一度目は30代で、これも文庫本を買って読んでます。A、B、Cと頭文字を持つ全く無関係の人が殺されていくおぞましい事件。
予めそれは手紙によって、何と名探偵ポアロに知らされている。情報網の発達した今の時代には絶対不可能な殺人事件。
これは一見無差別殺人に見えます。
大筋は覚えてるのですが、肝心の犯人像を私は記憶していません。それが心に引っかかって又買って読みました。
文字が大きくなってる他は全く同じ文庫本です。
そして改めてクリスティの頭の良さに気づきました。
この手の物語は後年よく見かけますし、現実にも予告犯は存在するのですが、この作品の明快さとはダンチです。
クリスティは長々と惨たらしい状況を描く事など一切せずに、理詰めで犯人を追いかけていきます。
推理していくのはお馴染みポアロです。
冷静かつ知的に優れた犯人で、愉快犯でも狂った人の犯行でもない。
誰にでもそう見える、身代わりの犯人をつくっておいた。
驚くべき事に身代わりの人間は自分が殺人を犯したと思い込み自供し出す。
そういう状況を真犯人が作り出していく、心理的な経緯。
ここら辺がクリスティならではの作品だと思います。
ただ自分としては他の作品の方が好きですけど(例えば『終わりなき世に生まれつく』とか)。
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サプライズは、クリスティの孫による前書がついてた事です。離婚した夫の子供の子供に当たる人ですがクリスティ財団の理事長です。
彼は作品を「余計な飾りのない」推理小説と捉えています。
この方の文章もとっても小気味よくって(正確には訳者も良い訳ですが)嬉しかったです。
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(おまけ)葛西臨海公園の夕景です。
海沿いの観覧車がロマンチックですね❣️