を品評した美術書・君台観左右帳記(くんだいかんそうちょうき)は現代も、中世の中国や日本美術を知る重要な基礎史料となっています。
銀閣の鳳凰
現代の生活から文芸まであらゆる日本文化はおおむね室町時代に始まっています。現代日本文化の原点が、痕跡として同仁斎に遺されているのです。知名度では完敗の観音堂・銀閣に比べ、日本文化への影響の偉大さでは東求堂が完勝です。日本文化の奥深さを味わうには、必見のスポットです。
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
中世の権力者は理想郷をどう作ろうとしたのか?
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銀閣寺(正式名称:慈照寺)
春の特別拝観(本堂、国宝東求堂、弄清亭)
【京都市観光協会公式サイト】銀閣寺 春の特別公開「東山文化の原点 国宝東求堂」
公開箇所:
本堂 :本尊・釈迦牟尼仏置、与謝蕪村と池大雅襖絵(複製)
国宝東求堂:阿弥陀如来像、足利義政公坐像、四畳半書院「同仁斎」、書院飾りの再現
弄清亭 :御香座敷(香座敷の本歌)、奥田元宗襖絵
会期:2019年3月16日(土)~5月6日(月)
原則休館日:なし
案内スタート時間:毎日10:00/11:00/12:00/13:30/14:30/15:30の6回、所要約30分
定員:各回20名(当日各回60分前に本堂前に掲示される申込書への名前記入順)
※案内申し込みのために本堂へ向かうには入山料が必要です。特別拝観料も別途必要です。
※申込書への名前記入後、案内スタート時間10分前までに本堂前に集合
※ガイドによる案内のみです、自由拝観できません。
※6名以上のグループ・団体は拝観できません。
※特定の時間帯の案内が休止される場合があります。
※この特別拝観は、おおむね春(3~5月頃)と秋(10~12月頃)に定期的に行われています。
※この寺は観光目的で常時公開されています。庭園と国宝銀閣の外観の鑑賞は常時可能です。
銀閣寺
【公式サイト】 http://www.shokoku-ji.jp/g_about.html
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:8:30~17:00(12-2月は9:00~16:30)
※公開期間が限られている仏像や建物・美術品があります。
※公開されていない仏像や建物・美術品があります。
◆おすすめ交通機関◆
地下鉄「今出川」駅下車、3番出口から市バスに乗換「銀閣寺道」バス停下車、徒歩10分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:35分
京都駅→地下鉄烏丸線→今出川駅(烏丸今出川)→市バス59/102/203系統→銀閣寺道
【公式サイト】 アクセス案内
※京都駅から直行するバスもありますが、地下鉄とバスを乗り継ぐ方が、時間が早くて正確です。
※この施設には駐車場はありません。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
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