昭和に高速バスはほとんどなく、在来線の「エル特急」が定番だった。
京都駅のそばに、JR西日本が2016年4月に「京都鉄道博物館」をオープンした。JR東日本による大宮の「鉄道博物館」、JR東海による名古屋港金城ふ頭の「リニア・鉄道館」と並んでJR本州3社による大型の鉄道博物館が出そろい、鉄道の歴史や役割を伝える施設の充実には目を見張る。
私は3施設とも訪問したが、時代毎の名車両の展示、最新の運転シミュレーション、大型鉄道模型ジオラマ、など鉄道を学び楽しむ基本的なコンテンツは揃っている。またJR東海ならリニア技術の解説といった、各社の営業エリアに合わせた展示の工夫も感じられる。鉄道ファンのみならず、昭和が懐かしいオトナ世代、子連れファミリー、小学校の遠足、と様々な利用者層に楽しめんでもらえるよう、各社の努力を感じる。
JR西日本による京都の博物館の特徴は、何といっても蒸気機関車の動態展示だ。動態展示とは実際に動く様子を見せる展示のことで、東海と東日本の博物館にはない。京都鉄道博物館の源流が、「梅小路蒸気機関車館」という国鉄時代の1972年に作られた日本最大の蒸気機関車の展示施設だったことに由来する。梅小路蒸気機関車館は現在も、JR西日本の現役の機関車の車両基地として利用されている。
C61型が円形転車台にそろり進入!
動態展示は、開館日の毎日11:00~16:00の間におおむね15分~30分間隔で、付近の線路1kmを往復10分で走行する「SLスチーム号」と名付けられている。真横をJR西日本の在来線のエース列車で、一時は特急を抜くとも言われたスピードを誇る「新快速」に抜かれるタイミングに遭遇すると圧巻。変な話だが、抜かれるだけで満足してしまう。少し離れた新幹線の疾走に遭遇することも“アリ”、東寺・五重塔、京都タワーも見える。4月には隣接する梅小路公園が桜の名所なので特におススメ。
この「SLスチーム号」運転の数回に一回、これまた圧巻の「転車台ショー」が見られる。スケジュールは毎日変わるので、当日インフォメーションで確認してほしい。小さい子供なら耳をふさいだ方がいいくらいの元気のいい汽笛を鳴らし、巨体がゆっくりと転車台に入っていく。転車台でゆっくりと回転して止まると、蒸気を作るのに必要な水や石炭を補給する。こんな様子が、本当に目の前で見られる。観客はみなシャッターに夢中だ。
スカイテラスから見えるここだけの絶景 東寺・五重塔を横切る東海道新幹線
この写真は「SLスチーム号」からではなく、京都鉄道博物館3F(屋上)のスカイテラスから撮ったものだ。JR東日本の大宮の鉄道博物館も屋上デッキの真横を新幹線が通過するが、JR西日本の京都の鉄道博物館は、「五重塔を借景にした新幹線」という“ここにしなかない価値”がある。
痒い所に手が届くというのはこういうことだろう、スカイテラスには「列車位置情報システム」が設置されており、通過時間を表示してはいないが、次にどの列車が通過するかがわかるようになっている。列車を待つ時間の目安を判断できるすばらしいICT技術の賜物だ
日本や世界には、数多く「ここにしかない」名作がある。
「ここにしかない」名作に会いに行こう。
JR西日本監修 公式ガイド
(KADOKAWA)
京都鉄道博物館
http://www.kyotorailwaymuseum.jp/
原則休館日:水曜日