風の色 8
空港からタクシー。
ストレートなシーサイドロードを走る。
長い時間走っても、ビーチは途切れない。
ゴールドコーストのホテル
ザ ショア アパートメンツ。
ビーチがぶり寄り。
サーファーズ・パラダイスにも近くて快適。
キンと差し込む光が、スカッと抜ける青の空が、途切れることのない波音が、ワクワクを引きずり出す。
男の子は子供の頃から変わらない。
フロントからガーデンを横切って、男三人はいそいそと海へ。
サリーはこのあたりの観光関係には顔が利くところもあるし、友人もいるらしい。
まあその間、オレ達はビーチへ行ってそれなりに楽しんでたというわけだ。
シドニーかメルボルンあたりに本拠地が有りそうなものだが、
元彼Jr政治家は、地元ゴールドコーストに籍を置いて活動してるらしい。
決して首都のキャンベラではない。キャンベラは小さい。
シドニーかメルボルンどちらを首都にするか迷った挙句、両都市の間にあるキャンベラに決まったらしい。
なんとケッタイなというか、人間ぽいというか大陸的なんだろうか、おおらかな決め方だ。
ビーチサイドのカフェバーでフォーエックスを傾ける。
苦味がきつめだが、後味は結構サッパリとしているオーストラリアではポピュラーなビール。
ヒールの冷たい音が近づく、このロケーションには似合わない。
スーツを着たサリーが戻ってきた。かなり仕事のできるキャリアウーマンのよう。
井出達に似合わない、フローズンマルガリータをオーダー。
「見つけたわ。」ホッとした顔でサリー。
「だけどそう簡単に会えるのかしら。将来、大統領を担うであろう人材だし。」
「それにJrも意味わかんないだろうしな。」
「ネックレスに秘められた想いの意味はねえ・・・母親じゃない相手とのlove romanceだからな。」
偉大な父親の母親以外の女性暦を聞かされるんだから、あまりいい気分はしないだろう。
だが息子だし、結婚前の話しだし無いわけがないのは分ってるはず。
きちんと話せば分ってもらえるだろう。
「ところであんた達、へんな遊びしてないでしょうね。」
「妙なことしてるんだったら熱湯消毒よ。」サリーのいつもの調子。
「今日は必要ないみたい。残念ながら。」ビキニを見送りながら無念そうに牧野。
突き抜けていく青空の下、四人は潮風の方向へ。
8m前後の良い風が吹いてる。
ビーチパラソルがなんとか頑張って砂を串刺してる。
オンショアの風がサリーの髪をすり抜け
カフェバーのエントランス横のハイビスカスを揺らしている。