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読書の森

白系ロシア人

昭和20年11月、旧満州映画のトップスター李香蘭は、戦後「漢奸」として収容所に入れられ「死刑」を宣告されました。
「漢奸」とは中国祖国を裏切った(漢民族でありながら自国を貶めた)中国人を指します。
数々の日本の国策映画に出演して、言わば中国に日本の属国になる事を容認させるよう働いたという罪ですね。ただし彼女自身は日中親善に役立ちたいというかなり純粋な気持ちがあったようです。

絶対絶命のピンチに彼女の命を救ったのが幼馴染の白系ロシア人女性リューバです。

写真の向かって右の女性が家庭を持ったリューバです。

彼女は小さな頃李香蘭ととても仲良しでした。李香蘭の生家も知ってるので、そこを訪ねて彼女が日本人である証明の戸籍謄本をもらってきたのです。戸籍謄本は母の慰問品の日本人形の帯の間に潜められてました。これが提出される事で、李香蘭は山口淑子であり祖国(日本)の命令に従っただけ、と判断された訳です。

リューバにとっても危険の多いこの仕事をやってのけた動機は、リューバ自身が追われている身だったからではないでしょうか?

これは1996年発行の地図ですが、当時と変わらぬ点は旧ソ連(ロシア)と周りの国の位置です。
直ぐにお分かりになるように、ロシア東部から中国、日本、朝鮮半島が近い事です。
なので亡命しやすい場所であります。

ロシア革命後、旧ロシア貴族など新政府の迫害を受け他国で暮らす人々を昔白系ロシア人と称してました。
リューバはユダヤ系ロシア人で家族と共に奉天で暮らしていたのですね。
お互いに人種に拘る事に疑問を持って育ったのではないでしょうか?
人種に関係なく、「仲良しの友人の危機を救いたい」という懸命な気持ちだったと私は感じました。

言うなれば、山口淑子さんはリューバによって命を救われ、人生を全うされたと思います。



さて、今に残る昭和の名横綱、大鵬。実は彼の父親も白系ロシア人、しかも今のウクライナ人だったのです。大鵬の輝くような肌の白さはウクライナの人の血を引いているからです。
大鵬は1940年、樺太(今のロシア領サハリン)に生まれて、そこから日本に渡る迄親は非常に苦労したようです。

ロシア革命で祖国から追われ、日本の敗戦によって又も祖国から逃れ、北海道に渡って父親を亡くし、母子家庭で極貧の生活を送ったそうです。
学校へ上がる余裕もないところから相撲部屋に入門したそうです。

お恥ずかしいですが、私が外見から一目惚れした最初で最後の人(ホントです)が、彼です。

話題の人を見ようと、テレビの相撲番組にチャンネルを合わせ、彼の姿を見た途端彼のあまりの美しさにのけ反った(?)のです。
嘘みたいな真っ白な肌と伸びやかな肢体(お相撲さんですが)、真っ直ぐに対戦相手を見る澄んだ目、どこか憂愁を湛える表情、抜群のインパクトでありました。

そこで止せばいいのに、後援会に入会してしまいました。中学一年の時です。ところが級友も彼のファンでその事が原因で初めて女の戦い(?)をしてしまいます。
後にも先にもミーハーになったのはその時だけです。

白系ロシア人の話がとんだところに行ってしまいました。

ただ、白系ロシア人ならずとも、歴史の中で、生まれ育った故国を終われて異国で生きざるを得ない人達は非常に多いでしょう。
その祖国自体が影も形がなくなろうと、それらの人達の子孫は人種のるつぼに埋もれて今も生活しています。
思い出を振り返っても、歴史はいつも自分たちの側にある、自分たちは気づかぬままに歴史の中を歩いている、と実感するこの頃であります。

読んでいただき心から感謝いたします。

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