立憲民主連合の鎌田聡です。
委員会提出議案第2号「夫婦・親子同氏を維持し、旧姓の通称使用の拡充を求める意見書」に対する反対討論を行います。
世界経済フォーラムが公表している日本のジェンダー・ギャップ指数は、156ヵ国中120位と、極めて立ち遅れています。その象徴が夫婦で同じ氏を名乗ることが強制され、別姓が選択できないことです。
国連の女性差別撤廃条約委員会は日本に対して繰り返し選択的夫婦別姓制度を導入するよう求めています。しかし、日本政府はこの求めに応じようとせず、その合理的な理由すら示していません。2018年に外務省が国連から受け取った文書に至っては、日本語訳もせず、担当の内閣府男女共同参画局にも送らないまま数年間放置されていたことが、今年3月に明らかになりました。
このような政府の姿勢は、日本に対する国際社会の信頼を低下させるとともにジェンダー・ギャップによる当事者の不利益や日本社会の後進性を放置するものです。
一方で、国内における夫婦別姓を望む声は、1986年に男女雇用機会均等法が施行され、女性の社会進出が進むとともに高まっています。
内閣府が5年ごとに行なっている世論調査では、選択的夫婦別姓を導入してもいいという回答は2012年に実施した際は、35.3%で賛否が拮抗していましたが、2018年に公表した世論調査では、導入してよいと考える人は過去最高の42.5%となり、導入の必要はないという回答の29.3%を上回っています。
このように国内的にも選択的夫婦別姓を望む声が大きくなっている中で、今回の「夫婦・親子同氏を維持をして旧姓の通称使用の拡充を求める意見書」は時代の変化に逆行するもので、とても賛同することはできません。
意見書には、「夫婦別姓は子供が生まれれば、親子の間で姓が異なり、家族のあり方に重大な問題を引き起こしかねない」との記載がありますが、夫婦別姓が認められているすべての国で、両親が別姓であることが理由で子に不利益が起こっているような実例はありません。夫婦別姓が原因で“家族が崩壊”して同姓に戻した国なども実在していません。一方で、日本では、夫婦・親子が同じ姓であっても崩壊している家庭はいくつも見られます。
「家族みんな同じ姓だから絆を感じる」と考える人は、同姓にすればいいわけですが、一方で、「これまで生まれ育った家族と同じ姓にしておきたい」と、これまでの家族との絆を大切にする人のことも考えていくべきです。姓を変えることに抵抗を感じる人が婚姻をためらうことがないように、同氏を維持して旧姓使用を拡充するのではなく、夫婦別姓が選択できるように民法を変えるべきです。
政府は、2016年から旧姓使用の拡大を進めてきています。旧姓はあくまで通称の扱いで、法律上の定めはないため、旧姓を併せて記す「旧姓併記」を拡大するだけでは解決できない課題があります。納税手続きは戸籍上の氏名でなければできません。外務省が要件緩和するパスポートの「旧姓併記」も海外ではダブルネームとして不正を疑われます。夫婦同姓を法律で規定するのは世界で日本だけで、海外では理解されにくいからです。また、多くの金融機関はシステム改修に費用がかかるとして「旧姓併記」を導入していません。
2019年から、全国の自治体でマイナンバーカードや住民票への「旧姓併記」が始まりましたが、そのシステム改修費に税金が200億円近く使われています。今後、旧姓の通称使用を拡充していくと他にも莫大なシステム改修費が必要になります。
そもそも、選択的夫婦別姓を望む当事者は、「旧姓」を公的書類に「併記」してもらいたいのではなく、根本的に、生まれ持った氏名を「旧姓」になどせずに生きていきたいのです。旧姓の通称使用に法的な根拠をもたせるよりも、選択的夫婦別姓で別姓に法的な根拠を持たせる方が費用面においても運用面においても、これまで抱えてきた問題の解決につながります。
以上、申し上げましたように、日本も、個人の尊厳と男女の対等な関係の構築をめざすため、姓を変えたい人は変える、変えたくない人は変えなくて良いという選択ができる国に変えて行くべきです。
そのためにも、夫婦・親子同氏を維持することを求める意見書をこの熊本県議会から国に提出することにはとても賛同できません。
議員各位におかれましては、私とともにこの意見書提出に反対していただくことを切にお願い申し上げて、私の反対討論を終わります。