金沢ひがし茶屋街のお茶屋美術館は、前回ご紹介した重要文化財・志摩の裏、一本北側の通りにあります。志摩の面する通りは、ひがし茶屋街のメインストリートでとても観光客が多いですが、お茶屋美術館の通りは少し狭いこともあり人通りは少なめです。
古い町並は同様にのこされており、写真撮影や静かに花街情緒を楽しむには、ここも通らないと”もったいない”と言えます。お茶屋美術館は、志摩にはなかった芸妓のかんざしや食器などが展示されているとともに2Fの群青色の客間空間が圧巻です。金沢のお茶屋文化をより深く学ぶことができます。
お茶屋美術館も、ひがし茶屋街が集約された1820(文政3)年の建築です。建築当初の屋号「中や」を美術館のサブネームに使っています。間口の狭い玄関表から奥に細長い2F建てで、美術館としては1Fで工芸品の展示、2Fでお茶屋の客間空間を楽しめるようになっています。
お茶屋美術館の現在のオーナーは、重文・志摩と同じ方とのことで、両館で異なる楽しみ方ができるよう工夫されているようです。
【公式サイトの画像】 館内(2Fはなれ、1F展示室)
1Fの展示室では、芸妓の黒髪を飾っていたかんざしや櫛がまず目を引きます。鼈甲や金が惜しげもなく使われ、現在も日本の金箔のほぼすべてを生産している金沢の、金細工加工とデザインの質の高さが見て取れます。黒髪に添えられて展示されているわけではありませんが、単体を見るだけでもその艶やかは充分に伝わっています。
漆器や九谷焼も見事です。赤や黒をベースとした漆に金粉で描かれた蒔絵(まきえ)の盃や食器は、部屋の意匠と共に非日常空間を醸し出す小道具としては必需品です。工芸技術もさることながら、これらを使うために通ってくる旦那衆の財力も驚きです。
2Fでは「はなれ」の強い群青色の壁が印象的です。光を発していると思えるほどの明るさがありますが、どこか数寄屋風を感じさせる部屋の趣と見事に調和しています。色や下地の選択が腕利きのデザイナーや左官によって行わたのでしょう、プロの仕事です。この部屋もグラビア撮影スポットとしてかなり知られているようです。
「はなれ」に近接する「ひろま」は一転ベンガラ色ですが、こちらも色合いは強めです。群青色との対比がとても興味深いです。
お茶屋美術館の外観
2Fの窓の外観がベンガラ色です。金沢のひがし茶屋街のイメージカラーともいえる色です。インスタ映えは保証できます。なお志摩とは異なり、お茶屋美術館の室内の写真撮影はできません。
映画のセットのような料亭組合の外観
金沢の茶屋街は現在もお茶屋として営業している店は少なくありませんが、いわゆる「一見さんお断り」で、既存客に連れて行ってもらわないと楽しむことはできません。しかし観光客向けに、芸妓による伝統芸能を楽しめる催しが年間を通じて数多く用意されています。志摩のようにお茶屋の室内で、しつらえを楽しみながらお茶をいただけるところもあります。
【金沢伝統芸能振興協同組合 公式サイト】 「金沢芸妓」芸を楽しむためには
【志摩 公式サイト】 お茶室「寒村庵」
金沢の魅力はまさに、茶屋街でたっぷり楽しめます。
こんなところがあります。
ここにしかない「美」があります。
選ばれた男たちだけの「秘密の世界」の昔と今
金沢ひがし茶屋街 お茶屋美術館 旧中や
【公式サイト】http://www.ochaya-museum.com/
原則休館日:木曜日
入館(拝観)受付時間:9:00~16:30
※靴を脱いで室内を見学します。床汚れ防止のため、裸足の場合は靴下を持参しましょう。
おすすめ交通機関:
北鉄/JR/周遊バス「橋場町」バス停下車、徒歩5分
JR金沢駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:15~20分
金沢駅兼六園口7番(北鉄/周遊)、4番(JR)バスのりば→北鉄/JR/周遊バス→橋場町
金沢駅まで
東京駅から北陸新幹線で2時間30分
大阪駅から在来線特急で2時間30分
【公式サイト】 アクセス案内
※この施設には駐車場はありません。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、クルマでの訪問は非現実的です。
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