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新津きよみは、映画化された『ふたたびの加奈子』『女友達』など多くの作品を上梓している。
ごく普通の女性に潜む意外な魔性をサスペンスタッチで描く。
いかにも読みやすいし、後味が悪くないのでリピーターとなった。
本著はカウンセラーの三上量子シリーズの中の一冊である。
比較的初期の作品だ。
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美しい依頼人の夢を分析し治療していく内に、残酷な殺人事件に巻き込まれる三上量子。
元刑事で元亭主の四方晴彦の協力を得て、事件は意外な形で解決する。
この作品は、人格の解離性障害や交換殺人、夫婦の感情の機微など、興味ある要素がふんだんに盛り込まれている。
実は私は岡目八目的興味があった。
未だ量子に惚れてる別れた亭主と、彼女の掛け合いの妙が学べるからだ。
勿論作者は堅実な主婦である。
つまり、未経験者である私にとって新鮮な夫婦のやり取りが追体験出来るのだ。