こどもの頃、庭のすみに何本かの柿の木が有りました。
隣との庭には境が無く母屋から裏庭に出ると
それぞれの家の子供たちが騒がしく遊び回った共有の庭でした
庭の柿の木は隣の「下駄や」の持ち物で柿が熟せばもぎ取りを手伝って
お裾分けを頂く事が出来ました
我が家の柿は渋柿で先が尖っていて誰も手を付けません
熟れ違いで、枝に残した柿はやがて美味しそうに幹の上の方で
橙色になり収穫を待っていました
隣の柿が気になって竿で落とし、よじ登れば取ることが出来ます
まして烏や小鳥が突っついてる
下手すると突っつき終らないう内に地面に落下してクジャリとつぶれる。
「もったいない」渋柿には目もくれゃしない
そんな隣の柿に祖母は「取れないところは鳥にあげるんだよ」言った
「塀の外に出た枝はよそ様に上げる柿だよ」
「天と人と自分」の3っに分ける・・・と
ある時台風が去った早朝、腰を折って危なっかしく庭に向かう祖母を見た
吹き千切られた小枝や葉を杖で分けて、何かを探してるようだった
朝もやの中に居る姿をしばらく見ていた
私は学校から帰ると祖母の離れにいつも立ち寄る
(離れなんてカッコいいけれど物置を改造したトタン屋根の
暗い部屋でした)
祖母は白内障を患い暗い離れでいつもラジオを聴き布団の中にいた
「おばーちゃんただ今~」そしておやつをねだるのです
干し芋だったたり、せんべい、まんじゅうだったり・・
ずいぶん後に気が付きましたが、あれは母屋から届けた祖母の
「おやつ」だったと思うのです。
多分・・横取りしていたのです(馬鹿な私)
おやつが無ければ「何かない??」と缶や茶箪笥を探ります。
そんな時見たのです。茶箪笥の中で
嵐で落下し、形もない「熟んだら柿」を・・
皿の上に数個乗っていた
私はそれを見ない事にした。可哀想だった
歯の無い祖母のおやつだったんだ・・と
あれから熟れ過ぎた柿を好んで食べてみた
美味しかった
種を囲んだ果肉のツルツルが好きと祖母の教え通りの味でした
≪お読み頂きまして有り難うございます≫