まもなく2月23日(土)、京都・醍醐寺(だいごじ)最大の年中行事「五大力(ごだいりき)さん」が行われます。終日続く護摩の火と、京都の2月の風物詩となった餅上げ大会で盛り上がる境内がとても賑わいます。
- 平安時代の初め、醍醐寺開創直後から1,100年以上に渡って続く日本有数の歴史のある行事
- 五大明王の化身である五大力尊に力を授けてもらうことを祈って終日続く護摩の火は圧巻
- 当山派修験道の盟主である醍醐寺らしい、密教色が色濃く出た行事
当日授与されるお札「御影」は、幾多ある京都の神社仏閣のお札の中でも愛宕山の「火迺要慎」と並んでトップクラスの人気を誇ります。建物の入口や台所に貼ることで、盗難/災難除けになると信じられています。
醍醐寺は874(貞観16)年、空海の孫弟子・理源大師聖宝(りげんたいししょうぼう)によって創建されました。現在の中心伽藍である下醍醐(しもだいご)の背後の山の頂にある上醍醐(かみだいご)が当初の境内で、913(延喜13)年に醍醐天皇の祈願寺として薬師堂と五大堂が完成して以降、下醍醐にも伽藍が拡がっていきます。
現存する薬師堂は平安末期の1121(保安2)年の再建ですが、もちろん国宝です。五大堂は幾度も焼失しており、現在の建物は1940(昭和15)年の再建です。
五大力さんは、913年に完成した五大堂の五大明王に祈ったのが始まりです。醍醐寺の原点に立ち戻るようなとても大切な行事です。行事が長く続いているのは、醍醐寺が伝統的に時の政治権力者と良好な関係を保ち続けていたことが大きいと思われます。
その代表的なケースが醍醐寺創建時に絶大な影響力を及ぼした醍醐天皇です。天皇の固有名詞は、死後に付けられる諡号(しごう)です。中には生前に自ら諡号を付ける天皇もいました。醍醐天皇は醍醐寺への帰依心が深く、自らの諡号に寺名を付けました。長い天皇の歴史の中でも、寺名を諡号にしたのは醍醐天皇だけです。
五大力さん授与品の”メニュー”
五大力さんには毎年、全国から10万人を超える参拝客が集まります。多くの人のお目当ては、お札の「御影」です。当日しか授与されないためこれだけの人が集まります。現在は寺の公式サイトで年中、通販形式で授与を受けることができます。わざわざ足を運ぶことに価値を見出す人が多数派のようです。
【行事の見どころ 醍醐寺公式動画】 五大力さん
「御影」を授与されると、多くの人が授与会場の近くで行われている柴燈護摩(さいとうごま)に向かいます。山伏姿の僧侶に護摩の煙を「御影」にあててもらい、五大力さんのご加護のさらなるパワーアップを祈ります。この護摩祈願は朝から夕方まで延々と続けられています。ほら貝も鳴りやみません。強烈な非日常空間です。
四角が男子の部150kg、丸が女子の部90kg
正午からは全国ニュースでも報道される「餅上げ」が始まります。お供えにも苦労した終戦直後に、大きな鏡餅を抱えて長時間耐えることで、”力”を奉納できるとして始められたのが原型です。
山伏姿の審判役の僧侶5-6人が時間計測と安全確保に目を光らせながら行われます。長く続くと、大相撲の水入り取組のように会場はとてもヒートアップします。最長記録者は”横綱”として会場内に、記録と共に名前を掲示され、栄誉を称えられます。
平成になってからの横綱の最長記録は男子で12分4秒、女子で12分5秒です。一方最短記録は男子で2分18秒、女子で1秒です。最長記録には男女60kgの重量差が影響していると思われます。女子の最短記録1秒というのは、参加者ほぼ全員が持ち上げられなかったのでしょう。
「餅上げ」ステージ
一度横綱になると、以降は参加できないそうです。参加は誰でもでき、当日の午前中に受付が行われます。”我こそは”とチャレンジする人の中には、外国人も結構いました。
五重塔の前の広場ではテントが張られ、「五大力餅」が販売されています。五色のカラフルな餅で、飛ぶように売れていました。ブランド菓子店のテントもあります。参道も初詣のように屋台で一杯になります。
金堂前、餅上げ会場
昨年2018年9月の台風の被害で上醍醐エリアはまだ閉鎖されていますが、この日は普段有料の下醍醐伽藍/霊宝館/三宝院(室内拝観不可)が無料開放されます。桜の頃と並んで、醍醐寺が最も華やぐ日です。
こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。
フレンチ料理人がタクシードライバーになって京都のグルメを案内
________________________________
醍醐寺
五大力さん(五大力尊仁王会)
【寺による行事公式サイト】
会場:金堂
会期:毎年2月23日(日付で固定)
原則休館日:月曜日
開催時間
09:00 五大力さん「御影」「お守り」授与、柴燈護摩祈願 開始
10:00 奉納「餅上げ」小学生の部 開始 〜10:30頃まで
12:00 奉納「餅上げ」女性の部 開始 〜12:40頃まで
13:00 奉納「餅上げ」男性の部 開始 ~14:30頃まで
16:30 柴燈護摩祈願 終了
17:00 五大力さん「御影」「お守り」授与 終了
※スタート時間は当日の法要・神事の進行や天候に左右される場合があります。
※この寺は観光目的で常時公開されています。
醍醐寺
【公式サイト】 http://www.daigoji.or.jp/
◆おすすめ交通機関◆
市営地下鉄東西線「醍醐」駅下車、2番出口から徒歩10分
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:30分
京都駅→JR琵琶湖線→山科駅→市営地下鉄東西線→醍醐駅
【公式サイト】 アクセス案内
※京都駅から直行するバスもありますが、鉄道を乗り継ぐ方が、時間が早くて正確です。
※この施設には有料の駐車場があります。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。
________________________________
→ 「美の五色」とは ~特徴と主催者について
→ 「美の五色」 サイトポリシー
→ 「美の五色」ジャンル別ページ 索引 Portal