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久人が英美の金銭感覚の欠如に気付いたのは、新婚間もない頃だった。
遅く帰宅した久人を待っていたものは、高級なマグロの刺身など、料亭さながらの食卓だった。
「これ全部君が作ったの?」
久人は目を丸くして言った。
「勿論!5時間かかったの」
「高かっただろう?」
「そうでしょうね。クレジットカード使って金額見なかったけど」
久人はギョッとした。
クレジットカードは彼の口座から引かれる。
これだけの豪華絢爛たる料理を作れば、何万と掛かるに違いない。
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こんな献立毎日作られたら、彼の給料があっという間になくなる。
料理を食べない内から久人は言ってしまった。
「安い惣菜を工夫して作るのが家庭の主婦だ」
ちょっときつい調子になった途端、英美は涙ぐんだ。
可愛い目からポロポロ涙が出るのを見て、久人は思わず
「ごめん。言い過ぎだ。これから気をつけてね」
と、英美のほっぺたに軽くキスした。
英美は潤んだ目で久人を見る。
それだけで久人はだらしない笑顔を見せた。
腹は空いているし、英美の料理が上手いとか不味いとか考える前に、二人の夜の時間を妄想し出す。
新婚ホヤホヤの久人は甘すぎる夫であった。